このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
富士フイルム株式会社は1986年にレンズ付きフイルム「写ルンです*1」を発売し、フイルムは現像作業が必要なことから、資源回収のリサイクルスキームを実現しました。 現在ではエコロジーやサステナブルの観点からリサイクルは企業が取り組むべき重要課題の一つとなっています。 当社においても、永久磁石オープンMRIに使用されているレアアースを含むネオジム磁石をリサイクルするスキームを以前から実践しています。 今回は、このリサイクルにおけるパートナー企業である東京都江東区にある東京エコリサイクル株式会社を訪ね、川上氏(取締役CSO)、伊藤氏(事業主管)、横山氏(事業主管)の三人にお話を聞きました。
川上氏 当社は2001年の家電リサイクル法の施行に向けて1999年に株式会社 日立製作所が中心となって設立されました。
当時、最終処分場の埋め立て地がひっ迫しており、この延命のためにゴミを出さないで再資源化することを要求されていました。
日立にはLNG(液化天然ガス)を使って家電品を処理する低温破砕技術があり、液体窒素の-198度という低温で冷蔵庫などの家電品をまるごと液体窒素に漬けて、脆化するとガラスのように破砕することができます。しかし、残念ながらこの方法はコストがかかりすぎるため実現はしませんでした。
現在使用されている常温破砕機は、ハンマーでたたき壊すイメージで、家電品は1辺30mm程度の破片に粉砕されます。これを鉄、銅、アルミ、プラスチックといった素材に選別する技術が重要です。まず、鉄は磁石で吸着して回収し、アルミ、銅といった非磁性金属は交流磁場を印加して、渦電流の作用で反発させて飛ばすことで分離します。さらに残ったプラスチックは質量で分類します。
ポイントは再生化率を上げることで、「まぜたらゴミ。分けたら資源。」ということで、徹底的に分別します。これにより、最終的に廃棄されるゴミの割合は0.1%くらいとなりました。つまり、ゴミを集塵で出るダストくらいの1/1000にしたわけです。
埋め立て地の有効寿命は、20~30年前は2、3年で尽きると言われていましたが、現在はまだ20~30年は大丈夫です。
川上氏 医療機器の製品リサイクルも進め、2008年には株式会社 日立メディコ製品であるX線装置やCTなどのリサイクルをスタートしました。この取り組みは廃棄になる製品などが、不当に破棄されずにメーカーの責任として効率よく資源循環できるスキームの構築が当社の社会的役割であるとの考え方からです。今後は富士フイルムヘルスケア株式会社のSDGsを進めるにあたり、製品リサイクルを通じて社会的な貢献を果たしていきたいと考えています。
伊藤氏 MRIに使用する永久磁石はネオジム磁石であり、当社の役割はレアメタルリサイクルのフロント部分である都市鉱山(病院などの施設)からの磁石回収になります。具体的には病院からのMRI装置の入替えや閉院での回収になりますが、MRIガントリーは7tから15tの重量物であり、特殊な解体搬出を請け負い、当社の工場に持ち込んでリサイクルするための前処理作業までを行います。この仕事ができるのは15tクレーン設置の工場を有していることと、解体作業や前処理作業の技術に精通していることです。
また、扱うのが磁石なので吸引事故や搬出時に病院建屋内に損傷を与えないように安全教育は徹底して行っているという自負があります。
磁石の再生 MRIのガントリー全体をネオジム磁石のキュリー温度である300℃以上に巨大な炉で加熱して、磁場を消失してから磁材の回収を行う。
伊藤氏 医療機器リサイクルは歴史のある家電リサイクルや建築リサイクルなどと比べ限られた市場ということもあり、中古医療機器のイメージ一辺倒になりがちですが、医療がなくならない限り貴重な資源の有効利用は幅広くとらえる必要があります。
当社は家電リサイクルで培ったノウハウと、医療ビジネスに長く携わったスタッフがいるので、今後は原料リサイクルからリユースへの展開とともに、病院の移転や廃院などでの残置物に関しても有効利用ができる資源はありますので、そこにもプロの目で選別してリサイクル事業の拡大を図りたいと考えています。
1987年に製品化された永久磁石MRI装置は、80年代に開発された強力な永久磁石であるネオジム磁石の登場が大きく影響しています。それまでのフェライト磁石に対しておよそ10倍のパワーを有するネオジム磁石は、MRIガントリーの質量を10分の1に低減して実用化を加速しました。
永久磁石によるガントリーは図に示すように開口部の上下にネオジム磁石を配置し、その上下をつなぐ鉄製のヨークとコラムから形成される閉磁路構造となっています。基本的に磁場強度が小さいことに加え、この閉磁路構造により永久磁石型MRIガントリーの漏洩磁場範囲はおよそ2m以下と、とても小さくできます。さらに、電源ユニットの1ラック化を図り、機械室も不要としました。このコンパクト化は低消費電力にも寄与し、超電導磁石で必須となる冷凍機と水冷チラーユニットが不要な永久磁石方式とともに、画期的な省エネルギーMRIシステムとなっています。
横山氏 前述のとおり、当社の医療機器リサイクルとしてはMRIの永久磁石がメインで、そのほか医療施設から廃棄されるX線関連装置などの原料リサイクルを手掛けています。
今後資源の有効利用の流れが加速する中、超音波診断装置(US)やCTなどへも、もう一歩踏み込んで、パーツの再利用や材料としてのリサイクルスキームを富士フイルムヘルスケア社と協力して確立していければと考えています。
特に、医療施設で数多く使用されているUSの一部は中古機器として扱われますが、別スキームでの新たなリユースを検討する時期に来ていると感じています。
今後も医療機器全体の資源循環に、当社のリサイクル技術・ノウハウを生かして貢献していければ幸いです。
本日はどうもありがとうございました。
これからもMRI磁石素材などのリサイクル活用を進めることで、地球環境維持の取り組みを協業して行ってまいりたいと思います。
東京エコリサイクル株式会社
東京都江東区若洲二丁目8番21号
TEL:03-3522-6696