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クリニック開業時の資金調達に必須の「事業計画書」
クリニックの開業には多額の資金が必要となります。
開業するクリニックの診療科目や開業形態(テナント開業か戸建て開業か)、導入する医療機器などにより幅がありますが、内科クリニックでテナント開業の場合は5000万円以上、整形外科で戸建て開業なら1億円以上かかるケースが一般的です。
クリニックの開業資金には、土地・建物の購入費用(戸建て開業)や賃貸物件の保証金・内装工事費用(テナント開業)、医療材料費、設備費、広告宣伝費などの初期費用に加えて、人件費や消耗品費、光熱費などの運転資金も用意しなければなりません。診療報酬の振り込みは診療月の翌々月になるため、最低でも3カ月分、通常は余裕をみて半年から1年分の運転資金を用意するケースが多いようです。
これらの費用は、一般的には金融機関からの借り入れで賄うことになります。
資金調達先の種類と特徴
融資を受けるには、金融機関を説得できる、しっかりとした「事業計画書」が必要です。
患者数を予測し売上と収支を推定
クリニック開業に向けた事業計画書は一般に、
(1)クリニックの経営コンセプト
(2)資金計画
(3)収支計画
の3要素で構成されます。
(1)は開業するクリニックの経営理念や診療内容などクリニックの基本となる部分を明文化したものです。
(2)と(3)はクリニックの開業・運営に当たり、必要な資金の総額(総事業費)を見積もった上で、必要な資金の調達と返済および将来の収支を予測したものです。
特に重要となるのが(3)の収支計画です。
収支計画に不備があると、最悪の場合は資金がショートし閉院に追い込まれる可能性もあります。
計画の作成は次のような手順で進めます。
まず、診療圏調査の結果や競合クリニックなどの情報を基に、1日当たりの外来患者数を推定し、平均診療単価を基に1カ月当たりの売上を予測します。
次に、医薬品や医療材料などの変動費(院外処方では一般に収入の10%前後)と、人件費やリース費用、院長自身の生活費、テナント費用や借入金の返済金などの固定費を見積もります。
最後に、売上から変動費・固定費を差し引いて利益を計算します。
こうした収支計画を月次・年次で数年分作成し、収益や返済に問題ないかを確認します。
なお、患者数が順調に増えた場合だけでなく、見込みよりも「3%低かった場合」、「5%低かった場合」など複数のパターンを作成して検討するのが無難と言えるでしょう。
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【企画・編集 日経メディカル開発】