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「診療圏調査」はクリニック開業を想定する場所で、1日当たりどれくらいの外来患者数が見込めるのか、推計患者数を把握し、開業に適しているかどうか判断するために行います。
推計患者数の計算は基本的に、「診療圏の人口×受療率÷(科目別競合診療所数+1)」で計算されます。人口構成や受療率は公的なデータを元にします。「科目別競合医院数+1」となっているのは、新規開業によって診療所数が1つ増えるためです。
診療圏調査は、実際には開業コンサルタントや医薬品卸、医療機器メーカーなどが提供している診療圏調査のレポート作成サービスを活用したり、専用のパソコンソフトやアプリを活用して自分で行うという手もあります。
ただ、こうした診療圏調査の結果を活用する場合には、いくつかの注意点もあります。主な注意点を、以下に示します。
診療圏の設定については、コンサルタント等の考え方にもよりますが、基本的には開業候補地を基点として半径500m内を1次診療圏、500〜1000m内を2次診療圏として捉えることが多いようです(眼科、耳鼻咽喉科などではより広範に1000m内を基本に捉えます)。
ただし診療圏の中に、鉄道や大きな道路、河川などがある場合、人の流れは大きく変動します。そうしたことも勘案し、診療圏を考えることが必要です。なお、車での移動が中心の地域では、徒歩ではなく車到達時間をベースとした診療圏設定が必要です。
診療圏調査では、集患で競合するであろう病院、診療所の所在やその影響度についても報告されることになりますが、それらの病院、診療所の情報が最新のものかどうかの確認も必要です。院長が高齢などの理由から、診療所を廃業するケースも近年は増えています。一方で、都市部では新規開業が増加しており、そうした閉院や新規開業の情報が正確に反映された調査結果でないと、推計患者数を計算することができません。
また、競合する医療機関の人気度(集患力)や評判は、そうした診療圏調査に反映されないことが多いので注意が必要です。例えば「糖尿病なら〇〇医院」という評判が地域にある場合、糖尿病患者の来院はあまり期待できないからです。
そうした意味では、診療圏調査の結果を鵜呑みにせず、競合医療機関の立地や流行り具合、住民の移動経路の分析といった実地調査は必要と考えます。
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