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富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)と公立大学法人名古屋市立大学(所在地:愛知県名古屋市瑞穂区、理事長:郡健二郎)は、MRI画像から脳脊髄液腔の各領域を抽出するAI技術※1を共同で開発しました。本技術により、「治療で改善できる認知症」と言われ早期発見が重要なハキム病(特発性正常圧水頭症:iNPH)※2の診断精度向上が期待できます。本技術は、富士フイルムのクラウド型AI技術開発支援サービス「SYNAPSE Creative Space(シナプス クリエイティブ スペース)」を活用して開発したAI技術です。今後、富士フイルムは、本技術を搭載した製品の早期市場導入を目指します。
ハキム病は、脳に水(脳脊髄液)が溜まって脳を圧迫し、歩行障害や認知障害、切迫性尿失禁などの症状があらわれる病気です。進行性の病気で、症状が重くなると日常生活に介護が必要となります。「治療で改善できる認知症」と言われており、脳内の脳脊髄液を排除することにより症状を改善できますが、症状が進行してから治療を受けても、自立した生活を取り戻すことは難しいため、早期発見・早期治療が重要です。またハキム病は、脳室の拡大を引き起こす疾患で、同様の症状が生じる脳委縮との判別が難しいことから、発見が遅れてしまうことがあります。脳萎縮とハキム病を判別するのに重要な画像所見として、くも膜下腔の不均衡分布(DESH)※3が知られていますが、DESHは医師の主観で評価されているため、医師によって判定が異なることが課題でした。
今回、富士フイルムと名古屋市立大学は、富士フイルムの「SYNAPSE Creative Space」を用いて、DESHに関係する脳脊髄液腔の各領域(高位円蓋部・正中のくも膜下腔、シルビウス裂・脳底槽、脳室)を抽出するAI技術を開発しました。本技術は、頭部MRI画像からDESHに関係する各領域のアノテーション作業を効率的に行い作成したデータをAIに学習させて開発したもので、MRI画像から脳脊髄液腔の各領域を抽出できます。さらに、領域ごとの体積や領域間の体積比を算出することにより、脳萎縮とハキム病を判別するのに重要な画像所見であるDESHの判定に大きく寄与し、ハキム病の診断精度向上につながることが期待できます。
富士フイルムと名古屋市立大学は、今後も「SYNAPSE Creative Space」を用いた画像診断支援AI技術の開発を進め、医療の質の向上と人々の健康の維持増進に貢献していきます。
富士フイルムが開発した、医療機関や研究機関における画像診断支援AI技術の開発を支援するサービスです。プロジェクト管理、アノテーション、学習、AI技術の試行など、一連の開発プロセスをすべてクラウド上で行うことができます。医用画像向けに特化した複数の学習モデルを利用することができるため、プログラミングなどの専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援AI技術を開発することが可能※4。希少疾患を始めとしたさまざまな疾病を対象とした画像診断支援AI技術の開発促進を目指し、2022年から国内の医療機関でトライアルを行っています。