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ISO15189取得における文書管理の活用事例
最も大事なのは、最新の文書を間違いなく使用できる仕組み作り
業務標準化を検討する際の文書管理の重要性を感じ、文書管理の仕組み構築に向けて取り組まれてきた川口市立医療センター様。今回はISO15189取得、またその維持継続を目的に、2017年に導入された当社「院内文書管理支援ソリューション」の活用について、検査部長 坂田一美先生にお話しいただきました。
インシデント発生に向けた解決のポイントは「プロセス志向」
―貴院が文書管理への取り組みを始められた経緯についてお聞かせください。
2011年、総務省から公的病院改革プラン策定と実施が求められたことで、病院の改革プロジェクトが発足しました。その際に、「質・安全」マネジメントのシステム構築の視点から「医療の質・安全管理室」が作られ、私も副室長としての活動に関わるようになりました。病院機能評価受審も「医療の質・安全管理室」の管理下に置かれることになりましたが、機能評価受審が5年に1度のイベントと化していることに驚かされました。そのイベント活動の中心が不足文書の作成作業でした。
―第三者評価の本来の目的を見失ってしまっていたということですね。
インシデント発生時の状況を調べていくと、以下3点の事象が見えてきました。
- 個々の事例についての分析は行われているが、その多くの原因が「人」に帰結している
- 実際の作業と内容が乖離している手順書が多い
- 同じようなインシデントが繰り返される
そのような状況下で、どうしてこうなるのだろうとさまざまな疑問を持ち、解決策を模索していた折りに「医療のためのマネジメント基礎講座注記」を知り、受講しました。そこで「プロセス志向」「プロセスの検討」「プロセス管理」といったキーワードを知り、これが解決のポイントだ!と思いました。 業務において「プロセスを管理する」という考え方は、工場にも似た検査業務にとても良く当てはまり、単に検査プロセスだけではなく、検査前プロセス、検査後プロセス、それらを支援する仕組みをしっかり管理することが求められるということです。「業務を明文化したもの」である「文書」をどう管理するかが重要であることが見えてきました。そのため、標準化を推進すると同時に文書管理システムの導入を推し進めました。
PDCAをシステムで回すために、機能と運用でメリットの最大化を目指しました
―標準化実現のためにシステム導入を検討されたということですね。当時どのような課題があったのでしょうか。
当時、当センターには手順書が多数存在すると思われていたものの、どこにどのような手順書があるのか把握することができませんでした。また、当科でも他科と同様、読みにくい・読んでも分かりづらい・何を目的に作成したのかわからないといった多数の文書が存在していました。
―そういった課題解決も視野に入れてISO15189取得を決断されたということですね。
当時の総技師長から、「治験対応を考えるとISO15189を取っておいた方がやりやすくなるのでは。」と相談があったことがきっかけで、受審することを決めました。また、そのタイミングで保険点数への加算がつくようになったことも、病院側に認めてもらう後押しとなりました。
―ISO15189を取得する目的についてお願いします。
検査の品質を保証することが最大の目的と考えています。「品質を保証する」ために、適切と判断された機器・試薬・方法を用いて検査を実施すること、そのためには臨床医としっかりとした合意を図ること、さらにそれらを実施するための人の教育・力量を管理すること、機器や試薬の取引会社や検査委託会社などの能力評価を行うことが必要です。
―品質を保証することと文書は、どう関わってくるのでしょうか。
基本的に実施すべきことをどのように実施するかを決める、これがすなわち標準化ですね。そしてそれらを「見える化」=文書化しなければなりません。その上で、日常的に発生したインシデントに対して適切な対応を取ることが求められます。同じようなインシデントが二度と発生しないような対策をとりなさい、その後、その対策が有効だったか確認しなさい、というのがISO15189の大事なポイントであり、このサイクルを回すことが品質保証につながります。
―そうなると文書化されたものを管理する必要が出てきますね。
まずは標準作業書に代表されるように、検査工程に関わる各種手順書が必要になります。併せて、PDCAを円滑に回す方法を決める必要があります。具体的にいいますと、検査の手順だけが品質を担保するわけでなく、組織体制からヒトの管理や教育、機器・物品の管理、環境の管理といった管理業務の手順に加え、インシデントが発生した場合、どのような流れで解決していかなければならないか、なども文書に起こす必要があります。「文書」の書き方や管理の方法ももちろん決めていく必要がありますし、本当にたくさんの文書が必要となります。
―ISO15189要求を満たすためには文書管理に何が求められるのでしょうか。
最も大事なのは、「最新の文書を間違いなく使用できるようにしておくこと」であり、個々の文書に固有の識別番号を持たせることです。次に、文書作成の責任の明確化も重要なポイントです。文書が誰によって作成され、誰が確認し、誰が承認したか、またその文書の内容がいつから有効になるのか、つまり使用開始時期を明記しなければなりません。
さらに、作成した「文書」を検査科以外の部署に配布するような場合、どこに配布したかを分かるようにしておく必要があります。そして改訂がなされた場合には、配布先においても間違いなく差し替えできるようにしなければなりません。 。
―それらの要求事項をシステムで満たすために、どういった検討をされたのでしょうか。
まずは機能とその限界を確認しつつ、運用を工夫することで実現範囲を拡大する方法を検討しました。
- 最新版が使用できるだけでなく、以前にどのようなやり方を行なっていたか再確認できる(版管理ができる)
- 文書同士の関連性(引用関係)を登録できる(ひとつの文書を改訂した場合、それに影響される文書を確認することができる)
- 固有の識別番号を持つことができる
上記3点は絶対でした。富士フイルムシステムサービスの「院内文書管理支援ソリューション」はこれらを全て満たしており、要件として問題ありませんでした。
―品質保証の面でも「院内文書管理支援ソリューション」は役立っているのでしょうか。
検査科の品質保証を考える際には、各々の文書を作成している目的をしっかり意識することが重要です。この「院内文書管理支援ソリューション」は、ISO9001に基づく業務分類項目を持たせることができるので、作成目的の指標として非常に良い参考となりました。
また、ISO15189においては何事においてもPDCAを回すことが求められています。例えば何か不適合な事柄が発生した場合、どうして発生したのか原因を調べ、その原因を除去できるような対策をとり、その対策が有効だったかどうかを検証しなければなりません。対策の多くは手順見直し、さらに文書改訂、周知が必要になります。こういった文書の登録~承認~確認をシステム内で実施できることも非常に良い点でした。
―承認フローのシステム化ですね。運用定着においては苦労されたのではないでしょうか。
当初はなかなか慣れないため浸透させるのに苦労しましたが、繰り返し使わせていくことで現場から「紙をなくしてくれ」との声が上がるまでになり、現在は完全なペーパーレスでこの流れを実施しています。
―その他、運用面で気を付けたことを教えてください。
こういったフローをシステムで回す以上、「なりすまし」を防ぐためにユーザ管理は徹底しています。管理者は回覧文書の未読者を把握し、そのような職員には声がけを行って内容確認を指示するといった運用が可能となっています。
環境に合わせた無理のない文書管理方法を決めることが大切
―直近では「記録」の管理に取り組まれているそうですね。
はい。文書があれば全て良し、ではありません。日々どのように業務を行ったか、どんなトラブルがあったか、機器の精度管理結果はどうだったのかといった事柄を記録していかなければ、検査結果がトレーサブルだとは言えなくなります。業務の数だけ記録があると考えるべきだと思います。ただ、当初は文書管理システムで「記録」を管理するつもりはなく、まずはエクセルを用いて管理すれば良いだろうくらいの感覚で作業を始めました。ところが調査してみると病理部門のみでも記録が70種類近く出てきてしまいました。
―相当な数ですね。表計算ソフトでは全体の把握が難しくなりそうです。
もちろん検索ができないわけではありませんが、どう考えても非効率であると思われました。ただしISO15189においての記録には作成者、作成日の記載は必須であり、さらにものによっては承認者のサインなども必要になります。追記する、サインをするといったものが原本であるとすると、結局、多くのものはペーパーでの運用とせざるをえません。その結果、文書管理システム内に新たに検査科専用の領域を設け、そこには記録そのものを登録するのではなく、記録類がそれぞれどこにどのような形態で保存されており、また保管期間はどのくらいなのか、廃棄方法はどうするといった事柄を登録していくという方法を採っています。
―「記録」も含め文書管理のポイントを教えてください。
「管理」といいますと、非常に難しく考えがちですが、どのような業務に関係する文書・記録なのかが明確で、誰が責任を持っているのか、どこに置かれているのかといったことが誰でも分かるようになっていれば良いのです。それぞれの施設の状況に合わせて、自分たちが無理なく「管理」できる方法を決めることが大事だと思っています。
―「院内文書管理支援ソリューション」を活用されて4年。ご感想をお願いします。
文書管理は大変だと思うかもしれません。実際取り組み当初はどのように文書を作成させようかと思いました。しかしISO15189という外圧は、職員の意識を同じ方向に向けさせる助けになるのも事実です。同じ目標に向かって検査科職員が実際に動くことで、文書管理は思ったよりすんなりと動いた気がします。目標が明確になれば、文書管理自体は難しいものではありません。基本的約束ごとを決めて、それをみんなが守れば自ずとできあがっていくと思います。
―最後に、今後の展望をお話しいただければと思います。
「記録の管理」は始めたばかりなので、運用していく中でまだ見えていない課題が出てくるかもしれません。課題が出てきた時は、新しい展開に進むきっかけだと考えて、職員が創意工夫を凝らして管理できる力をつけて欲しいと思います。またシステム自体もより使いやすいシステムに育ってくれると良いなと感じています。最後になりますが、ISO15189は検査の品質保証・品質向上が目的ですが、そのためにはPDCA を確実に回す必要があります。それを支えているのが「文書管理」だと思います。
川口市立医療センター様
昭和22年に開設。平成6年に現在地に地域中核病院として移転しました。現在、診療局として29診療科、看護部、薬剤部、診療支援部門(検査科、臨床工学科、臨床栄養科)、患者支援センター、さらに特殊診療局として救命救急センター、周産期センター、画像診断センター、総合健診センターを有しています。病床数は539床で、プライマリ・ケアから高度専門医療まで広範な医療を展開し、さらに埼玉県基幹災害拠点病院の役割を担っています。
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