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クリニックが保険診療を行い、診療報酬を受け取るには、社会保険診療報酬支払基金などの審査支払機関に診療報酬明細書(レセプト)を提出しなければなりません。
勤務医時代には診療さえしていればよく、保険請求業務を気にすることはなかったわけですが、クリニック開業後は毎月、レセプトをまとめて診療報酬を請求する必要が出てきます。
ここで必須となるのが医事会計システム、いわゆるレセプトコンピュータ(レセコン)です。レセプトをパソコン上で作成し、電子データとしてオンライン(または電子媒体)で支払機関に提出するという、クリニックの経営を支える重要な役割を担います。
かつては紙によるレセプトの提出も認められていましたが、2015年4月診療分からは一部の例外を除いて、電子レセプトによる請求が義務付けられました。現在はクリニックの96%が電子レセプトにより診療報酬を請求しています(2020年3月診療分)。
一方で、近年はクリニック開業時に電子カルテを導入するクリニックが増えています。
電子カルテは、紙のカルテで必要だった保管スペースが不要になるほか、レセコンとの連動で会計などに要する時間が短縮されるメリットがあります。矢野経済研究所の2019年の調査では、新規開業クリニックの95%が電子カルテを導入したと回答しました。
電子カルテのタイプとしては、これまではクリニック内にシステム一式を設置する「オンプレミス型」が主流でした。
これに対し、最近はクラウド上のサーバーにカルテデータを保管する「クラウド型」も増えつつあります。クラウド型には、導入コストの低下や、災害時のデータ消失の心配がないというメリットがあります。
電子カルテとレセコンは、それぞれ単体で使えるシステムですが、レセコンと連携して使う、あるいは最初からレセコン機能を有しているものが一般的です。両システムを連携あるいは内包することで、受付から診察、会計までの院内の業務をペーパーレスかつ効率的に処理できるようになります。
近年、電子カルテには新規参入も増えていますが、医療分野における経験不足から、レセコン関連の機能が不十分な例も見られます。
電子カルテの導入に当たっては、診療報酬改定の詳細にまで対応できているかなど、レセコン機能の確認も欠かせません。
また、院長となる医師が日常的に操作することになるのは、レセコンよりも電子カルテです。製品の選択に当たっては、電子カルテの操作性を重視することをお勧めします。
最近はクリニックでも、電子カルテ入力を担当する医療クラークを導入する事例が増えていますので、そうした体制でも使いやすい製品を選ぶことを考慮した方がいいでしょう。
電子カルテやレセコンは、クリニックの生命線とも言える重要なシステムです。導入に当たっては、コストだけでなく、トラブル時のサポートが手厚い製品を選ぶことが肝要です。
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