富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、2025年2月23日からの5日間、米国カリフォルニア州サンノゼで開催される国際光工学会SPIE主催の半導体関連技術の国際カンファレンス「SPIE Advanced Lithography + Patterning 2025」(以下、「SPIE 2025」)において、最新の研究成果を論文発表することをお知らせします。
「SPIE 2025」は、半導体業界のリーダーや著名な研究者、エンジニアが一堂に会し、半導体のリソグラフィ関連技術に関する最先端の研究成果と技術革新を共有する、世界的に権威のある国際カンファレンスです。今年は、500件を超える技術成果が発表されるほか、技術展示会も同時開催され、リソグラフィ技術の新たな進展や材料科学の革新、プロセス技術の改善など、多岐にわたるセッションと講演が予定されています。
富士フイルムは、フォトレジスト*1やフォトリソ周辺材料*2、CMPスラリー*3、ポストCMPクリーナー*4、薄膜形成材*5、ポリイミド*6、高純度プロセスケミカル*7など半導体製造の前工程から後工程までのプロセス材料や、イメージセンサー用カラーフィルター材料をはじめとした Wave Control Mosaic(ウエイブ コントロール モザイク)™*8などをグローバルに展開。最先端からレガシーノードまで半導体製造プロセスのほぼ全域をカバーする豊富な製品ラインアップに加え、日米欧アジアの主要国に製造拠点を有するグローバルな安定供給体制や高い研究開発力を生かしたワンストップソリューションの提供により、顧客の課題解決に取り組んでいます。
当社は、リソグラフィ分野において、EUV*9とナノインプリントリソグラフィ*10(以下NIL)という2つの最先端の半導体技術領域で材料を提供している唯一の材料メーカーです。
今回、当社は、「SPIE 2025」にてNTIプロセス*11に対応するネガ型EUVレジスト・EUV現像液と、NILに対応するナノインプリントレジストの最新の研究成果について論文発表します。
富士フイルムのEUVレジスト・EUV現像液について
当社は、現在広く普及しているネガ型レジストの現像工程であるNTIプロセスを世界で初めて開発・実用化し、ArF露光*12を用いた半導体の微細化をリードしてきました。EUV向けに進化させたNTIプロセスに対応するEUVレジストとEUV現像液を組み合わせて提供することで、回路パターンの形成プロセスを最適化し、さらなる微細化に貢献します。EUVレジストでは、当社が従来のフォトレジストなどの開発で培った機能性分子技術を活用して、EUV露光時のレジスト膜中の酸濃度を均一に保たせることで、従来の化学増幅型レジストの課題であった回路パターンのばらつきを約17%*13低減させることに成功。EUV現像液では、有機溶剤の処方を工夫することで、独自のNTI現像液*14をEUV向けに進化させました。現像時のレジストの膨潤を極限まで抑え、回路パターンのさらなる微細化に貢献します。
SPIE2025で発表する研究成果
本発表では、上記のNTIプロセスに対応するEUVレジストおよびEUV現像液の特長を実現するために開発した当社の材料技術を紹介します。
現在「アルカリ現像タイプのポジ型EUVレジスト」が主流である中、当社は「溶剤現像タイプのネガ型EUVレジスト」と専用の「EUV現像液」を開発。回路パターンを高い解像度で形成することに成功しました。今回の発表では、微細なライン(線状)パターンのほかに、ピラー(柱状)パターンやホール(穴状)パターンの加工に対応したさまざまなパターニング事例を紹介します。また、EUV CAR-NTI*15の今後のロードマップも示します。なお、「SPIE 2025」にて、他社からもEUV CAR-NTIの実用化を支える研究成果の発表が予定されており、本技術の発展性が期待されます。
富士フイルムのナノインプリントレジストについて
当社のナノインプリントレジストは、マスクに刻み込まれた複雑な回路パターンに均一に素早く充填でき、ナノメートルレベルの回路パターンを忠実に短時間で転写・形成。さらに、UV照射により硬化させた後、マスクを高速で剥がしてもレジストに転写された回路パターンに欠損を生じさせない優れた離型性を発揮します。これにより、NILの実用化に向けた課題であった、スループット(時間当たりのパターニング処理能力)向上と低欠陥による歩留まり改善を可能にし、先端半導体製造時のコスト低減と省電力化に貢献します。
SPIE2025で発表する研究成果
当社はNILによる半導体デバイス製造を実現するために、インクジェットによるレジスト塗布、レジスト充填、離型などさまざまなプロセスに適用可能なモノマー、接着剤、離型剤などの機能性材料を独自に設計・合成し、ナノインプリントレジストの開発に成功しました。本発表では上記の当社ナノインプリントレジストの特長を実現するために開発した当社の材料技術、および、専用に開発した密着剤について紹介します。
「SPIE Advanced Lithography + Patterning 2025」の概要
- 開催日
2025年2月23日~27日
- 会場
米国カリフォルニア州
San Jose McEnery Convention Center
- *1 半導体製造の工程で、回路パターンの描画を行う際にウエハー上に塗布する材料。
- *2 半導体製造のフォトリソ工程で使用する現像液やクリーナーなど。
- *3 硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体表面を均一に平坦化する研磨剤。CMPは、Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略。
- *4 CMPスラリーによる研磨後に、金属表面を保護しながら、粒子、微量金属および有機残留物を洗浄するクリーナー。
- *5 低誘電率の絶縁膜を形成するための材料。
- *6 高い耐熱性や絶縁性を持つ材料。半導体の保護膜や再配線層の形成に使用される。
- *7 洗浄・乾燥工程に使われる高純度薬品。半導体製造の洗浄・乾燥工程で異物を除去したり、エッチング工程にて金属や油脂などを取り除くために使用する化学薬品。
- *8 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられるCMOSセンサーなどのイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。Wave Control Mosaicは、富士フイルム株式会社の登録商標または商標です。
- *9 極端紫外線を用い、10ナノメートルより微細な世代に必要とされる最先端リソグラフィ技術。
- *10 高性能な先端半導体を低コスト・省電力で製造できる新しい製造技術。半導体製造に用いるウエハー上のレジストに、回路パターンが刻み込まれたマスク(型)をハンコのように押し当てて回路パターンを転写・形成する技術で、半導体製造で広く使用されているフォトリソグラフィと異なって現像工程やリンス工程がなく、露光に用いる複雑な光学系も不要。
- *11 Negative Tone Imaging プロセス。露光後に感光しなかった部分を現像液で除去して回路を作るネガ型の現像工程。
- *12 ArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザー光(波長193ナノメートル)を用いる露光手法で、現在最も普及している先端リソグラフィ技術。
- *13 回路パターンのゆらぎの指標となるLWR(Line Width Roughness)を、PCPを用いない場合と比べて約17%低減させた。当社調べ。
- *14 Negative Tone Imaging現像液。露光後に感光しなかった部分を現像液で除去して回路を作るネガ型の現像工程で使用される。
- *15 化学増幅型レジスト(CAR)のネガ型現像技術(NTI)。
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富士フイルム株式会社
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