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コロナ禍でニーズが高まるオンライン診療
オンライン診療とは、スマートフォンやパソコンのビデオ通話機能を活用して、医療機関で対面診療を行わなくても、医師が患者の診療を行える仕組みのことです。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、オンライン診療のニーズが高まっています。これからクリニックの開業を考える方は、新規開業時からオンライン診療への対応についても検討すべきと言えるでしょう。
オンライン診療は、2018年3月に厚生労働省が「オンライン診療の適切な実施に関する指針」をまとめ、同年4月から保険適用となりました。当初は対象疾患が限られていたり、オンライン診療開始まで一定期間の対面診療が必要であったことから、なかなか普及しませんでした。
しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、2020年4月10日から、時限的・特例的措置として初診からのオンライン診療が認められました。
その後もオンライン診療の恒久化に向けた議論が進み、2021年11月29日、厚労省の検討会が「かかりつけ医による診察を原則として、コロナの流行期に限らず初診からオンライン診療が行える」とする指針改訂案を了承。2022年1月28日に、改訂版の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が公表されました。改訂された指針は、時限的・特例的措置が終了次第、適用されることになります。
2022年改定で規制が緩和され報酬も増加
2022年診療報酬改定では、オンライン診療の報酬体系が変わり、診療報酬の点数もアップしています。それまでのオンライン診療料は廃止となり、初診料、再診料(外来診療料)の中で「情報通信機器を用いた場合」として新たな点数が設定されました。
オンライン診療による初診は251点。対面の初診料(288点)の9割近い点数となり、それまでの電話・オンライン診療による初診料(214点)から大幅に引き上げられました。再診料は73点で、対面診療と同じ点数になりました。
(表1)オンライン診療の診療報酬(情報通信機器を用いた場合の評価)
(表2)2022年診療報酬改定で新設されたオンライン診療を行った際の医学管理料
さらに、現行のオンライン診療料では、「日常的に通院または訪問による対面診療が可能な患者を対象」という距離要件や、「オンライン診療の実施割合が1割以下」という実施割合要件が設けられていますが、2022年改定ではこれらが撤廃されました。
以上のような事情から、今後はオンライン診療を手がけるクリニック・医療機関が増えることが予想されます。まだ対面診療よりは収益性が低いのが実情ですが、患者の利便性などを勘案し、診療時間のうち一定時間(昼食後から午後診療が始まる前など)をオンライン診療に充てれば、診療圏を超えた集患も可能になるでしょう。
システム導入時には十分な吟味を
オンライン診療のシステム構築は個人でもできますが、一般的にはオンライン診療のシステムを提供している会社と契約し、利用する形が多いようです。
初期費用や月額費用、サポート体制などは会社によってまちまちです。既に導入しているクリニックの院長から使い勝手を聞くなどして、十分に吟味したうえでシステムの導入を決定しましょう。
実際のオンライン診療は、日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」などを参考に、医師がオンライン診療が可能かどうかを判断し、当該診療が指針に沿った適切な診療であったことを診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載します。
なお、オンラインでの実際の診療方法や、患者対応のノウハウなどについては、日本プライマリ・ケア連合学会作成の「プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド」が参考になります。
※本内容は2022年3月時点での情報であり、今後予告なく変更されることがあります。
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【企画・編集 日経メディカル開発】