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遅刻欠勤を繰り返したり、勝手な行動でトラブルを起こす問題スタッフは、残念ながら一定の割合で存在します。こうしたスタッフは一刻も早く解雇したいところですが、法律上は解雇のルールが労働者保護の観点から厳しく制限されていて、簡単には解雇できないのが実情です。
これは正職員だけにとどまらず、パート職員などについても同様です。
労働基準法や男女雇用機会均等法では、「合理的な理由がない」「社会通念上、相当であると認められない」解雇を禁じています。逆に言えば、職員を解雇する場合には、合理性があり社会通念上も認められることを、対外的に示す必要があるのです。
具体的には、クリニックの就業規則に解雇を行う場合の要件(無断欠勤やクリニック内の秩序を乱す行動を繰り返した場合などに解雇することがある等)を明示しておき、採用時には必ず雇用契約書を交わして、その中で就業規則に基づいて解雇することがあることをクリニックスタッフに伝えておくのです。
ただし、就業規則に明示していたとしても、単に「服装がだらしない」「備品を壊した」といった理由では、社会通念上相当とは認められず、解雇も無効となります。
一方、クリニックスタッフが問題行動を繰り返し、クリニックの就業規則上も解雇に該当する要件を満たしているような場合でも、即座に解雇することはできません(犯罪行為による懲戒解雇を除く)。
クリニックの事業主には解雇を回避する努力義務がありますので、クリニックスタッフの教育や指導、配置転換などにより雇用継続の努力を果たしたかが問われます。
ですので、クリニックスタッフが問題行動を起こした際には、トラブルの内容と指導の記録を残して保管しておくようにしましょう。解雇に踏み切った後、スタッフが労働基準監督署に駆け込んでも、こうした記録が残っていれば、事業主の主張が受け入れられやすくなるからです。
また、やむを得ずクリニックスタッフを解雇する場合であっても、「明日から来なくていいから」といったやり方は認められていません。原則として、解雇日の30日以上前に予告する必要があります。
解雇予告は口頭でも有効ですが、トラブルの元になりやすいため、解雇日と解雇理由を明記した解雇通知書を作成するのが望ましいでしょう。
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