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対策型胃内視鏡検診において先進的な取り組みを行い、“八王子方式”と呼ばれる精度管理体制でも注目されている八王子市。2018年度からクラウドサービス「ASSISTA Medical checkup-ES」が採用された。
新藤 健 主査
新藤主査 科学的根拠のあるがん検診を高い“質”で実施する。そうすることで初めて、受診率を上げる意義があると考えています。このような考えを医師会と共有し、密なコミュニケーションをとりながら、さまざまな取り組みを行っています。
その上で、八王子市では、精密検査の受診率を限りなく100%に近づけることを目標にしています。
がん検診で要精密検査と診断されても、精密検査を受けていただかなければ、スクリーニングとしての意味がありませんし、税金の無駄遣いになってしまいます。したがって、要精密検査と診断された方を、確実に精密検査の受診に導くことは、我々にできる最も大きな仕事だと考えています。
新藤主査 “質”においては、乳がんのマンモグラフィ検査や肺がんのX線検査で得られた全症例を医師会に集め、医師会内の専門委員会でダブルチェックを行うことで、より精度を高めています。
また、精密検査の受診率を高めるために、精密検査を受診した際の書類が、きちんと市に戻ってくる仕組みを構築し、結果が把握できない場合は、専門の看護師が連絡を行うことで、受診結果の適切な把握に努めています。
新藤主査 大腸がん検診の便潜血検査などとは異なり、胃内視鏡検査は医療行為ですので、他のがん検診以上に、精度管理を細かく詰めていく必要がありました。また、対策型胃内視鏡検診においてどこまで結果把握していくのかは議論のあったところですが、「対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル」に準拠しながら、まずはがんを確実に発見し、がんの見逃しを防ぐため、すべての症例を医師会でダブルチェックする体制作りを進めてきたところです。
医師会と協議を重ねる中で、しっかりとした精度管理体制を整えることが大切だと再認識しました。
新藤主査 マニュアルで求められる体制の整備は、医師会への委託事項ではありますが、八王子市は、医師会と非常に良好な関係を築けていますので、お互いに可能な範囲でフォローを行いながら、効率よく進められたのではないかと感じています。
当然ながら、自治体がいくらアプローチをしても、医師会の先生方にご理解いただけなければ体制整備を進めることはできません。対策型がん検診と医療現場の考え方には差異もありますが、対策型検診はどうあるべきかを理解いただいた上で、進めていくことが非常に大切だと考えています。
また、検診の委託料に関しても、診療報酬に基づき決定されます。自治体と医師会、お互いの考え方に違いはあっても、ルールに基づき決めていくことで他の協議すべき事項に注力できていると思います。
新藤主査 2018年度は、対象者を限定したかたちでスタートする予定です。今後は、すべての対象者に受診していただけるように体制整備を進めていきます。そして、受診者の増加に向けて、より簡便かつスムーズにダブルチェックが行えるように、システム面を含めた検討を行っていきたいと考えています。
村井先生 ダブルチェックは、がん検診の“質”を高めるためには欠くことのできないものであり、正しく機能させるためには検診実施施設と二次読影機関の双方における“品質管理”が重要になると考えています。
村井先生 がん検診のクオリティを高めるためには、一次読影はもちろんのこと、二次読影において胃がんをどれだけ発見できるかがポイントになります。また、適切な“品質管理”を行うには、検診実施施設の内視鏡検査のクオリティばかりでなく、二次読影におけるがんの発見率などを集計して数値化していくことが重要です。そして、そのデータの集計・数値化には、システムの導入が必須だと考えています。
村井先生 まずは、ピロリ菌の未感染、現感染、既感染を示唆する特徴的な内視鏡所見を確認し、ピロリ菌感染の有無をしっかりと診断することが大切です。そして、進行がんについては判断に迷うことは少ないと思いますが、早期胃がんを発見するためには背景粘膜の評価が欠かせません。したがって、対策型胃内視鏡検診においても萎縮度の判定を含めた背景粘膜の評価を適切に行うことが求められます。
村井先生 医師会の中で、“品質管理”を行う上ではシステムが必須であるという結論に達したのですが、さまざまな人が出入りする医師会にサーバーを設置することには問題がありました。そこで、クラウド型のASSISTAが候補に挙がり、機敏に動く操作性やデータ集計における将来性などに魅力を感じて、導入に賛成しました。
村井先生 今後、ASSISTAがバージョンアップを重ねていくことで、粘膜の状態やピロリ菌感染の有無、萎縮度、生検箇所の妥当性などを数値化して、データベース化できる仕組みが構築されれば、より完成された検診システムになっていくのではないかと期待しています。そして、運用面では、来年度以降、受診者が増加した際には、ASSISTAの機能をフル活用して、オンラインでレポートや画像の登録・閲覧・二次読影を行うことも検討していければと考えています。