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日本

The Professionals-巧者から提言-

消化器内科に相応しいX線TVシステムの在り方を徹底議論

東京大学医学部附属病院
光学医療診療部 准教授
中井 陽介 先生
近畿大学病院
消化器内科 特命准教授
竹中 完 先生

左:竹中先生 右:中井先生

透視装置導入時の重要ポイント

近年の透視装置に求められる共通のニーズはありますか?

中井 ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を専門に行っている大学病院や基幹病院などでは、近年は実施件数が増加傾向にあると思います。それに伴って消化器内科専用の透視室を備えた施設も増えてきていますね。一方で、依然として透視室をほかの診療科とシェアしている施設もあるので、多くの診療科の検査や手技にも対応できる透視装置が同時に求められていると感じます。

竹中 そうですね。私も大学病院と基幹病院の両方の経験があるので、「専門性」と「多様性」のどちらを求めるかは、施設の状況によると実感しています。

中井 ただ、どちらの施設であっても共通のニーズがあります。当院では狭い透視室の中でいろいろな機材を用いるIVR(画像下治療)なども行っています。消化器内科に限らず私たちのワークスペースを十分確保できるようなコンパクトなシステムが重要だと思います。

竹中 確かに当院の透視室も非常に狭いので、サイズの大きい装置は、そもそも設置できませんし、透視装置を導入するときは必然的に「手技がしやすいサイズ」であることが絶対条件になりますね。

日本における胆膵領域の検査や治療傾向

診療のトレンドによって、製品へ求めるものに変化はありますか?

中井 私はアメリカで内視鏡検査や治療を経験しました。その施設では消化管も胆膵もすべて同じ医師が同じ部屋で行っていたんです。透視を使わない手技も同じ部屋で行うので、透視の性能がさほど高くないモバイルタイプのCアーム装置を使って胆膵インターベンションを施行していました。一方、現在私たちが行っているような複雑な治療手技では、より高精細な透視画像が必要になります。

竹中 日本では超高齢化の進展に伴って、胆道ドレナージを要する患者さんが増えています。それと同時に、全世界共通の傾向として透視下内視鏡手技の裾野が広がっていると感じます。その背景にはEUS(超音波内視鏡)を使ったドレナージ手技などもあると思っています。なぜならここでも透視が必要だからです。以前は外科で行われていたような消化管と胃を接合する症例も、消化器内科で処置できるようになりました。今後もこのトレンドは拡がると思うので、透視装置にも継続的なアップデートが求められるでしょう。日本の専門施設では、胆膵領域の複雑な手技に対応できる高画質な製品を求める声が大きくなっている印象ですね。

重要な被ばくのこと

眼の水晶体の被ばく限度見直しによる先生方の取り組みはいかがですか?

竹中 日本では2021年の法改正によって、放射線業務従事者の眼の水晶体に受ける線量の限度が見直され、従来よりも大幅に引き下げられた数値*1が採用されました。この新しい基準のもとでは透視下内視鏡手技そのものが実施不可能になる可能性も懸念され、ここ数年では学会でも議論になっています。被ばく対策は、放射線を扱う医療従事者の意識改革や教育から始める必要があると考えています。しかし、被ばく防護の教育を実践している施設は、まだ多くないのが現状です。

中井 当院では指導医師の教えもあって、高い意識をもって被ばく対策に取り組んできました。最近では院内の全職員にeラーニング受講を義務付けるなど、教育にも力を入れています。また、防護メガネや遮蔽板などを積極的に用いる工夫をしています。X線管に取り付ける防護カーテンは患者さんに触れる箇所があるので、検査のたびに清掃したり交換したりして、細菌感染を防ぐような対策があれば、より安全に使いやすくなると思います。

  • *1 水晶体の等価線量限度が150mSv/年から50mSv/年かつ100mSv/5年。
どちらを優先するべきか

「高画質」と「低被ばく」というのは永遠のテーマですが、どのようにお考えでしょうか?

中井 胆膵領域の手技は年々複雑化・長時間化していますよね。「ガイドワイヤーや造影した胆管・膵管をもっと大きくクリアに見られたらいいのに…」と困っている医師が増えていると思います。

竹中 そうですね。一方で患者さんの医療被ばくのことを考えると「ALARA(As Low As Reasonably Achievable)*2」が原則ですが、意外にも線量限度が定められていません。仮に制限を設けると、十分な診断や治療を受けられず患者さんが不利益を被る可能性があるというのが理由です。

中井 他方で、内視鏡を挿入するときにはさほど高精細な透視は必要ないですよね。通常時は必要最低限の線量で、ココゾというときにクリアな透視が見えたり、スムーズに切り替わったりするとうれしいです。

竹中 それに加えて、被ばく低減のためにフレームレートを落としても、クリアに滑らかな透視像を出してくれると患者さんも医療従事者もみんな助かりますね。手技に携わるスタッフはもちろん、マネージメント層にとっても重要なテーマになっていくと思います。画質と被ばくについては、基本的には相反することなので、どちらかを優先するとかでなく、バランスを考えることが重要です。ただ、欲張りかもしれませんが、医師としては、物凄く高い解像度で被ばくも少ないというのが理想です。

  • *2 ALARA(As Low As Reasonably Achievable):放射線防護の最適化として「すべての被ばくは社会的、経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成可能な限り低く抑えるべきである」という基本精神に則り被ばく線量を制限することを意味しています。
安全面への配慮

内視鏡手技に際して、安全面で気になることはありますか?

竹中 画質や被ばく以外にも安全性で気になるところは結構ありますよね。例えば、最近よく見かける天井吊りタイプの大画面ディスプレイ。カートタイプと違って床に設置スペースがいらないのは良いですが、ディスプレイに繋がっている内視鏡装置などのケーブルは、床を這っているのでスタッフの安全面では課題があると思います。

中井 確かにそうですね。せっかくディスプレイを天井吊りにしても、ケーブルが床にあるのは勿体ないですね。
ケーブルなどは、できる限り床から排除したいです。安全性という点では、私は関心部位と椎体の透視像が重なっているときを思い浮かべました。というのも、オーバーチューブ型の透視装置ではスタッフが患者さんの体位を変える必要があるからです。こういうシーンではスタッフの被ばくも増加しますし、装置側に動いて欲しいと思います。ただ、Cアーム型は天板が狭いので体格が大きな患者さんの場合には不安を感じます。

竹中 おっしゃるとおり、患者さんの落下は怖いですね。手技中に麻酔の鎮静が効かなくなって患者さんが動いてしまうことは、よくあることです。テーブル幅の広いオーバーチューブ型で任意の角度から透視できるのが安全で理想的ですね。

中井 確かに、それは理想的。ただ、逆に装置に動かないでほしいという時もあります。例えば、圧迫装置が誤って出てきてしまうケースとか。ですので、検査中に不要な機能をロックできるとより手技に集中できるので安心です。このほかには、内視鏡を挿入している医師がモニターに注目しすぎて、患者さん自体の嘔吐・誤嚥などを見逃す可能性もあると思います。部屋の外(操作室)にいる指導的な医師も中(検査室)の様子が見えません。
部屋の中でも外でも、患者さんをモニタリングできたらよいなと思うことがあります。

竹中 そうですね。我々が使う機材・機具には一長一短があるので、メリットとデメリットを理解して安全に使用することが重要ですね。

よりよい医療機器

透視装置や機器メーカーに期待することはありますか?

竹中 中井先生と話してきた中で解決すべき課題がいろいろと見えてきました。私たち医療従事者と医療機器メーカーが向き合って一緒に開発していく姿勢が一番大切ですね。実際に医療機器を扱う私たちにしか分からないこともあれば、医療従事者には想像もできない技術革新もあるでしょう。

中井 加えて、透視装置や内視鏡といった個々の性能を向上するだけでなく、併用する機材が連携したり使いやすくなったりしたら良いですね。そのためにも医療従事者と医療機器メーカーがお互いにアイデアを出し合っていけたらと思います。最後にひとつ期待したいことは「使い勝手」ですね。仮に優れた機能を共同開発できたとしても、それをONするために何度もボタンを押したりクリックしたりする必要があると緊迫した治療の現場では使わないでしょう。実現できるのならば手を使わない操作方法があれば理想的です。感染対策という観点からみても重要ですね。

竹中 確かに透視装置に搭載されている被ばく低減のためのさまざまなモードも、使われなければ意味が無いですからね。逆に適切に使いこなせば威力を2倍にも3倍にも発揮できます。とはいえ、複雑な手技に集中しているとどうしても被ばく防護の意識が薄れる瞬間があります。ヒューマンエラーを防ぐためにも、AIが異常を検出し、線量を自動調整して、お知らせするような機器を期待しています。

消化器内科に相応しいX線TVシステムの在り方

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