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日本

第4回日本在宅医療連合学会大会富士フイルムメディカル共催セミナー

地域づくりに貢献する新たな在宅医療のアプローチ~在宅医療に小型X線装置Xairを使用したICTを目指して~

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

第4回日本在宅医療連合学会大会が2022年7月23日(土)~24日(日)の2日間、神戸国際展示場および神戸国際会議場および会期後オンデマンド配信にてハイブリッド開催された。23日に行われた富士フイルムメディカル株式会社共催のランチョンセミナー4では、城西在宅クリニック・練馬の川原林伸昭氏が座長を務め、初富保健病院の小野寺敦氏が「在宅医療に小型X線装置Xairを使用したICTを目指して」と題して講演した。

第4回日本在宅医療連合学会大会
ランチョンセミナー4

座長 川原林 伸昭 氏 (城西在宅クリニック・練馬)
演者 小野寺 敦 氏 (初富保健病院 画像連携センター)

医療法人社団一心会
初富保健病院 画像連携センター
小野寺 敦
はじめに

私が在職している初富保健病院は「優しく、優しく、もっと優しく」をモットーとする慢性期病院で、拘束ゼロを実践するとともに、ストレッチャーからでも美しい景色を見ていただくために天井に映像を投影したり、院内の各所に生花を飾ったりと、患者さんやご家族に"癒しと安らぎ"の空間を提供できるよう努めています。

その中で、当院では2019年に「心のこもった医療画像をお届けする」ことを目的として画像連携センターを開設し、「患者さまは無移動、診療のわれわれが有移動」をコンセプトに、在宅X線撮影および訪問診療を行う近隣クリニックとの連携に取り組んでいます。

小型X線撮影装置「CALNEO Xair」について

小型X線撮影装置「CALNEO Xair」(以下、Xair)について、我々放射線技師の目から見て驚いたのが管電圧50~90kV、管電流時間積0.2~2.5mAs、管電流5mAという仕様で、このような装置が実現可能だとは思ってもいませんでした。
また近年、小型X線発生装置やフラットパネル、無線通信機能の普及が進み、在宅医療における画像診断が徐々に浸透してきており、当院でもXairを含めたセットを購入して、在宅医療において活用しています。その中で、特にVPN(Virtual Private Network)の普及によって高いセキュリティが実現されたことの意義は大きく、そこにXairを含めたモバイルソリューションシステムによるICT化が結びついたことで、在宅X線撮影の効率性・迅速性向上につながったと感じています。

図1 在宅でのレントゲン画像撮影に、コンパクト移動が求められる理由(1)

住宅事情
持ち運び方法や撮像方法に工夫が必要

Xairを採用するに至った使用環境・地域背景

Xairは、小型化とコンパクト移動を追求した装置であり、これらの特長は在宅X線撮影において特に求められている仕様だと考えています。

その理由の一つ目として、「住宅事情」があります。図1のように、マンションの玄関は狭い場合が多く、戸建てでも2階にベッドが置かれていれば階段を上っていく必要があります。また、患者さんの状態もさまざまで、介護ベッドの場合もあれば、通常のベッドや布団の場合もあります。さらに、イスにお座りいただいて撮影する場合もありますが、各ご家庭のイスの形状は一定ではありません。こうした事情から、在宅X線撮影においてはX線撮影装置の運搬・設置方法や撮像法に工夫が必要で、その工夫の自由度を高めてくれるのが小型かつ機動性の高い装置なのです。

理由の二つ目としては、「道路事情」があります。当院がある千葉県鎌ケ谷市は、図2のように住宅の密集地帯では道路が狭く、二車線でもバスが1台しか通れないような場所や入り組んだ場所が多くあります。そのため、可能な限り小型で持ち運びしやすい装置であることが重要になるのです。

図2 在宅でのレントゲン画像撮影に、コンパクト移動が求められる理由(2)

市街道路事情

ICTを活用した在宅X線撮影

富士フイルムの地域医療連携サービス「C@RNA Connect」は、クリニックと中核病院などを連携して、検査の予約・実施、読影結果の報告・閲覧などをサポートするソリューションです。当院ではC@RNA Connectを在宅X線撮影に使用することで、「オーダー」、「画像保存」、「結果報告」のネットワーク構築を実現しました。

これによって、訪問診療先やクリニックからの撮影依頼への対応すべてをワイヤレスネットワーク化し、在宅X線撮影における医療連携の強化を図ることができました。

Xairの実際の運用・使用状況

図3に、在宅X線撮影を行う際に持っていく装置類を示します。Xairを取り付ける保持装置としては、キャスター付きと四脚式の2種類を導入しており、どちらも一長一短ありますが、我々は現場での迅速な組み立てを優先してキャスター付きを多用しています。

図3 モバイル一式と保持装置

キャスター付きと四脚式、特徴に一長一短あるが収納のコンパクトさと現場組立迅速性からキャスター付きを多用

図4に、訪問用車両にモバイルソリューションシステムを搭載する様子を示します。在宅X線撮影を行う際は、Xair、フラットパネル(CALNEO Smart)、コンソールPC(Console Advance)、保持装置、携帯型検査支援システム(MSS)の5つを持参するだけで良いので軽自動車で十分です。

図4 撮影のための訪問用車両は軽自動車で充分!

モバイルソリューションシステム搭載

図5に、撮影風景を示します。モバイルソリューションシステムを用いることで少量の装置の搬入・搬出で済むことに加え、ワイヤレスであるため装置の取り回しが良く、撮影の効率化や安全性の向上にもつながっていると実感しています。また、装置がコンパクトなので、6畳程度のスペースでも十分に撮影可能です。

図5 モバイルソリューションシステムと現場の撮影風景
在宅X線撮影の課題

胸部X線撮影において“息止め”は重要な要素ですが、小型装置の宿命である高管電圧をカバーするためには長い撮影時間に頼らざるを得ません。その結果、息止め困難な被検者については動きをとらえてしまいます。
図6で“劣”とした画像はよく見ていただくとブレていることが分かると思います。一方の“優”とした画像では、気管支が明瞭に描出されています。

図6 在宅レントゲン撮影欠点例

胸部写真にとって呼吸停止は重要要素であるが、小型装置の宿命である高管電圧をカバーするための「長い撮影時間」に頼らざるを得ず、結果、息止め困難な被検者は「 動き」をとらえてしまう

まとめ

近年、在宅医療の画像診断分野において、モバイルソリューションシステムの活用・普及が進みつつあります。今後、小型X線装置Xairが在宅医療のICT化を推進する基本ツールの一つとなっていくことで、我々が目指す「患者無移動、診療有移動」の実現はもちろん、より質の高い医療の提供や病診連携の強化につながるのではないかと考えています。

CALNEO Xair 保持装置
保持装置キャスター付き
販売名:保持装置 XD2000 ST-M
届出番号:14B1X10022000128

保持装置 四脚
販売名:保持装置 XD2000 ST
届出番号:14B1X10022000127

Console Advance
販売名:富士フイルム DR-ID 300の付属品(画像処理ユニット:DR-ID 300CL)
認証番号:221ABBZX00151000

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