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マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」は、これからの日本の医療DXの要に位置づけられています。マイナ保険証の普及・定着によって、クリニック経営も大きく変わると考えられています。
マイナ保険証の仕組みは医療機関においては「オンライン資格確認等システム」と呼ばれています。マイナンバーカードを用いて、患者さんの名前や住所、保険証資格をオンラインで確認するためです。
マイナ保険証の本格運用は2021年10月にスタートしました。医療機関や薬局が整備したカードリーダーでマイナンバーカードを読み取ることで、保険証番号や氏名、住所といった基本情報を医療機関側は瞬時に入手することができます。また、自院以外で処方された薬剤の服薬状況や、検診結果なども参照でき、診療に活かせるのもマイナ保険証のシステムの特徴です(表参照)。
厚生労働省が2022年8月に医療機関向けに開催した説明会の資料では、オンライン資格確認のメリットとして、次の2点が強調されています。
1)医療機関・薬局の窓口で、患者の方の直近の資格情報等(加入している医療保険や自己負担限度額等)が確認できるようになり、期限切れの保険証による受診で発生する過誤請求や手入力による手間等による事務コストが削減。
2)マイナンバーカードを用いた本人確認を行うことにより、医療機関や薬局において特定健診等の情報や薬剤情報を閲覧できるようになり、より良い医療を受けられる環境に(マイナポータルでの閲覧も可能)。
閲覧可能な情報は現行の薬剤情報、特定健診情報、診療情報に加え、2023年5月からは手術情報も追加される予定です。
マイナ保険証は2022年8月10日に開かれた中央社会保険医療協議会において、オンライン資格確認(いわゆるマイナンバーカードの保険証利用)導入の2023年4月からの原則義務化が決定しています。また、従来保険証の2024年秋の廃止も決定しています。
もっとも、世界的な半導体不足などの影響もあって、全国の病院やクリニックの中にシステム導入が遅れるところも出る見通しであることから、原則義務化には半年の猶予期間が設けられ、期限は2023年9月末になります。
医療機関がマイナ保険証に対応するには、オンライン資格確認のシステム導入が必要になります。具体的には顔認証付きカードリーダーの導入、システム事業者によるネットワークの設定などです。詳しくは厚生労働省の専用サイトを参照ください。なお、医療機関の整備にはオンライン資格確認関係補助金が用意されていますので、活用するようにしましょう。
「原則義務化」には例外もありますが、その例外は院長が高齢などの理由から紙レセプトでの請求が認められているごくわずかの保険医療機関・薬局に限られます。
2022年12月に開かれた中央社会保険医療協議会では、紙レセプトでの請求が認められるのは「高齢の医師等でレセプト取扱件数が少ない場合」としました。レセプト件数としては月平均50件以下として、医師の年齢としては70歳以上を想定しています。なお、65~69歳については個別に判断するとしています。
この時の中医協では、診療報酬の医療情報・システム基盤整備体制充実加算も見直され、マイナ保険証利用の方が患者には割安の設定となりました(期間は2023年4月~12月に限定)。マイナンバーカードの利用がない場合、初診では2点(4点→6点)、調剤では1点(3点→4点)が引き上げられます。また、マイナンバーカードの利用がない場合の再診時の評価を2点として新設されます。オンライン請求を行っていることが要件ですが、2023年12月31日までに開始する届け出を行っている医療機関・薬局は特例的にこの要件を満たすとされました。
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