大手自動車メーカーへ部品を供給しているA社は、特に大型部品に豊富な実績を持っています。近年は、品質基準の高まりや短納期化が進んでいることから、これまで以上に高精度で、高効率な外観検査システムを構築することを検討していました。しかし、大型ワークゆえの悩みを抱えていました。
- 複数のビジョンシステムを同時制御するため、システムの個体差が気になる。
- ビジョンシステムの台数が多く、コストが掛かる。
- 個体差が解消されたレンズを採用し、システムの個体差を抑制。
- 「広い視野」「均一な解像性能」を持つレンズを採用し、カメラ台数を削減。
A社の製造する大型部品は自動車の各部へ取り付けるもので、取り付け部位や車種ごとに大きさや形はさまざまです。効率的に外観検査を行うため、検査対象の部品全体を上下左右、場合によってはさまざまな角度から複数のビジョンシステムで同時に撮影する方法を考えていました。大型ワークのため計20台以上のビジョンシステムが必要な検査装置です。しかし、従来使っていたレンズはそれぞれの性能に差があり、画像検査の結果にバラつきが出てしまいました。欠陥検出能力を均一にするため、時間を掛けて何度も調整を重ねましたが、うまくいきませんでした。
新しい検査システムの構築にあたっては、ビジョンシステムごとの性能差を抑えると同時に、ビジョンシステムの台数を減らすことで管理の工数やコストを削減することもテーマでした。しかし、少ないビジョンシステム台数で大型ワークを従来通りに検査するには、広角レンズを用いて撮影範囲を広げるだけでなく、画面の隅に写った小さな異変も見逃さずに検出できる高性能レンズが必要でした。
課題解決のポイントは、
「レンズ解像性能の個体差解消」と「撮影範囲の拡大」
A社では、画像検査結果のバラつき解消、カメラ台数の削減という課題を解決するため、最新の高解像カメラの導入を決めました。さらに、レンズの選択が成否のポイントになると考え、採用予定のカメラメーカーに相談したところ、「カメラの実力を引き出してくれるレンズがあります」と、富士フイルムのマシンビジョン用「4D High Resolution」対応レンズを勧められました。
複数のビジョンシステムで検査する場合、すべてのシステムが同等の性能を発揮しなければ検査結果はバラついてしまいます。特にレンズは、品質の差が出やすく、注意が必要。A社では、「とにかく1本1本の性能に差がない確かな品質のレンズがほしい」と、強く望んでいました。富士フイルムのマシンビジョンカメラ用『4D High Resolution』対応レンズは、1本ごとの性能の差を抑制するため、すべてのレンズを独自の検査測定器で厳しくチェック。さらに、シリアルナンバーを付け、個体の品質管理を徹底しています。撮影距離や絞りの変更で解像性能が低下することを抑え、条件の異なる複数の箇所にカメラを設置するA社の場合でも、画像検査結果のバラつきが減りました。レンズ性能に差がないので検査システムの調整時間も短くて済み、担当者の負担も軽減しています。
一般的にレンズ設計においては、基準となる撮影距離を決め、その距離で解像性能が最大限に発揮されるように設計されます。そのため、距離を変更すると画像の隅がボケてしまうことがありました。特に広角レンズでは、原理的にその傾向が顕著に表れます。『4D High Resolution』対応レンズは、レンズの構成を前後に分けて後群のみの移動でフォーカスを合わせるフローティング設計などにより、撮影距離の変化による解像力の低下を抑えています。さらにミクロンレベルの精度で組み立てを行うことで、レンズ玉の芯の偏りをなくしました。富士フイルムのレンズは、画像の隅まで高い解像性能を保つため、レンズ1本でカバーできる検査範囲が広くなり、結果A社はビジョンシステムの台数を大幅に減らすことができました。