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動物医療コラム

病理組織検査から得られた犬の肥満細胞腫のリアル

このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。

掲載記事は掲載日時点の情報であり、記事の内容などは最新の情報とは異なる場合があります。

毎日多くの病理検体が届く形態学ラボ。実際の診断結果より、犬の皮膚腫瘍で2番目に発生が多く、臨床での遭遇頻度の高い肥満細胞腫(MCT)(皮下に発生したMCTを除く)について、2種類の組織学的グレード分類法に基づいた集計データをご紹介いたします。

発生部位分布・悪性度

部位別に発生頻度を集計したところ、体幹部(頚部~臀部まで)が一番多く、次いで四肢が多いことがわかりました(図1)。論文と比較し、解剖学的な部位の区分やカウント方法の違いにより差異がみられましたが、四肢に発生が多いことに関しては一致しました1)。部位別のグレード分類の割合は、一般的に言われている「陰部周囲の肥満細胞腫は悪性度が高い」を裏付ける結果となりました(図2、3)。

図1 発生部位分布 (n=710)

図2 発生部位別高悪性度MCTの占める割合①(Patnaik分類 グレード3)

図3 発生部位別高悪性度MCTの占める割合②(Kiupel分類 高グレード)

年齢分布・悪性度

発生の中央値は10歳、最も発生頻度の高い年齢は11歳でした(図4)。シニア世代に多いイメージがありますが、5歳未満での発生も全体の12.3%で見られました。また、高齢になるほど悪性度の高いMCTの発生が多いことが報告されており、今回の調査でも同様の傾向がみられました2)(図5、6)。

図4 年齢分布(n=641)

図5 年齢別高悪性度MCTの占める割合①(Patnaik分類 グレード3)

図6 年齢別高悪性度MCTの占める割合②(Kiupel分類 高グレード)

犬種分布・悪性度

国内で飼育頭数の多い小型犬種に加え、MCT の好発犬種と言われるパグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーが診断数の上位に入りました(表1)。また、グレード分類の割合は犬種ごとに差があることがわかり、フレンチブルドッグ、柴は全犬種の平均と比較し高グレードのMCTの発生が多い傾向がみられました。パグは論文同様、高グレードのMCTの発生が少ないことが確認されました2)(図7、8)。

図7 犬種別グレード分布①(Patnaik分類)

図8 犬種別グレード分布②(Kuipel分類)

犬種頭数頻度(%)
トイ・プードル11716.48
パグ679.44
527.32
チワワ517.18
フレンチ・ブルドッグ385.35
ラブラドール・レトリーバー344.79
ボストン・テリア304.23
ジャック・ラッセル・テリア273.8
ゴールデン・レトリーバー253.52
ミニチュア・シュナウザー202.82
ミニチュア・ダックスフンド192.68
ミニチュア・ピンシャー121.69
ヨークシャー・テリア101.41
パピヨン60.85
ビーグル60.85

表1 犬種分布(n=710)

<細胞診によるグレーディング>

肥満細胞腫は組織学的グレードによって挙動が大きく異なります。正確なグレードの評価には外科的切除した病変による病理組織学的検査が必要ですが、近年細胞診でも、病理組織学的検査によるKiupel分類に準じたグレーディングの方法が試みられています(Camusら、Scarpaら、Hergtらなど)。どの方法も細胞診グレードと組織学的グレードはよく一致しており、たとえばCamusらの提唱しているグレード分類では組織学的グレードに対し感度88.2%、特異度94.8%で高いグレードの肥満細胞腫を検出することができます3)。当社にて細胞診後に病理組織学的検査を提出いただいたケースからもほぼ同等の結果が得られました(表2)。細胞診でのグレーディングは確立されたものではなく、病理組織学的検査でのグレーディングと一致しないケースもありますが、外科的切除前にグレードが予想できることは治療方針の選択やオーナー様へのインフォームに役立ちます。

細胞診によるグレードの評価をご希望の際は、依頼書に「細胞診グレーディング希望」とご記入ください。
  病理組織グレード
(Kiupel分類)
低グレード高グレード
細胞診
グレード
低グレード301
高グレード12

表2 細胞診グレードと病理組織グレードの比較(n=34)

現在一般的に用いられている犬の肥満細胞腫の組織学的グレード分類法には、Patnaik分類(3段階)とKiupel分類(2段階)の2種類があります。Patnaik分類は古くから用いられている慣れ親しんだ分類法です。一方、近年新たに提案された分類法であるKiupel分類では、グレーディングの基準が単純化され、よりシンプルに予後予測が可能となりました。
肥満細胞腫では、発生部位や犬種による臨床挙動の違いについて複数の研究により報告されています。今回の調査結果は過去の報告と一致するものであり、日本国内での発生状況もこれまでの報告と同様の傾向を示しているといえるでしょう。
細胞診での肥満細胞腫のグレード予測は広く普及したものではありませんが、術前に得られる情報として一定の価値があります。今後も症例数を重ね、その有用性を検証していきたいと考えています。

富士フイルムVETシステムズ 形態学診断医  原田知享(病理組織学)

  • 1)Kok MK, Chambers JK, Tsuboi M, et al. (2019), Retrospective study of canine cutaneous tumors in Japan, 2008-2017. J Vet Med Sci, 81(8): 1133-1143. 
  • 2)Mochizuki, H., Motsinger‐Reif, A., Bettini, C., Moroff, S. and Breen, M. (2017), Association of breed and histopathological grade in canine mast cell tumours. Vet Comp Oncol, 15: 829-839.
  • 3)Camus, M. S., Priest, H. L., Koehler, J. W., Driskell, E. A., Rakich, P. M., Ilha, M. R., & Krimer, P. M. (2016), Cytologic Criteria for Mast Cell Tumor Grading in Dogs With Evaluation of Clinical Outcome. Veterinary Pathology, 53(6), 1117–1123.

【富士フイルムVETシステムズ広報誌2020年秋号掲載記事より】