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コロナ禍によって外国人旅行者は一時的には減少しましたが、いずれはコロナ禍前の水準に戻ると予想されています。
外国人患者が日本の医療機関を受診する場合には、本人確認、受診方法、診療費、薬剤費などについてトラブルが発生する可能性があるため、外国人患者の来院が想定されるクリニックは、ポストコロナの時代に向けて、訪日外国人旅行者を自院の患者として積極的に受け入れるかどうかをしっかりと検討し、対応方法を決めておく必要があります。
クリニックに訪れる外国人患者への対応における最大の問題は、言葉の壁です。患者は英語圏の人間とは限らないため、多言語に対応するために民間の通訳事業者による「遠隔通訳サービス」が最近よく利用されています。
遠隔通訳サービスは、24時間対応で、電話やビデオを介して通訳してもらえるサービスです。コールセンターと医療機関がビデオ会議でつながり、患者が通訳者に症状や来院動機などを伝え、それを同時通訳してもらいます。地域によっては、自治体や医師会が遠隔通訳サービスの会社と団体契約し、無料もしくは安価に利用できるところもあります。
なお、クリニック内の案内や、日本の医療機関を受診する時の仕組みなどは、事前に英語のパンフレットを用意しておくだけでも、診療がスムーズに進む場合があります。
外国人患者に対応する上でのもう一つの大きな問題は、医療費を回収できない「未収金」の問題です。未収金を発生させないためには、ビザの有無や、旅行保険の加入状況、日本の保険証の有無の確認が重要です。
日本の保険証を持っている場合は未収金発生のリスクが低いですが、持っていない場合はリスクが高くなります。なお、3カ月以上の滞在資格がある外国人は、日本の国民健康保険に入る必要がありますので、非加入者には加入を促す必要があります。
海外旅行保険は旅行中の不慮の病気、ケガの治療費を保証するもので、カバー範囲が限られているので注意が必要です。持病の悪化や、登山などの危険なスポーツによるケガなどは、補償の対象外となるケースが多いようです。また、日本の医療保険と異なり、患者は医療費を全額医療機関に支払い、帰国後に保険会社に請求するのが通常の手続きとなりますので、その点にも注意が必要です。
なお、ビザが切れたままで滞在資格のない外国人は国民健康保険に加入できず、医療費は全額自費となりますので、支払い方法についてよく相談する必要があります。厚生労働省が作成した未収金の発生を防ぐための「訪日外国人を診療する際のチェックリスト」も参考にしてください。
医療費が全額自己負担となる場合、外来におけるちょっとした診療でも高額になってしまいがちです。その場合は、未収金の発生を防ぐ意味からも、クレジットカードで支払ってもらうのが望ましいです。外国人患者の受け入れを計画する場合は、クレジットカードによる決済対応も検討しておきましょう。
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【企画・編集 日経メディカル開発】
訪日外国人旅行者や在留外国人の増加を受け、厚生労働省は「外国人患者受け入れのための医療機関マニュアル」を作成しています。外国人患者への実際の対応法についても詳しく説明していますので、本格的に取り組む場合は、こちらも活用されることをお勧めします。