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院長
井上 智弘 氏
閑静な住宅地として知られる、兵庫県西宮市の夙川エリア。新たに開発されたショッピングモール「夙川グリーンプレイス」内に2021年10月開業したのが「いのうえ小児科」だ。大学病院の小児循環器内科を中心に先天性心疾患や川崎病などの診療を経験し、「子どもの成長を見守れるのが小児科の魅力」と語る井上 智弘院長に、開業までのプロセスについてお話を伺った。
立地・物件選定
子どもは多いのに小児科が少なかったエリアのショッピングモール内に開業
開業に向けては、2年ほど前から物件の選定に動き始めていました。さまざまな物件に当たっているうちに、たまたまご縁があった、このショッピングモールの開発会社の方から、モールの開設に合わせたクリニックの開業について提案を受けたのです。
このあたりは閑静な住宅地で、近くにマンションも多い。少し行くともうお隣の芦屋市なのですが、そこも住宅街でマンションが多く建っています。若いファミリー層がたくさん住んでいるので、子どもも多いんです。しかも、この周辺には小児科が少なく、いわば空白地帯になっていました。そんな地域に新たにできる大きなショッピングモールということで、ここでの開業を決断しました。
来院されている方の母子手帳などを見ると、「以前はこんな遠いところまで行っていたのか」と驚かされることも多く、「近くに小児科ができてありがたい」と言っていただけることもあります。
もう一つ、私にとって大きいのは、ここが自宅からとても近いということです。前の職場は自動車通勤で1時間半ほどかかっていましたが、ここなら通勤時間はたったの10分。私自身に時間的な余裕ができるということは、結果的に診療の質向上にもつながるのではないかと思っています。
内装レイアウト
シンプルなデザインで圧迫感を軽減、感染症対策にも配慮
院内の設計に関しては、ショッピングモールの一区画でありながら、あまり制限は受けず、自由にやらせてもらえました。構造上、入口が1つしかないといったことはしかたないとして、それ以外、内部の造りや壁紙の色などについて基本的に制約はありませんでした。
内装は、白を基調に、明るくシンプルなデザインにこだわりました。カウンターや壁の角に曲線を取り入れることで圧迫感を減らし、柔らかく、また広く見えるようにしています。
院内の設計をしていたのが、ちょうど新型コロナウイルス感染症が拡大していた頃だったので、感染症対策にも配慮しました。入口の脇に隔離室を2室、診察室の前にも個室を2室設けており、感染症の疑いがある場合の診察などに適宜使用しています。空調設備も、最大1時間で5回空気を入れ替えられる機能を持つものを導入しています。
医療機器選定
小児科クリニックでありながらX線撮影装置を導入
開業に当たって、クリニック向けX線診断システム「CALNEO Compact」とDRパネル「CALNEO Smart C47」を導入しました。システムの連携性を考えて、画像診断ワークステーション「C@RNACORE」も導入しています。
一般的な小児科診療においてX線撮影を行う頻度はそれほど高くありませんが、これまで小児の先天性心疾患の診療に携わってきた環境においてX線撮影は必須でしたので、開業にあたってもX線撮影装置があった方が良いと考えました。
大学病院の勤務時に、富士フイルムのフラットパネルを用いて撮影を行っている放射線技師から画質の良さを聞いていたため、信頼感はありましたね。その中で、コンパクトで限られたスペースでも設置できる「CALNEO Compact」に興味を持ち、導入に至りました。
X線撮影ができなければ「おそらく肺炎でしょう」という説明になりますが、X線撮影ができることで「肺炎ですね」と、画像を見せながら自信を持ってお伝えできます。また、便秘は触診である程度分かりますが、親御さんにX線画像をお見せして「これだけ便が溜まっています」と伝える方が説得力がありますし、より安心していただけると思います。加えて、実際に撮影をするしないにかかわらず、いつでもX線撮影ができる環境にあることで、安心して診療に取り組めると感じています。
画質も申し分ありません。現在は私自身が撮影をしていますが、大学病院勤務時に診療放射線技師が撮影したものとそん色のない画質が得られていると感じています。特に、肺血管陰影や心陰影が鮮明に描出され、拡大しても細かい部分まできれいに見えます。操作に関しても、必要最低限の内容を覚えるだけで直感的に動かせるので困ったことがありません。今後は、胸部や腹部だけでなく、低身長の診察における、手根骨の骨年齢評価などにも積極的に活用していく方針です。
近隣の小児科クリニックはX線撮影ができないところが多いせいか、「当院でX線撮影ができます」とご家族にお伝えすると、驚かれたことが何回かありました。また、他院で「X線撮影はできない」と言われたことから、X線撮影ができるクリニックをインターネットで検索して、当院にお子さんを連れてこられたというケースもありました。
個人的な経験でも、子どもの発熱が4~5日続いた際に「X線撮影をしてもらいたい」と思っても、自宅近くにX線撮影ができるクリニックがなかったことがありました。こうしたニーズは相当数あると思いますので、親御さんの不安を少しでも減らすことに貢献したいです。
また、撮影画像を確認する「C@RNACORE」についても、計測なども含めて、ストレスなく使用できています。
子どもはどんどん成長していくので難しいかもしれませんが、今後富士フイルムには過去と現在の画像を差分したサブトラクション画像を生成することで、経時変化の差を確認しやすくする機能の小児向けバージョンを開発していただければと期待しています。
人材募集・教育
看護師や事務のスタッフは、新規に地元の求人誌やネットを通じて募集しました。ありがたいことに、あまり時間もかからず非常に優秀な方が来てくれました。
採用後には10日ほどの研修を実施しました。一般的な医療の話や設備の説明をして、予約システムや電子カルテなどの使い方にも慣れてもらいました。私自身が行ったものもありますが、内容に応じて開業コンサルの方や機器業者の方にもお願いしました。
集患対策
全国のクリニック・病院やドクターの情報を検索できるウェブサイトにインタビュー記事を掲載してもらったり、地元のフリーペーパーに広告を出したりしています。近くの駅の看板にも広告を載せてもらっています。このモールのウェブサイトにも当院が紹介されていますが、知り合いなどに聞くと、ご近所の方でも当院の存在が十分に認知されていない状況も見受けられます。インフルエンザやコロナの予防接種を頑張るなど、地道に認知度を上げていきたいと考えています。
院内レイアウト
開業までのスケジュール
開業経験を踏まえて
まだ開業数か月ですが、X線をはじめとする画像診断装置は入れてよかったと実感しています。費用負担は大きいですが、それだけの意味はある。小さいお子さんだと自分の体の状態をなかなか言葉にできませんから、親御さんに画像を見せながら説明できれば、大きな説得力や安心感を与えられますし、何よりも自信を持って診療に当たることができます。
小児科領域に関しては責任を持って診療を行い、何かあれば気軽に受診していただける、地域から頼られるクリニックになれればと考えています。そして、診療においては、お子さんの年齢や性格に合わせた対応はもちろん、親御さんとお話しする際も適切な距離感を大切にしながら、より分かりやすく説明するように心がけていきたいです。
CALNEO Compact
- 販売名
X線診断装置 CALNEO XR
- 認証番号
302ABBZX00055000
C@RNACORE
- 販売名
富士画像診断ワークステーション CC-WS674型
- 認証番号
22200BZX00909000
FUJIFILM DR CALNEO Smart
- 販売名
デジタルラジオグラフィDR-ID 1200
- 認証番号
226ABBZX00085000
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