原料と紙の中間「パルプ」 ~原料から取り出された繊維の状態~

今回からは「機械を通す、記録用の紙」をご紹介していきます。原料は植物(主に木材)を前提とし、原料からもう一歩紙に近づきます。

木から紙に一歩近づくと?

まず、「原料(主に木)」から「紙」にするために原料から繊維を取り出します。この取り出したものを「パルプ」といいます。パルプには製法や原料の違いによって5種類あります。では、種類別にお話ししましょう。

◆原料の違いによる分類

原料の違いでは3つに分けられます。
1、木材パルプ
2、非木材パルプ
3、古紙パルプ
2の非木材とは、第2回でご紹介した木材以外の植物を指します。あまり大量にできないので高価になりがちです。

製法による分類

木材パルプはさらに製法による違いで2つに分けられます。木材の繊維は、「リグニン」という物質で互いに接着されています。リグニンは、紫外線で変色する性質と、重油のように燃える性質を持っています。これから解説する2つの製法にリグニンが大きく関わります。

機械パルプ

 木材をすり潰すなど物理的な力をかけることで繊維を取り出す製法です。つまり、成分は木材とほぼ同じ。木材から高収率で繊維を取り出せる代わりに、先に述べたリグニンがそのまま含まれるため紫外線で変色します。長期保存に不向きで強度も弱くなるので、主に低質紙の原料となります。

機械パルプ

化学パルプ

 化学薬品でリグニンを溶解して繊維を取り出します。そのため純度は高いですが、木材からのパルプ収率は50%程度。純度の高い繊維がしなやかに絡み合うので強度が高く、長期保存も可能。白色度が高くすることが可能で、上質紙に使用されます。溶解した廃液はリグニンを多く含むため、バイオマスエネルギーとして、発電用に利用されます。 ちなみに、富士フイルムビジネスイノベーションが製造する用紙では晒(さらし)化学パルプというものを使用しています。これは、化学パルプを漂白したものです。

化学パルプ

 

補足:天然物の証

機械パルプは木材の成分とほぼ同じであるため、紫外線で変色する特質があることを述べました。化学パルプでも天然の証は残ります。どんなに高純度で繊維を取り出しても、元が天然素材なので異物の混入はゼロではありません。用紙にまざったり、付着したものを「夾雑(キョウザツ)物(黒点)」といいます。主な夾雑物は、木材チップに混入するゴミ、未蒸解の木材成分、木材中の樹脂分、抄紙装置の内壁に付着するカスや黒化した木材樹脂分です。

 

<今回のポイント>

●紙の原料となるパルプには製法と原料の違いにより5種類ある
●同じ原料を使っても、製法によって性質が変わる

 
 

おまけコーナー

Q.木が紙の原料になることを発見して、かつ実証した人は誰でしょう?




 

A.いません

 

意地悪な問題でしたね。実は、木材が紙の原料になると発見した人と、それを実証した人は違う人なのです。発見したのは1719年フランスの科学者レオミュール。スズメバチが木材をかみ砕いて紙のように薄い巣を作るところからヒントを得ました。一方、実証したのは、1840年ドイツの織物工ケラーです。木材から機械的に繊維を取り出すことに成功しました。

 

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