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日本

導入事例

院内感染対策として活用されるHydro Ag+ アルコールクロス~高頻度接触面を安全かつ持続的に除菌~

東海大学医学部付属病院

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

神奈川県西部地区の中核的医療機関として、高度医療から地域医療まで幅広い医療を提供している東海大学医学部付属病院。院内感染対策においても最新の知見をいち早く取り入れて、先進的な研究を実施。院内感染対策チームにはほぼすべての診療科および部署のメンバーが参加し、さまざまな取り組みを行っている。(富士フイルムメディカル広報誌「AtoZ」2019年春号に掲載)

東海大学医学部
外科学系救命救急医学
准教授
梅澤 和夫 先生
東海大学医学部付属病院
医療監査部院内感染対策室
東海大学医学部
基礎診療学系臨床検査学
准教授
浅井 さとみ 先生

梅澤先生(左)浅井先生(右)

持続除菌で環境の菌数を減少させたいと考えた
環境消毒において“持続除菌”に着目した理由は。

梅澤先生 薬剤耐性アシネトバクターの調査や病棟内の気流調査など、院内で多くの調査・検討を重ねた結果、環境を徹底的にきれいにするとさまざまな効果が得られることが分かり、消毒後も除菌が続き、かつ環境の菌数が減少する“持続除菌”に注目しました。

環境消毒においては、患者さんから菌が出たら、その患者さんを封じ込めるというミクロな対応が一般的ですが、当院では従来からエリア全体でマクロに対応するという考え方を持っています。持続除菌はそのようなマクロな対応を進める上でも有用なのではないかと考えました。

浅井先生 看護師や看護助手の業務量が多く、環境衛生に割ける時間も限られています。例えば、耐性菌が出た場合は1日2回拭き消毒すると定めていますが、業務量としてはそれが限界です。1回拭き消毒すると、しばらく効果が持続して、院内全体の菌を減らすことができるというのは非常に大切なことです。

院内感染防止対策医療廃棄物管理マニュアル2年周期で改訂するほか、厚生労働省や学会レベルで出されたものを随時、追加している。

Hydro Agを初めて知った時の印象は。

梅澤先生 当院では、従来から0.1%次亜塩素酸ナトリウム相当の消毒薬を使用していましたが、皮膚刺激性に対する懸念を持っていました。そのような時に、人体に悪影響を及ぼさないアルコール製剤でかつ持続効果がある環境消毒薬であるHydro Agのことを聞き、すぐに導入に向けて確認試験を行いたいと思いました。

安全性、即時性、効果持続性において高頻度接触面の消毒に適している
「病棟におけるノートパソコンキーボードカバーの消毒法の検討」を行った背景と結果は。

梅澤先生 ERでMRSA*1が流行した時にキーボードの汚染があり、キーボードカバーを使用しましたが、消毒が難しかったため、撤去して拭き消毒にしました。しかし、その後、拭き消毒によって他の病棟でノート型パソコンの破損が多発し、キーボードカバーの使用が提言されたため、有効な消毒効果を有し、かつ皮膚の腐食性がないHydro Agの検討を行いました。

検討の結果は。

梅澤先生 Hydro Agアルコールクロス(以下、Hydro Ag+クロス)と0.1%次亜塩素酸相当の消毒薬のMRSAに対する消毒効果は同等でした。

また、Hydro Ag+フィルムを病棟の壁、テーブルに添付して行った検討でも、0.1%次亜塩素酸相当の消毒薬と消毒効果は同等でした。

その他にHydro Ag+について行った比較検討は。

Hydro Ag+と0.1%次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする消毒薬については、緑膿菌、大腸菌、バシラス、黄色ブドウ球菌の一般的な株と薬剤耐性菌で比較を行いましたが、大きな差異はありませんでした。

一方で、血液などタンパク質を含んだものに対しては、アルコール清拭材には界面活性剤が含まれていないこと、アルコールにはタンパク凝固の性質があることから、一次除去をせずに拭き消毒すると抗菌活性が低下することが分かっています。

現在、Hydro Ag+クロスを使用している場所は。

梅澤先生 キーボードカバー、マウスなどのパソコン周辺機器、タッチパネルなど高頻度接触面はほぼすべての場所で使用しています。また、安全面への配慮から、小児科の外来にあるプレイルームや小児科病棟でも使用しています。

浅井先生 私は超音波検査についても指導医として、日々、多くの検査・判読を行っています。その中で、Hydro Ag+クロスは超音波検査装置の操作部やタッチパネルの拭き消毒に適していると感じています。

Hydro Ag+クロスの使用感は。

浅井先生 今まで使用していたエタノールのワイプと比較すると、同じことをしてもそれ以上の効果があるので、現場はとても喜んでいますね。

梅澤先生 特に、使用後のべたつきがないこと、また手が荒れにくい点が好評のようです。

  • *1 MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus): メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
社会全体の未病対策として広く活用できる可能性がある
教育現場におけるHydro Ag+を用いたインフルエンザ対策の実証事業については。

梅澤先生 東海大学医学部付属病院院内感染対策室の監修の下で、神奈川県・松田町の中学3年生の生徒にHydro Ag+クロスで学習机、教卓、教室引き戸の取っ手などの高頻度接触面を毎日拭き消毒してもらいました。そして、2か月後のインフルエンザ発症率を1年生と比較したところ、3年生のインフルエンザ発症率の方が低く、Hydro Ag+の有用性が示唆されました(下記グラフ参照)。

今後、Hydro Ag+に期待することは。

梅澤先生 Hydro Ag+は、医療施設のみならず、小学校や中学校、老人施設、公共交通機関など、社会の未病対策として広く活用できるのではないかと感じています。なお、一部で銀には毒性があると誤解されているようですが、熱傷に使用するゲーベンクリームは銀製剤です。また、身近なところでは食器、デオドラント剤など、銀は人体に接触する多くの場所で使用されていて、安全性が証明されています。

浅井先生 医療現場では一日に何度も手指衛生をするため、手荒れが切実な問題になっていますので、“除菌+保湿”に配慮した医療従事者向け製品の開発にも期待しています。

インフルエンザの学校感染対策をHydro Ag+クロスで検証

神奈川県の松田町は、2018年1月~3月に町内の2校の中学校でHydro Ag+を活用したインフルエンザ対策の実証事業を実施。梅澤先生らの監修の下、中学3年生の生徒にHydro Ag+クロスで学習机、教卓、教室引き戸の取っ手、トイレの手洗い場所などの高頻度接触面を毎日拭き消毒してもらった。

開始から2か月後のインフルエンザ発症率は、Hydro Ag+クロスを使用した3年生が5%未満だったのに対して、特別な拭き消毒活動をしなかった1年生は35%にのぼり、Hydro Ag+を利用した拭き消毒が、教育現場でも有用である可能性が示唆された。

冬休み明けからの累積のインフルエンザ発症率

松田町政策推進課「No.30-29 MATSUDAエキスプレス」より引用