このニュースリリースは、報道機関向けに発信している情報です。
富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、このたび、自家滑膜間葉系幹細胞※1を用いた再生医療等製品「FF-31501」(開発コード)の臨床第Ⅲ相試験を国内で開始しましたので、お知らせいたします。本試験は、半月板の切除術が適応となる半月板損傷を対象としたものです。
今後、当社は、「FF-31501」の実用化を加速させ、半月板を温存する新たな治療を確立することで、整形外科分野におけるアンメットメディカルニーズに応えていきます。
半月板は、膝関節のクッションの役割を担う重要な組織です。半月板損傷は、加齢やスポーツなどでの強い衝撃により、半月板が断裂することにより生じます。膝の曲げ伸ばしの時に痛みやひっかかりなどを伴い、ひどい場合には膝に水が溜まる、または、歩行困難に陥るケースもあります。
現在、半月板損傷の治療法として、小さな傷口で施術可能な関節鏡を用いて半月板を治療する縫合術と切除術があります。縫合術が適応できる断裂の部位や状態は限定的であるため、多くは切除術が行われています。しかし、切除術では、半月板が失われることで膝の軟骨への負荷が大きくなり、変形性膝関節症※2が進行するリスクが高まるといった問題があります。
当社は、国立大学法人 東京医科歯科大学(以下TMDU)再生医療研究センター長の関矢一郎教授が開発した細胞移植技術に着目。本技術は、関節鏡を用いた低侵襲な方法により、自家滑膜間葉系幹細胞を培養した細胞懸濁液を投与するものです。投与後、同細胞が半月板損傷部に生着し治癒を促進することから、半月板の温存を可能とし変形性膝関節症のリスクを低減する新しい治療であると期待されています。すでにTMDUが実施した医師主導治験※3では、良好な結果が得られています。当社は、2019年に、本技術を用いた再生医療等製品の開発・製造・販売に関する独占的実施権をTMDUより取得しました。
今回実施※4する臨床第Ⅲ相試験は、半月板の切除術が適応となる半月板損傷の患者を対象に、関矢教授の細胞移植技術を活用した再生医療等製品「FF-31501」の有効性および安全性を検証するものです。本試験の主要評価項目には、膝の痛みや機能を判定する評価法であるリスホルムスコア※5を採用。さらに副次評価項目に、関節鏡およびMRIによる治癒状態の画像確認などを設定して、「FF-31501」を移植後52週目に、半月板の機能および構造が回復し膝の痛みが改善することを検証していきます。
なお、本試験の目標症例数は18例で、すでに第一例目の試験は東京医科歯科大学病院にて開始されています。
当社は、今後「FF-31501」の実用化を推進し、半月板の温存を可能とする新たな治療法の確立を目指します。また、診断領域で提供している、3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT(シナプス ヴィンセント)※6」の膝関節解析ソフトウェアなどもあわせた、膝疾患向けソリューションの展開を図り、人々の健康維持増進に貢献していきます。
小さな傷口で施術可能な関節鏡を用いた低侵襲な方法により、自家滑膜間葉系幹細胞を培養した細胞懸濁液を投与する技術で、TMDU 関矢教授が開発したものです。TMDUと当社は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の研究開発課題※7として、本技術による半月板損傷治療に関する共同研究を実施。さらに、AMEDの支援※8のもと、TMDUが本技術を用いた再生医療等製品の医師主導治験を実施するなど、実用化に向けた取り組みを進めてきました。
TMDU 関矢教授が実施した医師主導治験では、半月板の切除術を勧められた半月板損傷患者に対して、自家滑膜間葉系幹細胞の移植が実施され、主要評価項目であるリスホルムスコアにおいて良好な結果が得られました。
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関矢 一郎