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福島県立南会津病院は、南会津医療圏で唯一の病院として地域医療における中核的な役割を担っています。今回、磁遊空間誌のインタビューに同行させていただき、昨年導入されたECHELON Smart Plus*1について佐竹院長、増子整形外科医、放射線科の渡部技師長にお話をうかがいました。
福島県立南会津病院は、現在の新病院建設とともに県立田島病院から名称を変え、平成7年より診療を開始しました。南会津医療圏で唯一の病院として、救急医療を含めた地域医療の中核を担っています。
南会津郡の面積は約2,340km2と福島県の医療圏で最も広く、これは神奈川県の面積とほぼ同じです。郡内全域から小児を含めた幅広い年齢層の患者さまが来ますが、地域は高齢化が進んでおり、患者さまの8割ほどは70歳以上の高齢者となっています。
救急医療については、年間700件ほどの患者さまを受け入れており、これは南会津広域町村全体での救急出動のうち約半数にあたります。院内にIVR治療などの設備はないため、近隣の連携医療機関と連携した治療を行っている状況です。
更新前は約14年間、富士フイルムヘルスケア株式会社の永久磁石型MRI装置APERTO(0.4T)を使用しておりました。
装置更新にあたり重要視した点は、1)救急医療をはじめ全身の検査において診療に十分な画像が得られること、2)検査時間を可能な限り短縮できること、の大きく2点です。当院は南会津地域において、唯一MRI装置を導入している医療機関でもあります。そのためAPERTOにおいても全身のMRI検査は行っておりましたが、例えば体幹部などでDWIを撮像するのが難しい、胸腰椎のような広範囲の撮像に時間を要する、といった課題がありました。また、当院の患者さまは高齢者が非常に多く、長時間の検査に耐えられないケースもありました。そのような背景の中で、地域の中核病院として、地域唯一のMRI装置として、すべての患者さまに対して全身検査を十分な精度で行うことを考えた際、1.5Tの超電導MRI装置が望ましいと判断し、複数メーカーにて選定を行いました。
富士フイルムヘルスケア株式会社に更新を決めた理由は、ECHELON Smart Plusに搭載されたIP-RAPIDが全身のあらゆる検査において撮像時間の大幅な短縮が可能であることを評価したからです。また装置更新にかかる工期が非常に短かったことも、MRIを1台しか持たない当院においては大きなポイントとなりました。
特に検査が多いのは頭部・整形領域ですが、いずれも大幅に検査時間が短縮しました。頭部ルーチンはMRAも含めた5シーケンスの撮像を行い、トータルの撮像時間は10分ほどです。脳血管障害の患者さまに対しては、治療が必要な場合に協力施設に搬送しますので、ごく短時間で診断がつけられるのは大きなメリットになります。
土地柄、雪による事故などで救急搬送され検査が必要になる患者さまも多いのですが、脊椎の広範囲のスクリーニング撮像が短時間で実施できるようになり助かっています。以前は検査時間が長くなると、つらかったというお話を聞くこともありましたが、更新後そういった声はほとんどなくなりました。
また、DWIや精細な造影Dynamic撮像が可能となったことで前立腺の検査オーダーが増えています。これまでCTで検査することが多かった肝胆膵領域についても、EOB検査を含め対応できる体制を整えています。
ほかに人間ドックや健康診断でもMRIを活用していましたが、コロナウイルスの影響により現在は運用を停止しています。これが戻ってくれば、検査数もより増えてくるものと期待しています。
MRI検査では検査前にさまざまな注意事項などを聞かされ、患者さまも緊張しているケースがほとんどかと思います。入室時に初めに目に入るSmart Windowには、患者さまにほっと落ち着いていただける効果があると感じています。当院のSmart Windowでは南会津町のPR動画を映しているのですが、地元の患者さまには見慣れた風景が流れていますので、その話題でもリラックスしていただけました。現在は投影する映像コンテンツの拡充、MRIの検査説明への使用など、活用の幅を広げるべく富士フイルムヘルスケア株式会社と一緒に検討を進めています。
更新前のAPERTOはオープン型のMRI装置で、閉所恐怖症の患者さまへの検査などには非常に有効でした。ECHELON Smart Plusはトンネル型のMRI装置のため、そういった患者さまに対応できるか不安がありましたが、ボア内投影のシステムがあることで解放感を与える効果はあるようです。
現状、投影範囲的に頭頚部の検査限定で使用していますが、他の部位でも活用できるようになればより良いと思います。
これまで以上にMRI検査の幅を広げ、活用したいと考えています。たとえばWhole Body DWIは、PETに代わるスクリーニングの手段として期待しています。PET検査を受けるためには他施設に紹介の必要がありますので、院内で検査が行えることは患者さまにとってもメリットです。検診などにも活用できないかと検討しています。
ECHERON Smart Plusに搭載されたIP-RAPIDによる検査時間短縮は非常に有用で、ほぼすべての検査に活用しています。今後、動き補正機能のRADARとも併用できるようになれば嬉しいです。
先に述べましたが、Smart Windowのさらなる活用も進めています。より快適で安心できる検査環境にて、南会津地域の皆さんにより良いMRI検査を提供していきたいと考えています。
(2020年12月17日取材)
ボア内映像投影システムはプロジェクターの投影映像をMRIの撮像空間ボアの上面に直接投影して、被検者の検査環境を改善するものです。
長焦点レンズをプロジェクターのレンズ前面に取り付け、導波管を通して映像を検査室内に導きます。
この投影光を2枚のミラーで反射させてボア内に投影します。ボア内に投影された映像は曲面のために湾曲し斜め角度からのゆがみ画像となるで、このゆがみ量をあらかじめ計測しておき、画像補正するプロジェクションマッピングの技術を用いています。
検査室内投影システムは操作室などの外部に設置したプロジェクター映像を特殊形状の導波管を用いて検査室の壁面に大画面投影するものです。
環境映像など自由な映像を投影できます。
斜め方向から投影することで被検者の目に強い投影光が入らないように工夫されています。
- 販売名
日立 MRイメージング装置 ECHELON Smart
- 医療機器認証番号
229ABBZX00028000