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クリニックにおいてトラブルになりやすいのが、労働時間の扱い方です。院長が、業務前のミーティングや就業後の掃除などを労働時間に含めないままスタッフに強制し、トラブルになるケースが珍しくありません。
労働基準法における労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指します。クリニックの診療時間はもちろんのこと、診察前の準備時間や診察後の後片付けなど、スタッフが業務を命じられているのであれば、それはすべて労働時間としてカウントされます。
クリニックが主催する勉強会や研修なども、参加が義務付けられているのであれば労働時間として扱われます。形としては自由参加であっても、全員参加が前提となっていて断れなかったり、参加しないと不利益を被ったりする場合は、やはり労働時間として扱われて給与の支払い義務が生じます。
ただし、すべての勉強会や研修が労働時間に該当するわけではありません。例えば、自由参加で欠席しても構わない勉強会や、業務上必須ではない資格取得のための外部研修などに参加する場合は、労働時間としては扱われません。
繁忙期には、クリニックスタッフに時間外労働(残業)や休日出勤を依頼することもあるでしょう。残業や休日出勤を命じるには「時間外労働および休日労働に関する協定書」、通称「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署に協定書を届け出る必要があります。
36(サブロク)協定は開業時に届け出れば終わりではなく、労使間で毎年締結し、労基署に届け出なければなりません。
残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間以内とされています。
以前は「特別条項付きの36(サブロク)協定」を締結すれば、1年のうち6カ月は青天井で残業させることができましたが、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」により認められなくなり、一定の上限が設けられました。
「働き方改革」は一般企業の話と思われがちですが、その重要性は医療界でも変わりがありません。クリニックスタッフの労働環境に配慮することも、院長の大事な仕事の一つです。
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【企画・編集 日経メディカル開発】