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日本
一歩進んだクリニック経営

項目新設で賃上げを促す2024年診療報酬改定

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

6年に1度のタイミングで医療、介護、障害福祉サービスのトリプル改定となった2024年度の診療報酬改定
ここでは多岐にわたる改定内容から、クリニックの経営に大きな影響が及びそうな項目を紹介します。

今回の改定では、物価上昇を踏まえた賃上げが柱の1つとなりました。医師や事務職員の賃上げに対応するため基本診療料引き上げられたほか、看護師をはじめとするコメディカルスタッフの賃上げを後押しする項目が新設されました。一方で、生活習慣病関連の管理料は、「効率化・適正化」の名の下に算定要件の厳格化が図られました。クリニックによっては減収要因となるだけに、その影響を慎重に見極める必要がありそうです。 

「ベースアップ評価料」の新設で賃上げを後押し

物価上昇に伴う医療従事者への適切な賃上げを実現するため、2024年度改定では技術料に当たる本体部分が0.88%引き上げられます。プラス0.88%のうち、40歳未満の勤務医や薬局薬剤師、事務職員などの賃上げに0.28%、看護職員、病院薬剤師、その他の医療関係職種の賃上げに0.61%が充てられます。 

具体的には、看護職員や薬剤師等について2024年度にプラス2.5%、2025年度にプラス2.0%の賃上げを可能にするため、「ベースアップ評価料」が新設されます。外来診療在宅医療を実施している医療機関では「外来・在宅ベースアップ評価料」を、病院または有床診療所では「入院ベースアップ評価料」を算定します。また、医師や事務職員の賃上げに対応するため、入院基本料や初・再診料、外来診療料なども引き上げられます。

外来・在宅医療を手掛ける医療機関に勤務する看護職員、薬剤師、その他の医療関係職種に対して、賃上げを実施した医療機関が初診・再診時に1日ごとに算定できるのが「外来・在宅ベースアップ評価料(I)」です。初診時に6点、再診時に2点、訪問診療時には同一の建物住居者以外の場合は28点、同一建物居住者の場合は7点を算定します(図)。また、外来・在宅ベースアップ評価料(I)だけでは対象職種の1.2%の引き上げが実現できない無床診療所への救済策として、「外来・在宅ベースアップ評価料(II)」が設けられます。この評価料 II は、計算式から算出される8段階の評価料の中から、自院に適合する区分の点数を算定する方式となっています。 

(図)外来・在宅ベースアップ評価料(I)(1日につき) 

初診時に6点、再診時に2点、訪問診療時には同一の建物住居者以外の場合は28点、同一建物居住者の場合は7点を算定

なお、賃上げは基本給または決まって毎月支払われる手当の引上げにより改善を図ることが原則とされています。賞与(ボーナス)での対応は対象外です。また、勤務職員の賃金改善計画を作成し、改善状況を定期的に地方厚生局長等に報告することが求められます。 

厳しい改定となった生活習慣病管理の評価

賃上げに関係する診療報酬が引き上げられる一方で、生活習慣病を中心とした管理料や処方箋料が0.25%引き下げられます。このうちクリニックの収入に大きな影響が見込まれるのが、管理料の算定要件の厳格化です。これまで、生活習慣病の患者に対して、特定疾患療養管理料、外来管理加算、特定疾患療処方管理加算を併算定してきたクリニックは少なくありません。今回の改定では、特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病、脂質異常症、高血圧が除外され、外来管理加算や特定疾患療処方管理加算との併算定が認められないことになりました。 

特定疾患療養管理料から糖尿病など3疾患を除外する代わりに生活習慣病管理料(II)が新設されましたが、これを算定するには患者さんの同意に基づく療養計画を策定し、それに基づき生活習慣に関する総合的な治療管理を行う必要があります。患者さんの署名を得た療養計画書を策定しなければならないなど、特定疾患療養管理料よりも算定のハードルが高くなっている点も要注意です。 

今回の改定は新設項目が多いだけに、クリニック経営の行方を占う上では、その影響を慎重に見極める必要があります。幸い、今年からはシステム更新の影響を考慮して、改定の実施が4月から6月へと2カ月後ろ倒しされることになりました。この時期を活用し、改定の影響度シミュレーションを行ってみることをお勧めします。 

【企画・編集 日経メディカル開発】