Q.紙の製造年代を特定することはできるのか!?
紙ってなに? ~繊維の世界~
紙とは?
紙がない生活って想像できますか?紙は私たちの生活の中で欠かせない存在ですよね。でも改めて考えてみたことってありますか?「紙」って何でしょう?
まず「紙」の定義を見てみましょう。「紙」とは日本工業規格(JIS)によると『植物その他の繊維を膠着(こうちゃく)させて製造したもの。なお、広義には、素材として合成高分子を用いて製造した合成紙のほか、繊維状無機材料を配合した紙も含む』とあります。 簡単にいえば『“繊維を水中に分散し、薄く平らにこし分けて、脱水・乾燥してできたもの”』が紙です。
紙は植物が原料になっているものがほとんどです。植物の繊維が盛んに使われるようになったのは何故だかわかりますか?
紙はなぜ身近な存在になれたの?
紙は植物が原料になっているものがほとんどです。植物の繊維が盛んに使われるようになったのは何故だかわかりますか?
「扱いやすく、安価」だからです。
ではなぜ、「扱いやすく、安価」なのでしょう?
下の写真は植物繊維の拡大写真です。繊維の表面にたくさんの枝のようなものが出ていますね。これらが絡みあい、原子の世界で結合(水素結合)することにより、しっかりとくっつき紙を形成しています。接着剤は必要ありません。これほどの単位までバラバラになっても、乾かせば自然にくっつくのですから成型のしやすさが納得できますね。同じことを人工的にやろうとすれば高度な技術が必要になり、植物ほど安くは作れません。
さらに、植物は化石燃料などと違い、再生可能な素材ですので、安価の理由もうなずけます。紙は、これらの特性を活かして作られ、発展してきました。
紙の用途は?
最後に、紙の用途は?
大きく分けて、3つの役割があります。
(1)記録する (2)包む (3)吸い取る
それぞれいわれれば納得ですよね。本コラムでは、(1)「記録する」紙を中心にお話ししていきますので、どうぞお楽しみに。
<今回のポイント>
●「紙」とは『繊維を水中に分散し、金網などで薄く平らに濾し分けて、脱水・乾燥したもの』である
●紙を作るのに接着剤は不要!
●紙の用途は「記録」「包む」「吸い取る」
おまけコーナー
A.答えは「大抵においてNO」だそうです。
最近開発された測定技術により、試料を切り取って成分分析することができればある程度年代を絞り込むことができるようになってきました。しかし、貴重な古文書などは切り取ることができないという問題や、精密な成分分析ができる研究機関が限られているために研究者の確保や費用が膨大にかかるといった問題があり、年代の鑑定は難しいというのが現状です。
★紙を調べる方法って?
成分分析には、比較的簡単に調べられる方法と、より正確に調べる方法の2種類があります。
比較的簡単な測定法
・使用している添加物や原料から調べる方法
正確な測定法
・14C年代測定法
「使用している添加物や原料から調べる方法」は検出された成分に特徴があればある程度絞り込むことはできますが、年代を特定することは難しいようです。また、「14C年代測定法」は、紙の原料である植物が生きていた頃にため込んだ炭素が死んだ(伐採された)後に徐々に減って行くという現象を利用して、残っている14Cの量を分析し、年代を特定する方法(加速器質量分析法)です。これにより、100年~150年の間におさまるくらいまで特定が可能になりました。