このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
営利事業ができるメディカルサービス法人
医療法人は、医療法で医療行為と医療行為の付帯業務以外の事業を禁止されており、売店などを営むことができません。また、医療機関に対して不動産を賃貸したり、医療機器や医薬品等の販売を行うこともできません。
そこで、多くの医療法人は関連法人としてメディカルサービス法人(MS法人)を設立し、不動産賃貸や売店の営業などの事業を行っています(表参照)。診療報酬請求や窓口会計などの一般事務を、医療事業と独立させるために活用しているケースもあります。
MS法人はまた、医業と連携した新しい営利事業(高齢者住宅事業や訪問介護事業など)を展開する際にも活用できます。
医療法人ではない個人医療機関でも、節税対策を目的にMS法人を設立するケースは少なくありません。院長やその親族をMS法人の役員にし、それぞれに役員報酬を支払うことで、家族全体の課税額を抑えることができるからです。所得の分散に加え、医療機関の業務を部分的にMS法人に委託する形にすれば、院長の所得をさらに抑えることができ、節税につながることになります。
ちなみにMS法人は法律的には株式会社や合同会社の形態が一般的で、法律上「MS法人」という法人形態があるわけではありません。
MS法人が行っている事業の例
MS法人が不動産を所有しそれを担保に融資を受ける
このように、MS法人は節税や、クリニック本体の医療事業に関連する営利事業を行うために設立されるものですが、資金調達を行う上でも活用できます。
医療法人自体が金融機関からの借入限度額を超えている場合でも、別法人であるMS法人に事業実態があり、金融機関が評価すれば融資を受けることが可能となります。
また、医療法人は不動産事業ができませんが、MS法人は不動産事業が可能です。よって、不動産を所有し、それを担保とした融資も受けやすくなります。MS法人で調達した資金は医療法人や個人の医療機関(個人事業主)に貸し付ける形を取ることで、医療機関本体の資金調達を実現します。
MS法人にしかできない資金調達方法も
MS法人(株式会社)にしかできない資金調達方法もあります。「株式の発行」「従業員の持ち株会の発行」「会社分割」「私募債(社債)の発行」「増資」などがその例です。
このうち、比較的資金を募りやすい形態が「私募債の発行」です。私募債の発行は、MS法人が医療法人の理事、親族、職員、取引先、友人 など縁故者に社債券を発行して、資金を調達する方法です。この場合も、調達した資金は医療法人や個人の医療機関に貸し付ける形を取ることになります。
私募債による資金調達は、私募債権者に毎年利息を支払い、償還期日には元本の償還が必要になります。しかし、私募債権者は株主のように経営に口出しができないため、資金の使途に制限がかかりません。
私募債のように返済義務がない増資
増資は、資本金を増やす目的のもとで、会社が新たに株式を発行し、その株式と引き換えに株主や第三者などから出資を受けることです。高額調達もでき私募債のように返済義務もありません。
しかし、増資の場合は出資者がMS法人の経営に対する発言権を持ち、経営に口出しをしてくる可能性もあります。そうしたリスクを回避するため、議決権制限株式、拒否権付株式、全部取得条項付株式などの「種類株式」を使い、出資者の権利をあらかじめ制限しておく方法が取られることもあります。
活用を一旦始めると途中での中止は難しい
診療報酬債権ファクタリングのメリットは、診療報酬債権は安全性の高い債権なので特定の担保が要求されないことです。審査期間も短く用途の制限もありません。なお、借入ではないため、決算書上、負債として計上されません。
また診療報酬債権ファクタリングの利用は最初の月のみ2カ月分の診療報酬を受け取ることができます。例えば1月から利用する場合、もともと2月に受け取る診療報酬と3月に受け取るはずの診療報酬の両方を1月に受け取ることができます(それ以降は毎月1カ月分)。
一方、デメリットとしては、診療報酬債権ファクタリングの活用を一旦始めると、途中での中止が難しくなる点です。よほどの資金がないと、中止によって資金ショートする可能性があるからです。また、当然のことながら手数料(約0.6%〜)も発生するので、本来振り込まれる診療報酬の額よりも少なくなる点にも注意が必要です。
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【企画・編集 日経メディカル開発】