和文書体の選び方

基礎

POINT

訴求対象や可読性を考えた書体選びをしましょう

書体とは文字のデザインのこと

日本語で使う文字には漢字、平仮名、片仮名がありますが、平仮名は漢字を楷書あるいは行書で表記したものがさらに崩されていき成立したとされています。片仮名は文字を崩すのではなく、もともとの漢字から一部を取り出して作られたといわれています。そしてそもそもの漢字は「字体」という文字の骨格を示す抽象概念と、それを書き表すための「字形」があります。

私たちが普段読み書きをするために使用している「書体」とは、もともとの字体を一定の形式で特徴づけて書き表された字形の体系というわけです。この書体には紀元前の中国で使われていた篆書体(てんしょたい)や隷書体(れいしょたい)、中国の木版印刷で使用された宋朝体、そして現在でももっともよく使われている明朝体などがあります。また、縦横の線が均一なゴシック体も近年では多用されています。このような文字のデザインをタイプフェイスといい、タイプフェイスが違う場合は「書体が違う」と考えればいいわけです。

書体の持つイメージ

現在では漢字、平仮名、片仮名のほか、数字やアルファベットも含めてデザインされたさまざまな書体があります。これらは大きく分けて「明朝体」と「ゴシック体」に分類することができます。一般的に明朝体は流麗でやわらかい女性的なイメージ、ゴシック体は力強く硬質な男性的イメージが定着しています。また、ゴシック体のバリエーションとして優しくかわいらしい印象を与える丸ゴシックや、目につきやすくインパクトのあるディスプレイ(POP)体なども多用されています。古代中国で使われていた篆書体なども大きな意味ではディスプレイ体に分類することができるでしょう。

装飾性の強い文字は、本文や小さく使う場面だと読みづらくなってしまう場合があります。文字量の多いところでは細めの明朝体やゴシック体を、タイトルなどインパクトを与えたいときには太いゴシック体や装飾性のある書体を選ぶとよいでしょう。草書体や行書体のような毛筆体は改まった文面などでよく使われています。

代表的なイメージを持つ書体見本

 

書体のイメージを理解するポイント

●優雅さ・上品さには明朝体、力強さにはゴシック体を選びましょう
●文字量の多い場面では細めの書体を選びましょう

 

 

基礎

POINT

書体選びの目安は「フトコロ」と「黒み」です

同じ書体でも印象が変わります

書体には明朝体や楷書体、ゴシック体などさまざまなものがありますが、同じ書体どうしでもオールドスタイルとニュースタイルなどの違いがあります。例えば、明朝体のオールドスタイルでは「はらい」や「はね」などが筆で書いたイメージを踏襲し、「フトコロ」と呼ばれる文字を構成する余白部分が比較的狭いデザインになっています。ニュースタイルでは縦線と横線の太さと細さが強調され、よりシャープなデザインになっているなどの違いがあります。同じようにゴシック体でもオールドスタイルとニュースタイルとではデザインが異なり、可読性にも違いがでてきます。

可読性とデザインで文字を選びましょう

文字の可読性はオールドスタイルとニュースタイルで異なるほかに、縦線と横線の太さでも違いがでてきます。この縦線と横線の太さはウェイトといい、ウェイトの細いものほど繊細でやさしい印象が強く、ウェイトの太いものほど力強い印象になります。フトコロの広いニュースタイルの書体でも、ウェイトの太いものを選ぶと黒みの強い印象になっていきます。基本的にはタイトルのように大きく扱う部分では「黒みの強い書体」を、全体の可読性を高めたい本文などには「フトコロが広い書体で細めのウェイト」を選ぶようにしましょう。

明朝体の字形の違いとウェイトの比較

 

書体を選ぶ場合のポイント

●ニュースタイルとオールドスタイルを使い分けましょう
●フトコロと黒みの割合で印象の強弱が変わります