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新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、医療機関の受診を手控える動きが広がりました。流行の当初に比べれば徐々に改善してはいるものの、依然として外来患者数が回復しないことに悩んでいるクリニックは少なくありません。そうした状況の中、受診患者の診療単価を引き上げることにより、こうしたピンチに対応する動きが出てきています。
診療単価を引き上げるといっても、不必要な診療を行うわけにはいきません。そこで有効なのが、看護師や管理栄養士による指導管理料の上乗せです。丁寧な指導は患者満足度の向上にもつながりますので、積極的に実施を検討しましょう。
糖尿病患者を診る機会が多い内科系のクリニック診療所であれば、ぜひ算定を考えたいのが「糖尿病透析予防指導管理料」です。医師と看護師、管理栄養士からなる「透析予防診療チーム」が、人工透析に至る可能性がある糖尿病患者に対し、食事や運動など各種の生活指導を行った場合に月1回、350点を算定できます(表1)。
指導にあたる看護師や管理栄養士には、糖尿病指導に関する経験や必要な研修受講が求められますが、算定できる点数が高いことを考えれば、その実施は検討に値します。
また、管理栄養士による「外来栄養食事指導料1」の算定することも検討すべきです。これは外来化学療法を受けているがん患者や、摂食機能・嚥下機能が低下した患者、低栄養状態にある患者に対し、具体的な献立を示して栄養指導を行った場合に算定する点数です。対面で行った場合は初回260点、2回目以降200点を算定できるほか、オンラインによる指導でも初回235点、2回目以降180点を算定できます。オンライン診療の実施とセットで実施することを考えてもいいでしょう。
また、管理栄養士が患者宅に訪問し栄養や食事の管理及び指導を行う「訪問栄養指導(介護保険における居宅療養管理指導)」の実施も有力な選択肢です。月2回まで、1回当たり539〜444単位(1単位は原則10円)が算定できますので、糖尿病透析予防指導管理料や外来栄養食事指導料1の算定と合わせれば、十分に人件費が賄えると考えられます。
一方、看護師については、前述の糖尿病透析予防指導管理料に加えて、「在宅療養指導管理料」の算定にも取り組みたいところです。在宅療養指導管理料は「在宅」という名が付いていますが外来で算定する点数で、人工肛門や人工膀胱、気管カニューレ、留置カテーテル、ドレーン等を装着している患者に、その使用に関する指導を行った場合、初回は月2回、以降は月1回、170点を算定できます(表2)。算定に取り組むことにより入院・外来から在宅までの継続看護が実現するため、看護師のモチベーションアップも期待できます。
これまで見てきたような看護師や管理栄養士による各種の指導は、医師だけではカバーしきれない部分を補うものであるため、患者にとっても有益なことです。ただし、診療単価の引き上げを伴うため、患者負担の増加につながることも事実なので、実施にあたっては、その必要性を客観的に評価すると同時に、患者や家族への丁寧な説明を心がけるようにしましょう。
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