このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
医療法人龍志会IGTクリニックは、大阪湾に浮かぶ空の玄関口・関西国際空港のすぐ近くに位置し、がん治療を専門に行っているクリニックです。
今回は、2023年3月に導入されたSupria Optica*1について、堀篤史院長と中澤雄希技師のお二人にお話を伺いました。
医療法人龍志会IGTクリニック
院長 堀 篤史 先生
当クリニックは、2002年に関西国際空港に隣接するりんくうタウンに開院しました。IGTは「Image Guided Therapy」の略であり、その名のとおりIVRの技術を用いて、主にがん診療を行っています。対象疾患は、肝臓癌のみに限らず、転移肝癌に対する肝動注塞栓術や、肺縦隔病変に対する気管支動脈動注塞栓術、局所進行乳癌に対する動注塞栓術など、経動脈性にアプローチできる病巣に対して積極的に治療を行っています。
関西国際空港に近いという利便性を生かし、国内の患者さんだけでなく、中国や東南アジアをはじめインド、米国、オーストラリアなど多くの海外からの患者さんを受け入れています。この活動が認められ、2011年に「りんくうタウン・泉佐野市域」の地域活性化総合特区の国際医療交流拠点として認定を受けました。当時は、ゲートタワービル(現SiSりんくうタワー)内で診療していましたが、2016年に現在のメディカルりんくうポート内に移転しています。新施設はりんくう公園に隣接しており、入院患者さんに落ち着いた療養環境を提供しています。また、りんくうプレミアムアウトレットにも隣接しているため、ショッピングも楽しみに来られる患者さんもおられます。
クリニックの理念や特長を教えてください。
医療や医療機関は目の前の患者さんだけが対象ではありません。患者さんとその家族、そして彼らにつながる人々のことを考えながら、日々の診療を行っています。患者さんとゆっくり話しながら、それぞれが抱えている問題点を、ひとつずつ整理し、すこしでも良い療養生活を提供できるようスタッフが一丸となって対応しています。
また、医療機関は、活動する地域社会や医療界の一員としての責任、事業者として雇用者とその家族を守る責任、そして有用な医療技術・事業サービスを成長・発展・拡大させていく責任があります。
クリニックの重要な方向性を決める際には、「我々の信条」を基本方針として決定しています。今回のSupria Optica への更新の際にも、患者さんへのメリットだけではなく、外来診療のオペレーションに問題が生じないかどうか、新機器への投資による影響がどれほどのものかなどを、十分に議論を重ねて更新を決定しました。
新しいCT装置に更新する決め手や懸念点などありましたか。
一番の決め手となったのは、被ばく低減という点です。当クリニックでは、1日のCT検査の9割以上が造影検査です。治療の特質上、どうしても血管評価、血流評価が重要になってくるため、ほとんどの患者さんがDynamic撮影です。また、進行癌の患者さんが多く、全身的な評価も必要になってくるため、必然的に撮影範囲も広くなってしまいます。Dynamic撮影+全身評価がルーチンになるため、患者さんの被ばく線量が多くなることが当クリニックの長年の課題でした。この被ばく低減という我々が抱えているタスクが、CT更新により解消できるということが決め手になりました。
また、ランニングコストの低下という点も大きな決め手になりました。現行機(Supria Grande*2)がまだまだ使える状態であり、関西人特有の「もったいない根性」が頭をよぎりましたが、支払いシミュレーションを行うと、数年先にはコストが削減できることがわかりました。機器へのコストが削減でき、スタッフへの還元や新しい事業への投資にまわすことができることが、Supria Optica への更新を後押ししてくれました。
一方で懸念点としては、今まで使用していたSupria Grandeは5MHUの大容量X線管を搭載した64列だったため、Supria Opticaの2MHUのX線管を搭載した64列で当クリニックの連続検査に耐えうるかどうかということがありました。しかし、事前にメーカーより提示された当クリニックの撮影条件シミュレーションデータでは、管球容量の低下による検査遅延リスクはないことがわかりました。また、線量低下に伴う画像劣化もAI技術を活用した逐次近似再構成法の画像処理データを確認することで、その懸念点はすぐに解消されました。
(上:64列5MHU Supria Grande/CTDIvol:19.8mGy、下:64列2MHU Supria Optica/CTDIvol:9.5mGy)
患者さんへの最大のメリットは、AI技術を活用した逐次近似再構成法を活用することで、従来のSupria Grandeと同程度の画質を維持しながら、被ばくを低減できたことです。国内の被ばく線量のガイドライン(DRLs2020)にも準拠した適切な被ばく線量で検査できることで、患者さんに安心感を与える説明も可能となりました。 造影検査では従来の半分近くの線量であっても、AI技術を活用した逐次近似再構成法により以前と遜色ないレベルの画像となっています(下図)。線量不足による画像劣化が気になる肝臓領域の単純撮影などでは、推奨されている線量よりも少し増やして撮影することで、これまでどおりの診断ができています。
さらにSupria Opticaと同時に導入したSYNAPSE*3 VINCENT*4 Coreにより、簡便に再現性の高い3D画像を作成できるようになりました。全ての画像処理をSYNAPSE VINCENT Coreで行っており、最も活用している機能は我々が設定したロジックを自動で実行するマクロ機能です。日々改良を加えながら様々なマクロを作成しています。
また、Supria Opticaは、患者情報の登録画面からスカウト撮影が開始されるまでの待ち時間が当施設計測で3秒程度に短縮され、画像処理性能も向上したためCT検査室内で患者さんを拘束する時間が短縮されたことも大きなメリットです。
今後の展望について教えてください。
当クリニックの得意なIVR治療をさらに発展させ、従来では難しかったさまざまな疾患の治療や新しい技術の展開を模索しています。現在はがん診療が中心ですが、IVR技術はがん以外の疾患に対しても有効な治療手段になり得ると考え、新しいIVR治療の可能性を探っています。
また、がんの局所症状で困っている患者さんには、「自分らしく生きるための治療を提供したい」という思いをもって、IVR技術を活かした低侵襲な治療を提供し続ける責任があります。一人でも多くの患者さんに、充実した療養生活を過ごしていただけるよう、責任をもってこの診療を続け、未来へ繋いでいきたいと思います。
Supria
- 販売名
全身用X線CT診断装置 Supria
- 医療機器認証番号
225ABBZX00127000
3D画像解析システム SYNAPSE VINCENT
- 販売名
富士画像診断ワークステーション FN-7941型
- 医療機器認証番号
22000BZX00238000