このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
2022年12月、福井県済生会病院にデジタルX線透視撮影システム「CUREVISTA Apex*1」を導入いただきました。更新前の装置は、泌尿器科専用機であったため、泌尿器科の手技にも対応できる多目的なX線透視撮影システムを選定する際のポイントやご使用いただいた感想を、診療放射線技師の皆さまに伺いました。
社会福祉法人恩賜財団済生会支部
福井県済生会病院
放射線技術部 牧野 良孝 部長
放射線技術部 坪内 啓正 課長
放射線技術部 北野 陽一 課長
放射線技術部 築紫 郁恵 主任
社会福祉法人恩賜財団済生会支部福井県済生会病院の概要
福井県済生会病院について教えていただけますか。
済生会は明治44年、「恵まれない人々のために施薬救療による済生の道を広めるように」との明治天皇のお言葉「済生勅語」により創設された恩賜財団であり、現在は社会福祉法人として40都道府県に82の病院を含め403の施設、64,000人の職員を有する、非営利では世界最大の医療福祉法人です。
福井県済生会病院は昭和16年に開設、平成16年には北陸で最初の地域医療支援病院に指定されるなど、福井市を中心とした地域医療の中核病院としての機能を担っています。
泌尿器科について教えていただけますか。
泌尿器科では腎・尿管・膀胱・尿道の尿路、精巣(睾丸)・精巣上体(副睾丸)・精管・前立腺・陰茎の男性生殖器および副腎の疾患を扱っています。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医・指導医、日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定医などの資格を持つ泌尿器科常勤医師5人で診療にあたっています。
病院DATA
社会福祉法人恩賜財団済生会支部福井県済生会病院
https://www.fukui-saiseikai.com/
- 開設
1941年(昭和16年)
- 病床数
460床(一般456床、結核4床)
- 診療科目
24科目
- 診療指定(一例)
二次救急指定病院、臨床研修指定病院、災害拠点病院、がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院、福井DMAT指定病院、ほか
- 施設資格(一例)
日本泌尿器学会専門医教育施設、日本腎臓学会研修施設、日本IVR学会指導医修練施設、ほか
- 医療設備
手術室9室、無菌室2室、X線TV3台、MRI3台、CT4台、トモセラピー1台、サイバーナイフ1台、SPECT-CT1台、PET-CT1台、血管撮影装置3台、ESWL1台
デジタルマンモグラフィー2台、ほか
X線透視撮影システムでの検査について
更新したX線透視撮影システムでの検査用途を教えていただけますか。
2022年は385件で、泌尿器科の検査は331件で約86%を占めており、泌尿器科のうち76%が尿管ステントの留置や抜去です。そのほかは婦人科、小児科、乳腺外科の検査です。そのほかX線透視撮影システムも含めると検査件数は1,877件です。
泌尿器科専用機から多目的機に更新された理由を教えていただけますか。
泌尿器科は用途が特殊なため当初は専用機も含めて、更新の検討が始まりました。しかし、当院のX線TV透視撮影システムは、泌尿器科専用機を含め3台だけであったため、そのほか診療科の要望にこたえていくには、必然的に幅広い検査に対応できる多目的機での選定となりました。泌尿器科の特殊ニーズに対応しつつ、多目的にも使える、そんな夢のような装置はあるのだろうかと思い悩んだことを記憶しています。
また、専用機は操作も特殊なため、取り扱いに熟知した専任スタッフが必要です。しかし、急な検査依頼で専任のスタッフを確保できないことも想定しなければなりません。取扱説明書を再読しても、すぐに専任スタッフと同じレベルで操作ができるわけではありません。放射線部としても、円滑な運用を実現するためには、多目的機への更新が最適解であったのです。
天板固定の安心感と、高画質化
何よりも、安全面への配慮を優先しました。当院では第一世代のCUREVISTAを内視鏡用途で使用しており、視野移動の際に、映像系が縦方向だけでなく、横方向にも動く「天板固定」のメリットを強く実感していました。泌尿器科においても、腎瘻増設の処置では穿刺を伴うため、天板を動かしたくないと考えていました。
従来の天板移動方式の場合、視野を動かすときに「天板を動かします!」と注意喚起をして、先生にもタイミングを合わせてもらい安全性を確保する必要があります。技師としては、天板の移動でガイドワイヤーなどが抜けてしまうと大変なので声がけをするわけですが、視野移動の度に頻繁に声がけをすると、先生も手技に集中し難くなってきます。声がけするタイミングや頻度にも配慮していました。
今回導入したCUREVISTA Apexも天板固定方式が踏襲されていて、泌尿器科の検査においても、天板の横移動によるガイドワイヤー抜けや、患者さんの手を挟むなどのリスクが無くなったのは、大きな安心感につながっています。天板固定方式は、すべての検査で有効だと思います。
また、リスクという面ではCUREVISTA Apexは、透視台テーブルの奥側にキャタピラやケーブルが露出していません。あらゆる部分がしっかりとカバーされている点も評価できました。これは、機器選定の過程で、いろいろな施設を見学した際に気づいた点で、実際に目の前に装置がないと分からないことも多いと感じた瞬間でした。
次に重視したのは透視の画質です。更新前の装置が導入されたのは2010年で、当時としては最良の選択をしたのですが、微細化した最近のガイドワイヤーでは視認性や追従性が課題となっていました。そのため、装置見学時には腰椎ファントムと0.025インチガイドワイヤーや解像度チャートを持ち込んで入念に確認をさせてもらいました。
見学を受け入れていただいた施設の方からは「ここまで、しっかりと見学をする方は、初めてですよ」と驚かれましたが、透視画像の向上には大きな期待があり、本当に拘りたかったのです。
すべての見学先で同じ確認をしたのですが、CUREVISTA Apexは、腰椎ファントムの上にガイドワイヤーを置いて動かした時の視認性の良さが際立っていました。
さらにガイドワイヤーをさまざまな方向に動かした時の残像感も少なく、これは実際の検査でも充分に使える画質だと十分な手応えを感じました。
CUREVISTA Apexを導入してから半年以上が経過しましたが、選定時に拘りぬいたポイントは間違っていなかったと実感しているところです。
装置の機能性について
小児の膀胱尿管逆流(VUR)の有無を調べる排尿性膀胱尿道造影時は、透視のフレームレートをできる限り低くし、さらに散乱X線除去グリッドを外して被ばく低減を図っています。特に小児の検査では、状況に応じて頻繁にフレームレートを変更していますが、容易に操作ができるのでとても助かっています。
特に被ばく低減に効果的だと感じているのはフレーム補間機能です。フレーム補間機能は、フレームレートを1/2(被ばく線量半分)に設定しても、画質を劣化させることなく、2倍のフレームレートで滑らかに表示できるので常に使用しています。長時間を要する検査や低被ばくが求められる小児の検査などでは必須ですが、どのような検査においても有効だと思います。
また、被ばく低減関連の機能で良いのは、散乱X線のマッピング表示機能です。医療スタッフへの注意喚起として活用しています。言葉で説明するよりも、図で説明するほうが何倍も説得力があります。フレーム補間機能や散乱X線マッピング表示は、すべての透視装置で採用し、積極的に活用していくべき機能ではないでしょうか。
透視装置のコリメーターに内蔵されている手技用スポットライト(SECURELIGHT)も活用しています。カテーテルを挿入する時などは術者の手元が明るいほうがよいので、手技をする医師に活用いただいています。今までは検査時に照明用のカートを持ち込む必要がありましたが、手技用スポットライトがあれば、コリメーターや遠隔操作卓にあるスイッチでオン/オフをするだけなので、検査の準備に要する時間が削減できることもメリットです。
4辺独立コリメーター(IntelliSHUTTER)も活用しています。通常のコリメーションモードだと上下と左右が連動で動きますが、IntelliSHUTTERの機能は、上・下・左・右と、コリメーターの4辺を個別に操作することができます。泌尿器科の膀胱造影では上側のコリメーターを絞ることにより、テーブル下端での検査がしやすくなりますし、その状態でさらに左右のコリメーターを操作して絞れるのは、被ばく低減の観点から見ても、理にかなっています。
先生方に想像以上に活用いただいている機能は、オートズーム機能です。当たり前ですが、普通は絞りをいれると絞りの範囲も含めて画面上に表示されます。ただ、オートズーム機能は絞りの範囲を自動認識して、見たい部分だけが最大化表示されるので、大きくて見やすいです。オートズーム機能で最大化表示をしても解像度が上がるわけではないのですが、やはり先生方は検査中に即断しなければならないこともあり、大きく表示されることだけでも検査のしやすさにつながっているようです。
*2 透視時間による
膀胱造影の検査では、透視画像の記録機能(IntelliREC)も多用しています。従来のCUREVISTAでは最大300フレームの記録まで可能でしたが、CUREVISTA Apexでは最大1200フレームまで増えました。15fpsで1分20秒も記録できるので、透視記録を活用する検査が増えています。また、透視を切った後に、遡って透視画像の記録ができる点も活用しています。
CUREVISTA Apexには、通常のテーブル起倒モードとは異なり、テーブル端を起点とした起倒動作ができるようになっているので、テーブル端の高さを変えずに検査を進めたいシーンで活用していきたいと思います。
3way ARMと、今後の展望について
実は、CUREVISTA Openの管球回転機構を用いて一般撮影装置として使用することも考えていました。そうすれば、午前中の透視装置を使用していない時間帯に一般撮影のバックアップとして使えるので装置の稼働率を上げることができます。
しかし、今回の検査目的で重視すべきは泌尿器科の検査ですので、CUREVISTA Apexの左右軸方向の斜入が選定のポイントとなりました。装置側で左右軸方向の斜入ができることにより、検査中の患者さんに斜めになっていただかなくてもよいので、患者さんへの負担を軽減することができると考えました。
泌尿器科の検査ではステントの挿入や交換が多いのですが、今まではステントを縦に巻いた時に、何回巻いたのかを観察するのに苦労していました。CUREVISTA Apexであれば左右軸方向から見られるので、縦に巻いたステントの観察がしやすくなりました。また、腎腫瘍の場合、尿道からカテーテルを入れて撮影をしますが、斜位の画像も必要となります。普通は、患者さんの体を横に傾けるのですが、その時にも左右軸斜入機能を使っています。そのほかでは、腰椎の手術歴があり、クリップが入っている患者さんの場合でも有効です。クリップとステントの先端が重なってしまっていても、左右軸方向に管球を回転させてステントと椎体が重ならないようにすることが可能です。左右軸斜入機能は、いろいろなシーンで活用しています。
わずかなことですが、別室で使用している第一世代のCUREVISTAよりも、天板が低く下がるようになったことも評価しています。CUREVISTAは55cm、 CUREVISTA Apexは48cmとスペックでは少しの差ですが、実際に患者さんに乗り降りしていただくと、その差はとても大きく感じます。特に高齢の患者さんの乗り降り時には、活用できる機能です。
今回の更新では大型のディスプレイに透視画像や内視鏡画像などを表示できる構成にしました。医師の目線移動が少なくなったのは良いことなのですが、首を動かさなくなったので、逆に目線移動が分かり難くなったとも言われています。操作室にいる技師からは、医師が透視画像を見ているのか、内視鏡画像を見ているのかの判断が難しいのです。特に検査に慣れていない若い技師だと、透視をオン/オフするタイミングを掴みにくく苦労しているようです。医師が見ていない瞬間に透視をオンにしていれば無効被ばくになってしまうリスクもあるので、大型ディスプレイ側から医師の目線を追えるようなシステムがあると良いと思います。また、実現は難しいかもしれませんが、医師が透視画像から目を離したら透視がオフになるような機能があったら喜ばれると思います。
また、最新の技術を使って今以上に被ばく低減が進められると良いとも思います。自在に絞ることができる4辺独立コリメーター(IntelliSHUTTER)は、将来性があります。
次の進化として、AI自動絞り機能は難しいでしょうか。例えば、嚥下検査で患者さんの目の辺りまでを自動的に絞ることができれば、水晶体被ばくを抑えることができます。技師が絞り操作をすればよいのですが、自動化することで常に適切な絞り範囲の設定ができると思います。
現段階では夢物語かもしれませんが、更新前の装置からCUREVISTA Apexへのさまざまな進化を考えると、もしかしたら、この次の更新時には、実現できているかもしれませんね。大いに期待しています。
- 販売名
デジタルX線透視撮影システム CUREVISTA Open/CUREVISTA Apex
- 医療機器認証番号
302ABBZX00032000