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ニュースリリース

2023年10月19日

スギ花粉に含まれる抗原タンパク質「Cryj2」が皮膚バリア機能低下とシミ・くすみを引き起こす一因であることを解明

「マグワ根皮エキス」に、「Cryj2」による肌への悪影響を改善する効果を発見

富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、スギ花粉に含まれる抗原タンパク質「Cryj2(クリジェイツー)」が、皮膚バリア機能低下とシミ・くすみなどの肌トラブルを引き起こす一因であることを解明しました。
また、消炎作用をもつ生薬成分として知られる「マグワ根皮エキス」に、「Cryj2」による肌への悪影響を改善する効果を発見しました。今後、これらの研究成果を化粧品の開発に応用していきます。

研究背景

スギ花粉は、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状とともに痒みや赤みなどの肌トラブルを引き起こすことが知られています。アレルギー症状や肌トラブルを引き起こす原因は、スギ花粉の外皮に存在する抗原タンパク質「Cryj1(クリジェイワン)」とスギ花粉の内部に存在する抗原タンパク質「Cryj2」であると考えられています。
皮膚科学の分野では、「Cryj1」が皮膚の炎症やバリア機能の低下を引き起こすことがすでに報告されていますが、「Cryj2」の皮膚への影響については、その詳細が明らかになっていませんでした。そこで、当社は、スギ花粉が水分や、PM2.5などの大気汚染物質と接触し破裂する現象に着目し、スギ花粉に含まれる「Cryj2」が皮膚に与える影響について研究を行いました。

【図1】スギ花粉における「Cryj1」「Cryj2」の所在とスギ花粉粒子の破裂

「Cryj1」はスギ花粉粒子の外皮に、「Cryj2」は同粒子の内部にそれぞれ存在する。スギ花粉粒子は、降雨・大気汚染物質との接触により破裂し、同粒子の内部から「Cryj2」を放出する。

今回の研究成果の詳細

1. 破裂したスギ花粉粒子の内部から放出された「Cryj2」を可視化

「Cryj2」の皮膚への影響について研究を行う上で、まず「Cryj2」の可視化に取り組みました。スギ花粉粒子に水分を添加し破裂させ、放出された「Cryj2」に反応する抗体を用いて「Cryj2」を染色。その結果、「Cryj2」を可視化することに成功しました(図2)。

【図2】破裂したスギ花粉粒子の内部から放出された「Cryj2」

水分を添加していないスギ花粉粒子と水分を添加したスギ花粉粒子の顕微鏡画像比較
実験方法

スライドガラスにスギ花粉粒子を固定し、水分を添加した条件と、水分を添加していない条件で2時間放置した。その後、水分を添加した花粉粒子が破裂したことを確認の上、「Cryj2」に反応する抗体を用いて、「Cryj2」を染色し可視化した。

結果

スギ花粉粒子が水分を吸収すると破裂し、「Cryj2」が花粉粒子の内部から放出されることを確認した。

2. 「Cryj2」が皮膚バリア機能低下とシミ・くすみを引き起こす一因であることを解明

スギ花粉粒子の外に放出された「Cryj2」が肌に付着し、皮膚バリア機能低下とシミ・くすみを引き起こすことを、ヒト表皮細胞を用いて検証しました。皮膚バリア機能維持に重要な因子の一つであるINV(インボルクリン)※1遺伝子と、シミ・くすみを形成する要因として知られるSCF(ステムセルファクター)※2遺伝子に着目。「Cryj2」を添加したヒト表皮細胞と「Cryj2」未添加のヒト表皮細胞にて、INV・SCF遺伝子の発現量の変化を調べました。その結果、「Cryj2」を添加したヒト表皮細胞にて、INV遺伝子の発現量が、「Cryj2」未添加のヒト表皮細胞と比べて約30%減少し(図3)、SCF遺伝子の発現量が約2倍に増加することを新たに発見しました(図4)。
これらの結果から、皮膚に付着した「Cryj2」が、皮膚バリア機能低下およびシミ・くすみを引き起こす一因であることを解明しました。

  • ※1 皮膚バリア機能を担う角層細胞の外壁を形成する因子の一つ。Involucrinの略。
  • ※2 表皮細胞からメラノサイトに情報伝達される「幹細胞増殖因子」。Stem cell factorの略。

【図3】「Cryj2」添加によるINV遺伝子発現量 

【図4】「Cryj2」添加によるSCF遺伝子発現量

実験方法

ヒト表皮細胞に「Cryj2」を各濃度(1、5、10μg/mL)で添加し、24時間培養した。培養後に同細胞を回収し、INVおよびSCFの遺伝子発現量をPCR法にて測定した。「Cryj2」添加無しのヒト表皮細胞における遺伝子発現量を基準値(100%)とし、「Cryj2」添加時の同発現量を相対値で示した。

結果

「Cryj2」を添加したヒト表皮細胞は、すべての濃度において、「Cryj2」添加無しの同細胞と比べて、INVの遺伝子発現量が減少し、SCFの遺伝子発現量が増加。「Cryj2」10㎍/mlを添加したヒト表皮モデルは、INVの遺伝子発現量が約30%減少し、SCFの遺伝子発現量が約2倍に増加した。

3. マグワ根皮エキスに、「Cryj2」による皮膚バリア機能とシミ・くすみ関連因子の発現に対する影響を改善する効果を発見

「Cryj2」の皮膚への影響を抑える化粧品成分を探索する中で、消炎作用をもつ生薬成分であるマグワ根皮エキスを選定。「Cryj2」とマグワ根皮エキスを添加したヒト表皮細胞および「Cryj2」のみを添加したヒト表皮細胞にて、INV・SCF遺伝子の発現量の変化を調べました。その結果、「Cryj2」とマグワ根皮エキスを添加したヒト表皮細胞にて、INV遺伝子発現量が、「Cryj2」のみを添加したヒト表皮細胞と比べて約50%増加し(図5)、SCF遺伝子発現量が約40%減少したことを確認(図6)。マグワ根皮エキスに、「Cryj2」によって引き起こされる皮膚バリア機能低下とシミ・くすみ関連因子の発現に対する影響を改善する効果があることを発見しました。

【図5】マグワ根皮エキス添加によるINV遺伝子発現量 

【図6】マグワ根皮エキス添加によるSCF遺伝子発現量

実験方法

ヒト表皮細胞に「Cryj2」を1μg/mLの濃度で添加。24時間後に培地を交換し、マグワ根皮エキス10μg/mLを添加。マグワ根皮エキスの添加から24時間後にINV・SCF遺伝子発現量をPCR法にて測定し比較した。「Cryj2」のみ添加した場合の発現量を基準値(100%)とし、INV・SCF遺伝子発現量を相対値で表した。

結果

「Cryj2」とマグワ根皮エキスを添加したヒト表皮細胞は、「Cryj2」のみを添加した同細胞と比べて、INV遺伝子発現量が約50%増加し、SCF遺伝子発現量が約40%減少した。

当社は、12月6日より神戸ポートアイランド(兵庫県・神戸市)で開催される「第46回日本分子生物学会年会」で今回の研究成果を発表いたします。

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ブランドマネージメント推進本部

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