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1948年の開設以来、大分市西部地域の中核病院として、地域医療に貢献してきた大分三愛メディカルセンター。現在では二次救急病院としての機能を果たすなど、医師や看護師をはじめとした職員が多様な業務に対応するなか、診療文書管理・診療業務支援ソリューション「Yahgee」と統合診療支援プラットフォーム「CITA」を連携したシステムで業務効率化と医療サービスの深化を図っている。
割石 富美子 看護統括
直野 麻莉子 情報システム課
笠木 英行 情報システム課 課長
三島氏 患者さま中心の安全かつ高水準の医療を地域と連携して提供することを目指しています。2006年の新築移転を機に大分三愛メディカルセンターに改称し、現在は病床数190床の二次救急病院として救急医療と災害医療にも力を入れ、今後も想定される災害に対応できる医療体制を構築しています。
笠木氏 以前はファイルメーカーをはじめとしたデータベースソフトで院内文書を作成していましたが、電子カルテに転用できないことが課題でした。
割石氏 看護部では病棟ごとにファイルデータを作成し、患者さまのIDや年齢、疾患名、担当主治医などあらゆる情報を手入力していました。各病棟担当の看護師は患者さまに関する情報記入に相当な時間がかかっていました。その他にも、部内で情報を共有する際には各々のファイルを確認しなければならず、紙データに出力して手書きで記入するなど、非効率な作業が発生していました。こうした背景から、ひとつのデータで患者さまと各スタッフの状況を効率的に把握できる手立てが必要でした。
笠木氏 診療フローを効率的に運用する方法を模索するなか、各種業務のIT化が候補として挙がりました。ただ、電子カルテの仕様調整といった零細な変化では期待する改善効果は見込めません。そこで、大幅な省力を実現するシステム・プラットフォームとして「Yahgee」と「CITA」の導入検討を始めました。「Yahgee」は診療文書の効率的な作成・管理を支援し、「CITA」は電子カルテの各種情報や文書等の診療情報を一元管理できることから、当センターの業務効率化に貢献する統合インターフェースシステムになると判断し、三島理事長に提案しました。
三島氏 業務効率化を起点に医療サービスや職務環境を向上させるうえで、各システムの連携性向上が重要だと以前から感じていました。笠木課長から提案された「Yahgee」と「CITA」を軸にした統合プラットフォームシステムは、院内全体で書類関係の省力化を実現できるという期待感をもてました。
直野氏 統合インターフェースシステムを運用するにあたり、各職員の実務に落とし込んだメリットを伝え、運用開始時に院内で円滑に連動する体制構築に努めました。私自身、前職場で診断書作成支援システム「Yahgee MC」の運用に携わった経験もあり、同シリーズが一端を担う新たなプラットフォームには大きな期待を寄せていました。医師や看護師などの多職種が、相互に連携・補完し合うチーム医療を実践するうえで、患者さまの状況を俯瞰して把握し、効率的に情報を記録し共有できることは、他のシステムでは得難いメリットです。従来手法が定着するなか、新たなプラットフォームに転換することは容易ではありませんが、多岐にわたる業務改善を目指して推し進めました。
割石氏 看護統括の立場から、新しいシステムを導入するうえで重要だと実感したのは、その有用性を適切に周知できるキーマンの存在であり、今回は直野さんがその役割を担ってくれました。チーム医療において、看護師は患者さまごとの詳細情報を把握し、記録することが求められます。ただ、複数の症状を抱える患者さまについてはチーム間を横断する情報共有が必要で、従来手法では手間のかかる伝達工程が課題でした。看護師の幅広い業務に対する新しいシステムの運用効果を、直野さんが具体的かつ複数回にわたり説明してくれたことで、看護師をはじめとしたチームスタッフの理解度は着実に深まっていきました。
直野氏 私が「Yahgee」と「CITA」の有用性を確信していても、実際に運用する医師や看護師をはじめとした職員の皆さんの理解がなければ、十分な運用効果は得られません。なかにはデジタル分野の知識に乏しい職員もいます。多種多様な職員が同じ方向を向いてチーム医療に臨めるよう、「Yahgee」と「CITA」の有用性を、職員それぞれの立場におけるメリットに変換して発信し、個々の業務効率化につながるシステムとしての認識を広めていきました。さらに、デジタル領域に不慣れな職員をフォローするため、操作方法をまとめた運用マニュアルを作成・配布しました。
笠木氏 準備段階において、富士フイルム社の支援は心強かったです。東京本部から専任スタッフがサポートに駆けつけ、ITシステムに不慣れな当センターの疑問点や不安要素にも親身に対応いただいたおかげで、円滑に運用開始の日を迎えられたと思います。
笠木氏 院内システムの主軸としてほぼすべてのチーム医療に導入し、現時点で10人月ほどの省力を実現しています。月間作業時間に換算して約1,700時間の削減効果が生まれ、運用以前と比較して目的データへのアクセス所要時間ははるかに短くなった実感があります。
直野氏 データベースソフトを用いた情報共有に代わるシステムが「CITA」です。各診療科の診療記録データを集約・統合し、主要機能である「統合診療支援ポータル」により患者さまの診療情報を一画面で表示できるようになりました。情報を一元化するプラットフォームを据えたことで、表計算ソフトを個々でやりとりする手間がなくなり、円滑な情報共有が可能になりました。患者さまの診療情報や術前の検査データなどを一つの画面に表示されるため、詳細データを効率的に確認できています。
割石氏 「Yahgee」と「CITA」を運用してみて印象的だったのは、診療情報が一画面に表示される点です。かつて勤務していた大学病院で病院コンピューターシステムの運用更新に従事していた際には、各種業務の連携などに時間を要していました。今回、「CITA」に搭載されている、患者さまごとの診療情報やケアプロセスを一覧表示する「クリニカルフロー」をチーム医療で運用したところ、各端末から入力した情報がひとつに集約され、一画面で各患者さまの診療プロセスを把握できるようになりました。いままでは共有ファイルから手動でコピーし、必要に応じて出力してチーム内に配布していたことから、従来工程を省略できたのは喜ばしい発展だと思います。
直野氏 患者さまの身長体重をはじめとした基本情報や検査値は、電子カルテに入力された状態で共有されます。看護師の皆さんは看護ケア情報などの実務に沿った要項の記入が中心となり、業務負担の軽減につながっています。以前の共有ファイルでは、各チームの病棟担当者が適宜情報を記入していたため、情報の重複が起きていました。また、カンファレンス時には事前に必要情報を記入することができず、業務時間を有効活用できていませんでした。「Yahgee」と「CITA」の導入により事前記入が可能になり、看護師の皆さんは余裕をもってカンファレンスに臨めていると聞いています。
割石氏 「CITA」で集約・統合する診療記録データは、診療報酬の手続きにも活用しています。褥瘡を例にすると、診療計画書、発生報告書、褥瘡経過記録、転棟報告書といった書類が経過を追って必要となります。診療報酬の点数を加算するにはチームとして医療実績とカンファレンス実績を併せて提示できることが求められます。これまでは経過記録を地道にさかのぼる手間が発生していました。ひとつの褥瘡事例に看護師は時間をかけていましたが、「CITA」は診療計画の進捗状況を即時的に確認でき、チーム活動の根拠となる多職種連携の実績をスムーズに示せるようになりました。
割石氏 当センターは地域の診療所や病院と連携し、患者さまの希望に沿った医療サービスの提供に努めています。在宅医療や退院支援に対応し、患者さまの入退院が頻繁に行われるため、膨大な書類処理業務が発生します。効率性が求められる状況において、「Yahgee」は書類の雛形を容易に転記できることから、同様の書類を作成する医師の業務効率化に役立っています。また、「CITA」の「クリニカルフロー」により入院診療計画書、看護サマリーなどの進捗を一覧でチェックできるようになりました。
直野氏 医師から希望があれば医師専用の「クリニカルフロー」を作成して運用しています。タスクとして表示されるため、医師の紹介状や退院サマリーなどの確認漏れ防止につながっています。
直野氏 二次救急病院として日々救急搬送要請が寄せられるため、柔軟なベッドコントロールが重要です。患者さまの状況をより詳細に把握するうえで、「CITA」の「クリニカルフロー」に新項目を追加できたらと考えています。「クリニカルフロー」には業務サポート面において発展の余地は広がっていると思います。
笠木氏 割石看護統括をはじめとした各職員の協力により、「Yahgee」と「CITA」は院内の診療フローに着実に定着しています。業務改善効果が目に見えるかたちで出始めたことで、院内のさまざまな部門から運用方法に関する問い合わせが寄せられています。慣れ親しんだ業務手法を変えることは簡単ではありませんが、院内のITリテラシーが着々と高まる機運を追い風に、さらなる業務効率化を推進していきたいです。
割石氏 病院運営においては診療報酬の重要性は今後も高まり、改定に合わせて都度院内で連携した対応が必要になります。また、当センターではアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の取組を強化しています。患者さまやご家族の意向をACPノートを活用して「CITA」に保存し、院内外で共有しています。医療を取り巻く環境が日に日に変化する中、看護ケアの質を向上し続けるためにも、「Yahgee」と「CITA」を活用しながら、これからの時代に求められる事柄に積極的に取り組んでいきたいです。
三島氏 患者さまに高度かつ利便性の高い医療サービスを提供するには、職員にとって効率的かつ負担の少ない環境が不可欠です。医療業界は人一倍の責任感をもとに職務を全うする医療従事者のおかげで支えられています。IT技術を駆使した効率的なシステムを構築できれば、職員は業務負担が軽減された職場環境の中で、患者さまや地域住民の皆さまの健康づくりにより一層注力できます。当センターが医療業界の先駆けとなる意気込みで、今後も職場環境の変革を進めていきます。
- 統合診療支援プラットフォーム「CITA Clinical Finder」のカタログ
- 診療文書管理・診療業務支援ソリューション「Yahgee」のカタログ
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