このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
医療法人社団 千優会 藤沢在宅クリニック 院長
米田 浩基 先生
先日、夜遅い時間に患者さんのご家族から、「発熱」と「腹部の違和感」を訴える連絡が入りました。急いで伺うと、患者さんは熱で朦朧としていました。認知機能がやや衰えてきているため、自分の状態を説明できません。ご家族も状況を把握しておらず、説明を聞いても腹部の違和感の原因は不明確です。脱水症状はないか、尿閉を起こしていないか、腹水は溜まっていないか、胆のうに痛みや腫れはないか—
在宅医療の現場では、このように問診や聴診、触診だけでは判断をつけにくいことが少なくありません。とくに腹部疾患は、画像検査なしではブラックボックス的なところがあって、医師としても不安を抱えることになります。医師が不安なら当然患者さんも不安になります。
こんなときにどちらにも安心を与えてくれるのが、ワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air」のようなポケットサイズのエコーです。たとえば、腹部に張りが見られる場合、疑わしいと思った部位に素早くプローブを当てて画像をチェックすれば、腹水や臓器の膨らみ、炎症所見、圧痛、腹腔内の出血などの状態が観察・把握できます。つまり、病院へ搬送して精査するか、すぐに処置をしつつ自宅で経過観察とするかの振り分けが、その場でできるわけです。同時に、画像を患者さんやご家族に示しながら説明をすることで、不安を解消し理解を促すことができます。
iViz airは私にとって、正確で迅速な判断につなげるためのツール。聴診器を首にかけ、白衣の左ポケットには本体を、右ポケットにはプローブを入れて、毎日仕事をしています。
私が院長を務めている藤沢在宅クリニックは、在宅医療に特化したクリニックです。患者さん約500人の中心は80歳代後半で、老衰や何かの病気で各臓器が少しずつ弱ってきている方など、色々な要因によって通院が困難な方々です。50~60代の若い方は、脳卒中後マヒの障害がある方、難病の方、認知症のある方など様々です。あとは重症心身障害児の患者さんなどもいらっしゃいます。
患者さんの病態は実に多種多様であり、さまざまな分野に関して疾病や症状を持つ患者さんに対して、診療科を問わない総合的な診療が求められるのが、在宅医療であると言えるでしょう。また、在宅医療には、どうしても大がかりな画像検査が難しいという制限があります。認知症をお持ちの方が増えていますが、中々症状がうまく伝えられません。ご家族の介護力の不足から患者さんの状態を把握できないといったケースも少なくありません。
このように、わからないことばかりで真っ暗闇の中にいるような状態であっても、訪問している医師としては、手探りでひとつひとつ診察して治療の道筋をつけていかなくてはなりません。そんなとき、判断を支え、進むべき道筋を照らしてくれるのが、私にとってのポータブルエコーなのです。
先日、89歳のお父さんと同居している息子さんが、「熱中症ではないか」とクリニックへ電話をかけてきました。急いで往診すると、扇風機ひとつない蒸し暑い部屋で患者さんがぐったり横たわっていました。その日の水分摂取量は不明で体温も測っていない。私が体温を測ったところ、39.6度の高熱です。
もしも重度の脱水症を起こしているなら、すぐに救急搬送しなくてはならないケースです。まず、iViz airで脱水の指標となる下大静脈を見ました。すると、脱水はあるもののそれほど重症ではないことが分かりました。続けて膀胱を見て、尿が詰まっているわけではないことも確認。ここで少し安心しましたが、まだまだ見るべきところがあります。
次に胆のう炎を疑い、エコーの画像を見ながら、胆のうをプローブで圧迫、圧痛がないこと、石が見えないこと、胆管の閉塞がないことなどから、胆のう炎の可能性が除外されます。さらに、腎臓を調べて、水腎症の所見がないことを確認し、腎臓についても除外診断ができたことで、自宅で療養をおすすめすることになりました。その後この患者さんは、自宅療養のまま時間をかけて水分を補給することで、症状がすっかり改善しました。
ここで、特筆すべきは、エコーが「病患を発見する」というよりも、ブラックボックスで情報がない中で「病状を理解する」ためのツールとして使われていることではないでしょうか。脱水の状態、尿閉の有無、胆のう炎や水腎症の除外診断など、エコーが、私の「手」や「目」の及ぶ範囲を延長させ、病状の理解をおおいに助けているのです。
もうひとつ、ポータブルエコーが活躍する場面があります。それは、「診断や処置の補助」としての使い方です。たとえば、尿バルーンや胃ろうチューブ、経鼻胃管の交換を画面を見ながら行う、腹水の貯水量を確認する、穿刺の際の安全な穿刺位置へのガイド、発熱原因となりやすい腎盂腎炎や胆石胆のう炎の際のガイドなどいずれも補助ツールとしての近い方ですが、医師にとっては大きな安心感を得ることにつながります。
また、ポータブルエコーには、コミュニケーションツールとしても大きな価値があります。
在宅の診察では、問診、視診、聴診、打診、触診という昔ながらのアナログな診察が中心で、目で見てわかる画像検査があまりありません。数字で明確なデータを示されることも少ないため、不安を覚える患者さんがとても多いのです。
ここでエコーを使えば、私たち医師が見ているのと同じ画像を患者さんやご家族に示して、簡単に情報を共有することができます。このことが与える安心感は計りしれず、また、医師側のあまりにブラックボックスで情報がないという不安の解消にも役立てることができます。
病気を見つける画像検査としてはもちろん従来通り使えるわけですが、コミュニケーションツールとしてとらえた場合、ポータブルエコーにはさらに広い有用性があると考えます。
何らかの慢性疾患の患者さんがいたとしましょう。鼠径ヘルニアや、大動脈解離、腎不全、頻尿や便秘など、患者さんが持っている病気や症状はさまざまです。患者さんには全く体の中が見えないため、しばしば不安があります。その点では、ポータブルエコーを用いることで、エコーを気軽に当てて、その画像を患者さんご家族と一緒に見ながら、病気や症状の解説をすることができるため、病状の理解や不安の解消に役立てることができると考えます。
当クリニックでは、以前からエコー検査を行っていましたが、iViz air導入後は、使用頻度は一日3~4回と増加しました。ポケットサイズであることに加えワイヤレスであることから、白衣の左ポケットに本体を、右ポケットにプローブを入れ、「ここが見たい」と思ったときにすぐに使うことができます。常に持ち歩き、いつでも必要なときに、気軽に出せて、気軽に検査をし、その結果を気軽に提示できる。これが、iViz airのメリットだと思います。
プローブは、浅いところの視野が広いコンベックスを使用しています。コンベックスは、広い部分がカバーでき接地面も広いのでお腹を見るために適していると思います。ありとあらゆる病気を見る現代の在宅医療の現場で、もし1種類のプローブだけを用いるのであれば、コンベックスがよいのではないかと思います。
また、iViz airは画質が良くバッテリーも長時間持つので、私の使用頻度でしたら数日に1度の充電で十分と感じます。
ポケットに入れて常に携帯し、聴診器のように気軽に使うことで、私たち医師の「手」や「目」の延長として機能する。さらに患者さんの理解を助け、不安を和らげてくれるiViz airのようなポータブルエコーは、これからの在宅医療に欠かせないツールと言えるのではないでしょうか。
- 販売名
FWUシリーズ
- 認証番号
301ABBZX00003000