富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、色素を用いず、光の反射によって生じる発色現象である「構造色」を発現させ、意匠性の高い加飾印刷を可能にする「構造色インクジェット技術」を新たに開発しました。本技術は、インクに色素となる染料や顔料を含まず、基材定着時にインク膜内に微細構造を形成する技術により、構造色を発現させるものです。構造色の多彩な色合いをインクジェット印刷で自在に表現でき、樹脂やガラスの装飾などに最適です。本技術は、シチズン時計株式会社が今年7月に発売予定の腕時計の文字板や、アーティストの舘鼻則孝氏が制作するアートピース※1に採用されました。
- ※1 工芸における「芸術作品」のこと
構造色とは、光の波長程度の微細構造によって生じる発色現象です。物質自体に色素が無くても、その微細な構造によって光が干渉・分光することで発色して見えます。自然界ではモルフォ蝶やタマムシ、貝殻などの例が挙げられ、その鮮やかな色彩が特長です。
![[画像]タマムシ](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/8a1fb07f052c52d911cbc01c5da5b907/news_7724_01.jpg)
タマムシ
![[画像]モルフォ蝶](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/55f1c6bb78b4e44e9f6ea81a09f73c92/news_7724_02.jpg)
モルフォ蝶
![[画像]貝殻](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/0130c3a7ecb5eea69503f3f2106c9dc6/news_7724_03.jpg)
貝殻
今回新たに当社が開発した「構造色インクジェット技術」は、富士フイルムの分子制御技術を応用し、フィルム基材上に吐出したインク内に微細な構造を形成して発色させるものです。色味の異なる構造色を発現するインクを複数種用意し、その組み合わせやインクの濃度を調整しながら、構造色のパターンやグラデーションなどを自在に描画することで、高い意匠性を実現します。
![[画像]ガラスへの加飾イメージ](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/7bf1a2dd83ef951c480617f9d83dcb7b/news_7724_04.jpg)
ガラスへの加飾イメージ
本技術は、透明な樹脂やガラスの装飾にも適しており、今回採用された時計やアートピースのように、ファッション用品やインテリアの分野で活用できます。また、店頭の内外装やディスプレイへの加飾といった空間デザインにも応用できます。多品種・少量生産や多様なデザインを可能にするインクジェット印刷の特長を生かし、幅広い分野や用途へ展開していく予定です。
当社は、産業用インクジェット市場における多様な用途やお客さまのニーズに応じて、今後も画期的な製品を開発・提供し、さまざまな産業の発展に貢献していきます。
記
1. 「構造色インクジェット技術」の特長
![[画像]フルカラーの構造色](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/18956633a29758ea8ac40fbe17423418/news_7724_05.jpg)
フルカラーの構造色
① フルカラーの構造色を表現
色味の異なる構造色を発現する複数種のインクを組み合わせることで、光の波長によって生じる赤色から青色まで、フルカラーの構造色を表現できます。
![[画像]構造色のパターン例](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/9d53739476a7be3f30fdbf5adbd57d65/news_7724_06.jpg)
構造色のパターン例
② 構造色のパターンとグラデーションを表現
インクジェット印刷により構造色を自在に描画できるので、さまざまな色味のパターン表現や、色の濃度を変化させたグラデーション表現も可能です。
③ 角度や背景色によって変化する発色
同じ印刷物でも、見る角度によって色合いが変化します。また、背景色によっても色合いが変化します。黒色の背景に構造色を加飾すると、透過光が吸収されて構造色の反射色が見えますが、白色の背景では透過光が吸収されず、その補色が見えるようになります。
![[画像]同じ印刷物でも見る角度で色が変化](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/2dc8bc69cc0f26ec0f1e41311bb65a98/news_7724_07.jpg)
同じ印刷物でも見る角度で色が変化
![[画像]背景が黒(左)、白(右)とで色が変化](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/01720b25fe7f2296221c831d4e5a6383/news_7724_08.jpg)
背景が黒(左)、白(右)とで色が変化
2. 「構造色インクジェット技術」の採用例
① シチズン時計の文字板
![[画像]CITIZEN L『アンビリュナ』](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/c8e8151dc0ac614d9a0e63e2e21d660f/news_7724_09.jpg)
CITIZEN L『アンビリュナ』
本技術は、シチズン時計株式会社が今年7月に発売予定の、環境や人に配慮したサステナブルウオッチブランド『CITIZEN L(シチズン エル)』のシグネチャーライン『アンビリュナ』の腕時計の文字板に採用されました。同ラインアップでは、「バイオミミクリー」という生物の形態や構造から学んだ手法や技術を取り入れており、そのコンセプトと本技術が合致して、シチズン時計株式会社と当社が共同で文字板に再現する構造色を試験段階から検討しました。
② 舘鼻則孝氏のアートピース
![[画像]舘鼻氏の作品で使用される構造色](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2022-03/324e4db6244d2c664a3aebb85b4f146e/news_7724_10.jpg)
舘鼻氏の作品で使用される構造色
世界的に話題を集めた踵の無い「ヒールレスシューズ」を生み出すなど、グローバルで活躍するアーティスト舘鼻則孝氏が制作する、アートピースの素材に本技術が採用されました。今年4月16日からギャラリー「KOSAKU KANECHIKA(東京都品川区東品川1丁目33-10)」にて開催される同氏の個展「Primary Colors」でアートピースが展示されます。舘鼻氏の採用理由は次のとおりです。「創作活動では、日本の伝統文化や伝統工芸を、常に革新を積み重ねて発展させていくという考えを大切にしています。こうした考えと、本技術が富士フイルムの研究者のたゆまぬ技術革新によって生み出された点が合致しました。構造色を機械で再現する技術でありながら、まるで画家が絵筆で描いたような抑揚のある自然な表情を描ける点が決め手でした。」
富士フイルムのインクジェットソリューション
当社はインクジェットシステムを構成する「ヘッド」「インク」「画像処理」の3要素すべてを開発できる技術と、それらをインテグレーションする技術を強みに、先進的なインクジェットソリューションを提供しています。例えば、インクジェットソリューション「UVIQUE(ユビーク)」は、柔軟で摩擦に強いインクの技術を応用し、皮革・合皮の質感を生かした高画質な印刷を実現。鞄やソファ、車やバイクのシートといった耐久性が求められる幅広い用途の革製品に活用いただけます。また、昨年12月に提供を開始した新サービス「FUJIFILM Integrated Inkjet Solutions」は、メーカー企業やブランドオーナーが求める生産速度や画質、印刷する基材などに応じて、当社が最適なヘッド・インク・画像処理方法などを選定し、カスタマイズしたインクジェットシステムを提供することで、お客さまの印刷内製化を支援しています。
今後も、産業用インクジェット市場における多様な用途に応じた新たなビジネスの創出を進めていきます。
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