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国が推し進める医薬分業により、クリニックの多くが院外処方を採用するようになりました。クリニック・診療所の院外処方率は90年代は10%台にすぎませんでしたが、2020年度には76.3%に達しています(厚生労働省・社会医療診療行為別調査による)。
診療報酬上、院内処方の処方せん料は、院外処方よりも低く設定されています。さらに、院内処方では医薬品の購入費用や管理コストが必要となるほか、廃棄リスクなども考慮しなければなりません。このためクリニック新規開業に当たっては、院外処方を選んだ方がメリットは大きいといえます。
ただし、そのためにはパートナーとなる調剤薬局の存在が欠かせません。
患者から見れば、連携先の薬局は「クリニックの一部」ともいえる存在であり、タッグを組むクリニックと調剤薬局とが、うまく連携をとれなければ、患者が離れていく可能性もあるからです。
調剤薬局がクリニックの近くにない場合、既にその地域で薬局を運営している企業に近隣に出店してもらうのが一般的です。
このほか、医薬品卸や医療機器メーカーなどから紹介を受けたり、院長となる医師と個人的なつながりのある薬剤師に薬局を開いてもらうケースも少なくありません。
パートナーとなる調剤薬局を選ぶ上では、クリニックの院長となる医師が目指す医療理念に共鳴してくれるかどうかが重要な要素となります。
患者への説明やサービスの方針など、薬局経営者や管理者の考え方を事前にしっかり確かめましょう。また、薬局のスタッフ数やその教育体制、運営体制の確認も欠かせません。これらは薬局が患者に提供できるサービスの質に直結する要素であるからです。
クリニックからの薬局へのアクセスも、患者にとって非常に重要です。
隣地に開局してもらう「門前薬局」がベストですが、近隣で開局してもらったり、既存の薬局と連携したりする場合は、薬局までの信号の有無などの交通事情をチェックしておきましょう。体の不自由な患者や高齢者が多い場合は、薬局までの道のりに坂道や階段がないか、薬局内がバリアフリーかなどについても確認が必要です。
なお、2021年10月からは、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる「オンライン資格確認」が始まっています。さらに2023年1月には「電子処方箋」の運用開始も予定されています。
これらのデジタル対応は、クリニックの業務軽減にもつながるため、パートナーとなる薬局の準備・対応状況も確認したいものです。
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