スマートファクトリー(スマート工場)とは?目的やメリット、成功事例を解説

2023.07.10

スマートファクトリー(スマート工場)とは?目的やメリット、成功事例を解説

スマートファクトリー(スマート工場)とは?目的やメリット、成功事例を解説

近年、製造業におけるDX化が注目されてきていますが、それに伴って「スマートファクトリー」という用語も注目を集めているのはご存じでしょうか?DX化を図るのであればスマートファクトリーという用語は必ず使用するので、今後DX化の推進を行なっていく方は把握しておくことをおすすめします。

当記事では、スマートファクトリーの基本情報や将来性、メリットなどを解説していくので、スマートファクトリーの理解を深めたい方は参考にしてください。

スマートファクトリー(スマート工場)とは、AIやIoT技術などを活用して効率的な業務管理を行っている「工場」のことです。業務管理の幅は設計から製造、保守までの業務効率に関わる全ての部分となっています。スマートファクトリーを目指すことで、高品質低コストの製品が実現したり、継続的な生産効率の向上が図れたりすることに繋がるのが大きな特徴の一つです。

「ものづくりのスマート化」のイメージ

「ものづくりのスマート化」のイメージ

スマートファクトリーは企業全体で取り組んでいくことで実現するため、推進していく場合は従業員全体にスマートファクトリーとは何かを周知していくことが大切になってくるでしょう。

企業がスマートファクトリー化を進める目的

企業がスマートファクトリー化を進める際は、目的をもって取り組んでいくことが重要となってきます。目的があれば、スマートファクトリー化に取り組む意義を従業員に感じてもらいやすくなるだけでなく、取り組むモチベーションの維持にも繋がるでしょう。

経済産業省は、2017年に発表したスマートファクトリーロードマップの中で、7つのスマート化の⽬的を掲げています。もし、スマートファクトリー化の具体的な目的が定まらない場合は、この7つの項目を参考に決めるのも一つの方法です。

【経済産業省が掲げるスマートファクトリー化の7つの目的】

  • 品質の向上
  • コストの削減
  • 生産性の向上
  • 製品化・量産化の期間短縮
  • 人材不足・育成への対応
  • 新たな付加価値の提供・提供価値の向上
  • リスク管理の強化

スマートファクトリーとDXの違い

スマートファクトリーと合わせて使われることの多い用語として、「DX」というものがあります。「DX(Digital Transformation)」とは、「デジタル変革」という意味を持つ用語で、AIやIoTなどのデジタル技術を用いて、企業をより良くしていく取り組みのことを指します。

つまり、スマートファクトリーは「工場」を指す用語で、DXは「取り組み」を指す用語であることから、根本的に用語の意味が異なるのです。DXを生産プロセスに採用している工場を「スマートファクトリー」と呼ぶため、基本的に2つの用語は一緒に使われることが多い点を踏まえて、混同しないように注意しましょう。

これらの違いをしっかりと認識しておくことで、スマートファクトリー化を目指した会議での会話の質が向上します。

2022年の時点で、デジタル技術を導入している企業の割合は約7割あると、経済産業省の調査(2022年版ものづくり白書 )で判明しています。この数値は決して少なくはないため、すでに多くの企業がデジタル技術の導入を実現していると認識できます。

多くの企業がスマートファクトリー化を進めることで、今後もスマートファクトリーは継続的に加速すると考えられます。また、それに伴ってAIやIoTの発展も期待できるため、今後の展望は明るいものと認識して問題ないといえます。製造業において「効率化」は常に模索され続けるポイントなので、効率化が求められる限りスマートファクトリーの発展は続いていくでしょう。

スマートファクトリーはDXを生産に組み込んでいる工場です。スマートファクトリー化を目指すことで生産効率が向上するなどのメリットが生まれます。DXの目的ともいえる「デジタル技術を使って競争上の優位性を確⽴すること」を目指し続ければ、企業の質は右肩上がりに発展していくことが見込めるでしょう。

他にも、スマートファクトリーには以下のようなメリットがあります。

【スマートファクトリーのメリット】

  • 品質向上
  • コスト削減
  • 人材不足の解消

デジタル技術で賄える業務は全てメリットになります。品質に不安があればAIを使った「画像検査」が有効ですし、人材不足の問題があれば機械の自動化を図って手作業の負担を減らすこともできます。企業の規模が大きくなればなるほどスマートファクトリー化のメリットは大きいため、現状の業務効率などに悩みなどがある企業は、DXを推進していくのがおすすめです。

スマートファクトリーのデメリットは、AIやIoTなどのデジタル技術を適切に扱うことができなければ、負担の度合いが高くなってしまうことでしょう。主なデメリットをまとめると以下の通りです。

【スマートファクトリーのデメリット】

  • デジタル化に現場の抵抗感が強い可能性がある
  • スマートファクトリー化を進めるべきかの判断が難しい

デジタル化によって生産効率が向上し続けることが見込めますが、現場で導入する体制が整っていなかったり、そもそもデジタル化しないほうが円滑に現場を進められたりする場合には、デメリットとして捉えられることもあります。デジタル技術を導入するには、それに対応していく準備が必要となってくるため、具体的な目的を持つことが求められるでしょう。

スマートファクトリーを構築するためには、一気に進めるのではなく段階的に進めていくことが大切です。特にDX推進を今まで行なってこなかった企業の場合、システム構築やネットワーク整備などの投資が必要となってくるため、一気に取り組んでしまうとリスクが高まって失敗した際の負担が大きくなってしまいます。

まずは「スモールスタート」を意識しつつ、小規模な導入と試作を重ね、リスクを最小限にしてスタートしましょう。補助金などが活用できればリスクはさらに軽減しますので、IT導入支援事業者などのプロに相談し、利用できる補助金等はしっかりと利用することが大切です。

スマートファクトリー化へのスタートを問題なく切れたら、その先は、数年単位でロードマップに沿って継続的な取り組みを行なっていきます。AIやIoTの機器を導入したからといって、スマートファクトリーの構築はすぐに完了しない点に注意が必要です。社内各部門との調整や合意形成などにもしっかりと取り組み、デジタル技術と社内体制の合理化を進めることでスマートファクトリーを構築していきましょう。

ここからは、スマートファクトリーの成功事例についてご紹介していきます。事例を知ることができれば、スマートファクトリーの構築について具体的なイメージを抱くことができるでしょう。明確な目的を定めることや、スマートファクトリーを目指すことの重要性を従業員にしっかりと認識してもらうためにも、以下3つの事例内容を押さえておきましょう。

事例1

小西化学工業株式会社は、2017年12月に、約25億円の投資をしてDHDPS製造用の新プラントを作りました。将来の完全無人運転プラントの実現に向けて、様々なIoT技術を導入しており、完璧なスマートファクトリーを作り上げることを目指しています。

IoTを活用することで生産活動の最適化を図っており、人材を最小限にするといった取り組みも成功しています。例えば、持ち運び可能なタブレット端末を用いることにより、ボードマンとフィールドマンの垣根を少なくし、省人化を達成しました。完全無人ではありませんが、無人化に向けて確実に人材の業務負担量を減らしており、今後さらに省人化は進むことが予想されます。
出典:2019年版ものづくり白書P.221 コラム

事例2

株式会社岐阜多田精機は、金型の製造を行なっている企業です。製造を立ち上げる際の条件出しや不良検出のために、金型へセンサーを取り付け、温度や圧力などの変化を可視化するシステムを導入しています。これにより、不具合が発生した際の迅速な原因究明ができるようになり、射出成型の現場でのDX化に役立っています。

また、不具合の発生時などの細かなデータを蓄積することで、正確な分析をAIが行えるようになり、工場全体の継続的な生産性・品質の向上に役立っています。
出典:2016年版ものづくり白書P.40 コラム

事例3

オークマ株式会社は、旋盤などのマシニング機械を製造している企業です。Okuma Smart Factoryと呼ばれる高効率生産工場の実現に成功しています。

IoTを活用することで少量でも量産レベルの生産性を保ち、マスカスタマイゼーションを実現しているのが特徴です。最新の加工機やロボット、無人搬送システムを多数設置し、それらを生産スケジュールに合わせて制御することで、人が手を加えることなく素材投入から加工完了までを行えるようになっています。

ちなみに、オークマ株式会社ではスマートマシンと呼ばれるAIを搭載した機械も製造しています。スマートマシンは機械と加工の状態を判断し、自律的に最適加工を行う知能化工作機械です。この機械を利用すれば、スマートファクトリー化が大きく進展することが期待できます。
出典:2020年版ものづくり白書全体P.160 コラム

スマートファクトリー化に取り組む際、全ての企業が同じ方法で取り組めば良いという訳ではありません。既存の設備や組織体制など様々な状況を加味して、その時に最適な方法で取り組むことが重要です。そのため、スマートファクトリー化を目指す際は以下のポイントを意識して取り組むことをおすすめします。

【スマートファクトリー化に取り組む際のポイント】

  • 既存システムとの連携
  • 将来的な機能拡張の可能性の把握

先にご紹介した成功事例でも、既存の製造システムなどにDXを取り入れることでスマートファクトリー化を実現しています。もちろん、ゼロからスマートファクトリーを構築することもできなくはないですが、既存システムをいかに効率化していくかを検討したほうが、従業員の抵抗感も少ないでしょう。

スマートファクトリーとは、AIやIoT技術などを活用して効率的な業務管理を行っている「工場」のことです。DXと混同される方もいますが、スマートファクトリーは「工場」を指す用語で、DXは「取り組み」を指す用語であることから、根本的に用語の意味が異なるので注意してください。

経済産業省の調査では、デジタル技術を導入している国内企業は全体の約7割で、今後の展開が期待されています。これからスマートファクトリー化を目指すことを検討しているのであれば、過度なリスクを負わないためにも、既存のシステムとの連携を図りながらスモールスタートを意識して、継続的な取り組みをしていくことをおすすめします。