このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
カトリックの愛の精神による質の高い医療を掲げ、福岡県久留米市の健康増進と福祉充実に寄与する聖マリア病院。
救命救急センターなどを擁する同院は、日々診療対応に尽力するなか、診療業務や麻酔管理料申請のさらなる効率化を目指し、3つの主要製品が連携する新たなシステムを構築し運用している。
聖マリア病院
藤村 直幸 副院長・中央手術センター長
森崎 菊子 医事課
麻酔管理料の算定、手術情報の取得共有に立ちふさがる非効率さ
聖マリア病院の特長は。
藤村氏 久留米市における地域医療支援病院として、日々寄せられる多様な診療ニーズに応えています。中央手術センターには先進機器を取り入れた手術室が合計15室あり、手術件数は年間8,000件ほどに上ります。
貴院が抱えていた課題は。
森崎氏 医事課としてはシステム上の煩雑さにより、麻酔管理料の算定を十分に行えていませんでした。特に麻酔管理料IIは、麻酔実施記録に加えて麻酔前後の回診記録をそれぞれ開き担当医師を確認する必要があり、算定率上昇の障壁になっていました。
藤村氏 麻酔科としては日々多数の手術に対応するなかで、患者情報の取扱方法に非効率さを感じていました。術前に患者情報を取得するにはHISにログインしてから電子カルテにアクセスしなければならず、緊急手術等により患者情報や診療予定を変更する際にもHISを経由しなければなりませんでした。すでに導入されていた統合診療支援プラットフォーム「CITA」による患者情報の収集は麻酔科としても便利だったこともあり、麻酔記録システム入れ替えを機に、「CITA」との親和性の高い富士フイルム社の「Prescient OR」を導入することによる改善に期待を寄せました。
藤村氏 当院の患者さまは新生児から高齢者までと幅広く、手術領域も心臓血管外科、腎移植、脳神経外科と多岐にわたります。「Prescient OR」は、手術内容や症例に応じて初期画面を設定し適宜切り替えられるため、術中においてはスムーズな進行を後押しする存在として位置付けました。当既存機器を生かしつつ、新たなプラットフォームやシステムを導入するうえで、他社メーカーの医療機器と接続できる「Prescient OR」のマルチモダリティ性はとても重要でした。新たなシステムとあり、試行錯誤しながら構築しましたが、富士フイルム社の誠実なサポートもあり、無事運用開始に至りました。また、「CITA」の最大の特長は、HISにログインすることなく、電子カルテの各種情報や文章等の診療情報にアクセスすることが可能で、それらの幅広い情報をひとつの画面に表示できる点です。情報の閲覧性に加えて、医師や看護師などの職種の垣根を越えて情報を共有できることから、各診療科間にとどまらず手術室と連携したシステムを構築しました。
システム連携と独自施策により各種業務の効率性と連動性が高まる
森崎氏 当初の課題だった麻酔管理料の算定の手間が大幅に削減されたと感じています。その要因は、「Prescient OR」の画面ひとつで術前回診・麻酔実施・術後回診における麻酔を実施した医師と指導を担当した麻酔科標榜医を確認できるようになったことです。さらに、電子カルテを開くと該当項目が色別で表示されるため、確認業務の効率化につながっています。その結果、麻酔管理料IIの算定数(手術全身麻酔、2022年4月~8月)は前年度同期比で7.8倍に増加しました。
藤村氏 「CITA」の特長である、手術に関する多くの情報を共有・確認できる機能性を生かし、患者情報や術前問診表、手術室看護師指示をはじめとした書面情報のほか、画像データ、血液生化学検査、生理検査などの情報を一覧化しています。すべての職種が必要な情報を適宜確認できる環境は、チーム医療を標榜する当院の手術方針に合致しています。手術室では、麻酔器に設置した2面モニターで運用しており、「CITA」用の一面には患者さま情報の一覧機能「クリニカルフロー」などを表示し、もう一面では「Prescient OR」の術前回診や麻酔を確認できます。2面モニターを駆使することで、術中の合間を活用して次の手術情報も確認が可能となり、手術室内であらゆる情報把握が完結します。あたかも、手術室内に麻酔科のオフィスを作ったようなイメージになりました。また、当院では夜勤帯を2人の麻酔科医で対応しており、有事の際には迅速にサポートできる環境が重要となります。その点、2面モニターを使用するとお互いの業務状況をリアルタイムで把握可能なため、昼夜問わず多岐にわたる手術に対応する当院においてはとても有用性が高いと感じています。
藤村氏 手術室だけでなく、各手術の状況やスケジュールは「Prescient OR」の「ステータスモニター」を用いて中央手術センター内の各所にも表示し、多層的な情報共有に役立てています。
病院経営を深部から支える存在として新規システムの適用領域を広げていく
聖マリア病院の今後の展望は。
森崎氏 医事課としては、より一層算定業務を行いやすい環境整備に努めていきたいです。具体的には、周術期の疼痛管理や薬剤管理も「Prescient OR」で対応していければと考えています。
藤村氏 「CITA」を軸にしたシステマティックな仕組みにより、麻酔科だけでなくチーム医療全体の業務効率化を実現できました。麻酔科のシステムとしてはある程度完成しましたので、今後は、「CITA」の機能性を病院経営においても発揮することを目指し、術後疼痛管理チーム加算の算定に必要な要件を「Yahgee」で作成し、「CITA」の初期画面に設定できるよう調整を進めています。社会や医療業界の変化に合わせて院内体制をブラッシュアップするには、私たちが力を尽くすことは当然のこと、富士フイルム社のサポートが引き続き必要としています。これからも医療の現場に寄り添う姿勢で、ぜひ当院の発展を後押ししていただければと思っております。
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- 手術室情報システム「Prescient OR」のカタログ
- 統合診療支援プラットフォーム「CITA Clinical Finder」のカタログ
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