このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
医療法人誠仁会千綿病院は、長崎県長崎市矢上町に位置し、「思いやりを 愛を 感謝を。人を大切にする病院」という病院理念の下、地域完結型医療の一翼を担うべく、近隣の医療機関、介護施設とも連携を図り、日々東長崎の地域医療に取り組んでいます。
今回は、昨年導入されたSCENARIA View*1について、診療技術部放射線室の松尾技師長にお話を伺いました。
はじめに、千綿病院の概要について教えてください
当院は、この東長崎地区で明治21年に千綿医院として開院し、昭和43年に千綿病院と改称し、昭和63年に医療法人誠仁会が設立され現在に至ります。開院から数えると135年を迎えるということになります。
当院は、“思いやりを 愛を 感謝を。人を大切にする病院"という病院理念の下、大久保理事長を中心に、地域医療の中核病院として、急性期医療・慢性期医療・リハビリテーション・在宅医療までトータルでの医療・介護を提供しています。また、救急医療協力病院として、地区の二次救急医療体制の一端を担っています。
標榜科は、内科、外科、整形外科、呼吸器内科、リハビリテーション科です。近年の高齢化による複数疾患を持つ患者さまの増加に対し、当院は安心して治療を受けられるよう、複数の科で協力して診療にあたっています。
放射線室として心がけていることについて教えてください。
「全ては患者さまのために」ということはいつも意識しています。その中で、「医師の診断に有用な画像を提供する事」と「放射線被ばくの低減」は最も重要だと考えていることです。この2点をより高いレベルに引き上げていくことが検査を担当するわれわれ診療放射線技師の使命であり、そのために知識や撮影技術の向上に努めていかなければならないと思っています。
それから、検査機器は日々新たな技術が開発・搭載され、「より高画質に」「より低被ばくで」「より早く」といったことが可能になっていきます。装置が持っている性能以上のことは技師の努力では実現できませんので、装置更新の機会には、そのような患者さまにより質の高い検査を提供できる機器の導入を提案していくことも大事にしています。
千綿病院では、昨年CT装置を更新されました。その経緯を教えてください。
今回は、9年半ほど使用していた64ch装置からの更新でした。先程も触れていましたが、「医師の診断に有用な画像を提供する事」と「放射線被ばくの低減」を最も重要と考えている中で、「より高画質」「より低被ばく」を実現できる性能を持っていることは大前提に置いていました。AI技術を活用した画像処理「IPV*2」は、この相反する要望にこたえることができると、臨床画像を確認させていただいた際に感じることができました。
また、Dual-Energy検査が可能なスペックであることも重要視しました。近年Dual-Energy 撮影が盛んに研究される中、文献を読んでいたところ、Dual-Energy撮影におけるCalcium suppression処理が、通常のCTでは判断できない不顕性骨折や骨挫傷の描出を可能にすることを知りました。当院は整形外科も標榜していますが、スペースの関係等でMRIを導入できていないため、整形領域の診断の一助になると考え、CT更新時の検討項目に加えました。
IPVはしっかりとノイズを低減した上で、視覚的にFBPに近い質感を維持していて、ルーチン検査で標準的に使用できています。当院は、高齢者のかかりつけ医という側面もあり、例えば発熱の原因精査目的での胸腹部撮影というのも多く行われます。胸腹部という長い撮影距離に対して、息止めが短時間しかできない、または全くできないといった患者さまも多いのですが、IPVの使用を前提に撮影スピード優先の条件設定を行うことがとてもやりやすくなりました。
また、頭部CTにおいては低コントラストの視認性向上のため、Window幅を狭めていくとノイズの影響が多く出てきますが、そこにもルーチンでIPVを使用した処理条件を新たに検討し、これまでより低コントラストの視認性の良い頭部CT検査を提供できるようになりました。臨床例を1例提示いたします。SCENARIA Viewを導入して間もない時に、単純CTで脳梗塞のEarly CT signであるhyperdense MCA signや白質・灰白質の不明瞭化、低吸収化が疑われる症例を経験したのですが、後日、低コントラストを増強させるために、極端にNarrow Windowにし、ノイズを抑えるためにIPV強度を強く設定した画像を作成してみたところ、皮髄境界や島皮質の不明瞭化、レンズ核の輪郭不明瞭化といった所見をより指摘しやすい画像になりました。
また、更新前に使用していた前モデルと比較してガントリー開口径が75cmから80cmへ、寝台横移動幅が最大16㎝から20㎝へと大きくなり、整形外科領域での被検者セッティングがさらにやりやすくなったのはもちろんですが、加えてコンベンショナルスキャンでは寝台横移動機能とガントリーチルトを同時に使用できるようになったので、頭部CTのセッティングが非常に容易になり、画質の向上とともにスループットの向上にもつながっています。
Dual-Energy検査については、今回の装置更新後より新たに可能となった検査で、整形外科領域において少しずつ増加傾向にあります。
その装置導入時に注目されていた、Dual-Energy検査については、実際に使用されてみて、いかがでしょうか。
Dual-Energy検査に対しては、当初、処理パラメータやカラー表示にする際の色の調整といったところで試行錯誤し、オーダーを出される先生も半信半疑な部分があったかと思います。より高品質なCalcium suppression画像を作成するために、Dual-Energyの撮影方式や解析パラメータを始め、解析元画像のIPV強度やスライス厚などさまざまな条件を検討しました。現在はある程度処理パラメータが定まってきたところです。
臨床例を3例提示いたします。
1例目は右大腿骨外顆骨折の症例です。Single-Energy画像上でも小さな骨折を把握できますが、Calcium suppression画像を作成することで、炎症範囲が明瞭に描出されております。
2例目は胸椎の圧迫骨折です。Single-Energyで、はっきりとした骨折は指摘できませんでしたが、Calcium suppression画像にて、Th4、6に新鮮圧迫骨折の疑いを認めました。後日別目的でフォロー撮影を行った際に、Th4に椎体の減高変化を認め、圧迫骨折の存在が明確となった症例です。Dual-Energy撮影によって不顕性骨折の存在をとらえたと考えられ、その付加情報が診断に役立った症例とも言えます。
3例目は恥骨骨折の症例です。Single-Energy画像でもはっきりとした骨折を認めておりますが、Calcium suppression画像にて高信号の領域と一致しており、骨折の時期を把握するための一助にもなっていると思います。
今後は、Calcium suppression画像としてのさらなる画質向上はもちろん、撮影線量の低減も視野に入れて検討を進めたいと思っています。
(一番左が松尾技師長)
装置導入から現在に至るまで試行錯誤し、頭部の低コントラスト視認性の向上や、Calcium Suppression画像による炎症の描出を行うことで、今までのCT検査に少し付加価値をつけることができたのではないかと考えています。
「医師の診断に有用な画像を提供する事」と「放射線被ばくの低減」を変わらずめざしていく中で、今後は当院の検査の中でDual-Energy撮影をCalcium Suppression以外の解析に利用出来ないかについても検討していきたいですし、CT検査全体として、ルーチン検査で使用するIPV強度についてもそれぞれの部位で再度画質評価を行い、さらなる被ばく低減の余地についても探っていきたいと思っています。
あと、Dual-Energy撮影に関しては2回転または2回撮影方式ということで、撮影間でのデータのズレにとても気を使います。撮影条件設定に悩むこともありますので、今後の開発でその点が少しでも改善していくことに期待しています。
- 販売名
全身用X線CT診断装置 SCENARIA View
- 医療機器認証番号
230ABBZX00027000
3D画像解析システム SYNAPSE VINCENT
- 販売名
富士画像診断ワークステーション FN-7941型
- 医療機器認証番号
22000BZX00238000