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平成7年12月21日
富士写真フイルム株式会社
本年5月18日のコダックの301条提訴以来、当社はその主張内容における事実誤認、事実の歪曲などに対し遂一反論して参りました。
本日、当社はコダックが繰り返し主張している「日本のフィルム市場の流通ボトルネック」論に関し、新たな反論資料をUSTRに提出いたしましたので、ここにその概要をとりまとめお知らせいたします。
コダックの301条提訴の核心となる部分は「日本のフィルム流通市場は、富士の特約店4社によってコントロールされており、このためコダックは小売窓口にアクセス出来ない」というものであります。しかし、本報告書により、このコダックの主張は全く誤ったものであり、コダックフィルムは日本全国において、小売店頭で多大に取扱われていることがご理解いただけるものと信じます。
市場アクセスに問題など存在しないのです。即ち、コダックの301条提訴はその根本としている理由を失ない、全く根拠がないことは明らかであります。
以上
目 次
エグゼクティブ・サマリー
反論書の概要
A.「特約店の取引先調査」はボトルネックが存在しないことを示している
- 特約店の取引先の多くは既にコダックを取扱っている
- 日本の小売構造は、コダックの参入を妨げない
- 特約店がコダックフィルムを取扱っても、日本コダックと競合してしまう
B.コダックは二次卸商によって全国的にカバーされているということを隠している
- コダックは不当に二次卸商の販売範囲を狭めている
- コダックは不当に二次卸商の範疇を狭めている
- コダックは二次卸商等の再販ルートでも幅広くカバーされている
C.コダックは日本の小売店に十分アクセス出来ている
- もう一つの「コダックフィルムの取扱比率調査」もコダックの十分なアクセスを証明している
- コダックの低シェアは市場アクセスの問題ではない
D.結び
別紙
コダックの主張の核心は、富士フイルムとその特約卸商(特約店)が日本の小売店からコダックを締め出しているとする、いわゆる「流通のボトルネック」論である。この主張こそがまさにコダックの301条提訴の基本となっているものである。
この反論書において、富士フイルムはこのコダックの主張が完全に誤っていることを示す新しい事実情報、第三者である市場調査会社の協力を得て実施した広範な調査結果を提供する。これらの情報は極めて客観的で説得力のあるものであり、コダックはこれらの事実を否定する事は困難であろう。
- 富士フイルム特約店の取引先の大多数はすでにコダックフィルムを扱っているか、あるいはコダックフィルムの卸売業者と取引がある。「特約店の取引先調査」によれば、特約店の取引先の78%(特約店のそれら取引先に対する販売数量でみれば、その87.3%を占める)がコダックフィルムを扱っているか、すぐ入手できる状態にある。この浸透の度合は東京、大阪だけでなく日本全国どこでも同様である。特約店の取引先がすでにコダックフィルムを扱っているのであれば、コダックの進出を阻む「ボトルネック」などありえないのである。
- 特約店はコダックの言うような「必要不可欠な存在」ではない。日本には多くの販売窓口があるが、写真専門店、ディスカウント・ストアー、スーパーマーケット等の、数にすれば全体の17%にすぎない窓口が販売数量においては実にその73%を占めている。調査結果は、これらの販売数量の多い窓口におけるコダックフィルムの取扱比率は極めて高いことを示している。
- コダックフィルムは、多くの二次卸商によっても広く販売されている。富士フイルムが「歴史の改ざん」で掲げた90社の二次卸商のうち17社について見ただけでも、日本の47都道府県のうち37都道府県に営業所を持っており、さらにその販売エリアをみれば、日本中がカバーされているのである。
- 「特約店の取引先調査」において、取引先のうちでその主たる機能が再販売である再販業者(二次卸商、ラボ、観光地売店などの小口窓口へ再販売している業者)を取り出してみると、そのうち販売数量ベースで約80%に相当する業者がコダックフィルムを既に取り扱っているか、現在の取引関係を通じて直ちに入手できる。
- 小売店にコダックフィルムがどの程度置かれているか、に関するもう一つの調査では、コダックが日本中の店に広く行き渡っていることを示す結果がでている。フィルムの販売数量ベースでは、コダックは地域によりその56.4%から77.4%を占める販売窓口をカバーしている。この事実はコダックの主張を根本から揺るがすものである。
- コダックが最も広く置かれているのは写真専門店であるが、これは皮肉にも富士フイルムの支配が最も強いとコダックが主張している業態である。コダックは、販売数量ベースでは地域により74.0%から91.8%を占める写真専門店をカバーしている。
- 「消費者の嗜好調査」の結果は、以上のカバー率調査の結果を裏付けている。即ち、コダックフィルムを購入しない理由に、店で入手できないことを挙げたのは、最も多い地域でも消費者の17%未満であり、平均では12.5%と極めて少ない。日本の消費者の大多数は、小売店でコダックを入手することになんら困難を感じていない。
これらの調査の結果は、すべてコダックの主張に相反するものである。このデータすべてが、日本コダックは実際には特約店と競争して小売店に十分にアクセスしているという市場の認識と一致する。特約店が、購入後すぐに競争相手となることが明らかな日本コダックから、喜んで製品を購入するということが有り得るであろうか。
コダックは、富士フイルムの今回の新しい証拠は公刊されたデータによるものではない、として無意味な非難をするかもしれない。しかし、コダックの「流通のボトルネック」論を検証するために必要な公刊されたデータは全く無い。その当否は各社の営業データから見出さねばならず、さらにそれを補足する調査も必要である。コダックは、コダックフィルムを入手できるのは日本の小売窓口のわずか15%のみである、という主張を繰り返すがこれには全く根拠が無い。さらに、この15%なる窓口が市場における販売の何%をカバーしているのかも全く示していない。日本コダックの営業データには、ここで述べている重要な問題、つまり日本コダックと富士フイルムの特約店との取引先の重複、二次卸商販売エリア、主要小売店におけるコダックの浸透度合いと販売数量ベースでのカバー率等に関する情報が、豊富に含まれていることは間違いない。富士フイルムは、もしコダックが今回の新しい証拠に反論したいのであれば、これらの重要な問題についての反対証拠を、市場実態をふまえた自らの営業データから提出するよう要求する。
最後に、コダックがどのような「証拠」を提出しようと、それを詳細に見れば、富士フイルムの主張が正しいことが明確になると確信している。「流通のボトルネック」など存在しないのである。
もし特約店の取引先の多くが、既に他のチャネルからコダックフィルムを仕入れているなら、コダックの主張は否定され、ボトルネックは存在しないということになる。
「特約店の取引先調査」(*注)では、既に大部分の取引先がコダックフィルムを取扱っており、販売数量ベースでは更にそのウェイトは上がる。現時点で、コダックフィルムを扱っていない取引先であってもコダックフィルムをいつでも仕入れられる二次卸商やラボ等と取引のある店を、これに加えれば、コダックフィルムの取扱い比率は更に上昇する。
- 図1に示す通り、特約店の取引先の62.0%が既にコダックフィルムを取扱っている。更に16.0%の店が、コダックフィルムを取扱っている二次卸商やラボ等と取引きがある。合わせて78.0%の店が特約店を経由せず、コダックのフィルムを直ちに入手できるのである。
- また、単に店数によるのではなく、店毎の販売規模を考慮したコダックフィルムの取り扱い状況を確認することが必要である。(本調査では1995年上半期の特約店4社のカラーフィルムの販売量を適用した)この数量ベースで言えば、コダックフィルムを既に取り扱っている店の比率は77.3%となり、二次卸商やラボ等から購入可能な店は10.0%ある。合計87.3%の店が特約店以外のルートからコダックフィルムを直ちに購入できるわけである。
- コダックは東京、大阪といった大都市以外では小売店頭へのアクセスが難しいと主張してきたが、この調査結果を見れば、別紙1で示す通り全国的に良くアクセス出来ていることがわかる。
- 本調査では、かつてコダックフィルムを取り扱っていた小売店に、何故取り扱いを中止したのかについても尋ねている。主な答えは「売れないから」というものであった(別紙2参照)。更に何故コダックフィルムが良く売れないのか尋ねた。答えは単純に「消費者がコダックフィルムを選ばない」というものであった(別紙3参照)。コダックが置いてあってもチョイスされないのである。
- コダックの「富士フイルムの特約店こそ日本市場にアクセスする唯一の手段」という主張の誤りは、この調査結果で明らかである。
(*注):
本調査は、富士フイルムの特約店4社及びNTTテレマーケティング(株)、(株)日本リサーチセンターによって実施された。調査対象は4,772店(二次卸商、ラボを含む。小売窓口数は13,445窓口)、調査対象全体で、特約店4社のフィルム販売の95%以上をカバーする。
【図1】
- コダックは、日本には非常に多くの小売窓口があるので、特約店の助けが無くてはアクセスできないと主張している。一方、前述の調査でコダックフィルムが特約店の取引先で広範囲に扱われていることが判明した。
- 「フォトマーケット」(1995年版)によると、1994年には279,000店がフィルムを取り扱っているが、特に17%の大量販売店(写真専門店、ディスカウントストアー、スーパーマーケットなど)が73%のフィルムを扱っているとされている。また、この内の147,500店はタバコ屋、書店、クリーニング店などのDP受付け窓口であり、フィルム販売量の10%を占めるにすぎない(別紙4参照)。
- 今回の「特約店の取引先調査」を見ても、調査対象となった4,772店で特約店の販売するフィルムの95%以上を販売している。これらの店の大部分は大量販売店であり、残りの数百店の再販業者が何万店もの店に再販売しているのである。
- 279,000の総窓口数が問題なのではなく、日本市場の大半をカバーしている大量販売窓口が重要なのである。コダックは既にそこへのアクセスに成功している。特約店の取引先の62.0%(販売数量ベースでは77.3%)がすでに取り扱っており、アクセスできる状態にある店を含めると78.0%(販売数量ベースでは87.3%)となる。更に後述するように、コダックは二次卸商へのアクセスにも成功している。
コダックは特約店経由でフィルムを売りたいと言っている。しかしこの要望を実現する為にはコダックは自身の流通構造を変えねばならない。何故なら特約店は、日本コダックと同じ流通レベルにあり、日本コダックと直接に競合するからである。特約店は競争相手である日本コダックから仕入れたいと思うであろうか。(図2参照)
コダックは自分がまだアクセスしていない22%(販売数量ベースでは13%)の窓口について、特約店ルートを活用したいと望んでいるのかも知れない。しかしメインの78%に日本コダックが売っていたのでは、特約店にとってそれは魅力的な申し出ではない。
コダックは存在してもいない「流通のボトルネック」論を問題としてとりあげた為に、「富士フイルムの特約店を通じて販売する」という現実ばなれした解決策を提示してきたのである。
【図2】
コダックは、二次卸商は大都市のみカバーしているに過ぎないと主張しているが、市場の現実はコダックが描いているのとは大きく違っている。二次卸商は実際にはほとんどすべての日本市場をカバーしているのである。
- コダックは、二次卸商の販売エリアはその本店が位置する都道府県のみだという全く誤った主張をしている。コダックは二次卸商の営業所によってカバーされる広い範囲を無視してしまっているのである。
- 日本の47都道府県の内の37都道府県に、コダックフィルムを扱う二次卸商の営業所があり、近県をもカバーしているのである。したがって現実には日本市場は全てカバーされているのである。
コダックは二次卸商を「フォトマーケット」誌の中の表にリストアップされているものだけと誤解している。しかし、それ以外の多くの二次卸商が大都市以外の地域で営業を行い、小口の販売窓口に対する販売を担っているのである。富士フイルムは「歴史の改ざん」において90社の二次卸商をリストアップし、その強い販売力について言及した。コダックの理解は市場の現実に全く合わない間違ったものである。
「特約店の取引先調査」において、かなりのウェイトの再販機能をもつ取引先を取り出し、コダックフィルムの取扱い比率を調査したのが別紙5である。ここで示されている様に、販売店数からも販売数量ベースからも、コダックはこれらの再販業者の中で非常に広い範囲でカバーされている。これら再販業者の67.7%(販売数量ベースでは79.4%)はすでにコダックを扱っているか、いつでも扱える仕入れルートをもっている。そしてこれらの再販業者は日本中のどこにでも位置しているのである。
コダックが、日本の小売店の店頭にすでに幅広くアクセスしていることを示す、もうひとつの調査結果がある。これは第三者機関である(株)日本リサーチセンターが行ったものであり、前述の「特約店の取引先調査」の結果を裏付けるものとなっている。首都圏(東京)、京阪地区(大阪・京都)及び静岡、新潟、岡山という中都市圏を選んで、無作為の2,274のフィルム販売窓口を対象に、コダックフィルムが店頭に置かれているかどうかを調査した結果は表1の通りとなっている。
【表1】
この調査から以下の事実が明らかになる。
- カラーフィルムの販売量の4分の3を占める、写真専門店、ディスカウントストアー、スーパーマーケットなどの窓口ではコダックは幅広く取扱われている。
- 他のタイプの販売窓口では取扱比率はやや少なくなるが、これらの窓口は数こそ多いが、店頭スペースの狭い、販売量の少ない窓口である。小規模店では店頭スペースの関係から最も人気のあるブランドのみを選ぶ傾向が強い。小さな販売窓口でコダックフィルムの取扱比率が低いのは常識にかなっている。米国でも同様の小口の窓口でコダック以外のフィルムを扱っているケースは少ないのである。
- コダックフィルムの取扱比率は、予想通り東京地区が他の地方都市に比べて高くなっているが、その差は小さく、日本全国で幅広く取扱われていると云える。
- 写真専門店は、日本のカラーフィルム販売量の半分を販売していると云われているが、コダックはこの写真専門店こそが富士フイルムの特約店の支配によりコダックフィルムを排除している元凶だと主張してきた。しかし、別紙6に示す通り、写真専門店におけるコダックの取扱比率は高いものであり、東京では店数比率で約67%、販売量比率では約92%の取扱比率となっている。地方都市においても店数比率で約52%、販売量比率では約77%の取扱比率を確保しているのである。
- 重要なのは、全ての窓口にフィルムを置くことではなく、販売量の多い窓口に置くことだという点から見ても、コダックフィルムは、日本市場の販売窓口において十分な取扱比率を示している。
これでもなお、コダックは日本市場で流通から排除されていると主張するのであろうか。
さらにもう一つの調査がある。(株)日本リサーチセンターが毎月実施している消費者パネル調査があるが、本年10月カラーフィルムに関する質問項目が組み込まれた。「あなたは何故コダックフィルムを買わないのですか」という質問に対する回答のうち
- 一番多いのは「他のブランドが好きだから」とするもので、925人中416人(45%)を占めている。
- 「コダックが店頭にないから」という理由をあげた人は12.5%にすぎない。
- しかも、「コダックフィルムが店頭にないから」という回答はコダックの主張とは違って、大都市圏と地方圏で大きな差はないのである。(別紙7参照)
日本の消費者の大部分は、コダックフィルムが店頭にあることは認識しているのである。
以上の通り、コダックの主張してきた「流通のボトルネック」論は完全に根拠のないものであり、コダックが日本市場にアクセスするのには何の問題も存在しない。富士フイルムが「歴史の改ざん」の第4章で述べた通り、コダック自身の日本でのやり方こそが改めて問われるべきであると考える。
【別紙1】
【別紙2】
【別紙3】
【別紙4-1】
タバコ屋、書店、クリーニング店などのDP受付け窓口での販売比率 2%+8%=10%
【別紙4-2】
【別紙5】
【別紙6】
【別紙7】
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