このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
日ごろ健康な人は、体調が悪くなったりケガをしない限り、病院やクリニックの存在を意識しないで暮らしています。そして、かかりつけ医を持たない人の場合は、病気になってから受診先を探し始めるのが一般的です。そんな新患を取り込むためには、いざというとき目に留まるように、クリニックの存在をアピールしておくことが欠かせません。
地域の方にクリニックを認知してもらう手段としては、駅の看板や電柱、野立て看板などによる広告がまず挙げられます。昔からある手法ではありますが、都市部では駅看板に、車社会の地方では道路沿いの野立て看板に、いまだ一定の効果があることは確かです。公共交通機関のアナウンス広告も、高齢者の利用が多いバスなどでは利用価値が高いといえるでしょう。
とはいえ、今はネットで医療機関を検索するのが当たり前になっています。上に挙げた旧来の広告に加え、ネット時代に対応したクリニックのアピール方法を考える必要があります。
ネット上でクリニックのアピールに使えるツールには、ホームページやブログ、ソーシャルメディアなど様々なものがありますが、まず力を入れるべきはホームページです。患者が疾患名などのキーワードと地域名によって医療機関を検索する際、ホームページによって必要とする情報を得られれば、新規の受診につながることが期待できます。
ホームページには、院長が得意とする診療分野といったクリニックの強みに加え、患者向けに用意しているサービスなどを盛り込みます。コロナ禍を経た現在は、発熱患者のための隔離スペース設置や、待合で長時間過ごさないで済むためのネット予約などのニーズが高まっています。こうした取り組みを行っている場合は、忘れずにアピールしたいものです。
小児や若い人の場合は、予防接種を契機にかかりつけ患者となるケースもあります。診療科にもよりますが、内科系であればホームページによる予防接種関連の情報提供は必須といえます。また、クリニックでカバーする診療分野に関する、院長による分かりやすい解説を載せることも、患者からの信頼獲得につながります。
ホームページを多くの人の目に触れさせるためには、院長やスタッフによるブログ執筆も有効です。検索ワードからブログにたどり着いた患者が、ホームページを見てクリニックの存在を認識して、新規受診につながる可能性もあるからです。同様に、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアでクリニックからの情報発信を行う際は、ホームページへの誘導を図るようにしましょう。ネット活用に熱心なクリニックの中には、動画サイトのYouTubeで院長が疾患解説を行い、ホームページへと患者を誘導している例もあります。
このほか、特定の用語でネット検索をした際、検索結果に連動して表示される「リスティング広告」を利用する手もあります。実施施設がある程度限られる専門外来などに向いた手法で、「Google広告」や「Yahoo!広告」がこれに当たります。ただし、効果的な広告出稿には一定の知識やスキルが必要なため、当初はネット広告を手がける広告会社などに相談することをお勧めします。
このようにネットを活用する一方で、旧来型の手法であってもクリニックのアピール効果が期待できるものは、積極的に取り入れていくべきです。冒頭で紹介した各種看板のほか、案内パンフレットの作成・ポスティングや、新聞折り込み広告、地域情報紙への広告掲載などのうち、クリニックの想定患者にアピール度が強いと考えられるものから試していくとよいでしょう。
また、院長をはじめとするスタッフが地域に出て行くことも、クリニックの認知度を高める上では有効です。例えば、近くの商店街やショッピングモールで健康相談会を開いたり、地域の老人会などで告知を兼ねた挨拶をしたり、といったことが考えられます。オフィス街であれば、挨拶を兼ねて企業を回り、検診や産業医などの需要がないかを探るのもよいでしょう。
ここで大事なことは、ネット活用や旧来型いずれの手法を採るにしても、それぞれの費用対効果を分析することです。定期的なアンケートなどで各患者の来院の動機を把握して、効果がある手法とそうでない手法を明確化して、有効な手法にリソースを絞り込んでいくのです。その繰り返しが、クリニックの新患を増やすことにつながっていくはずです。
- ホームページ
- ブログ(WordPress.com、はてなブログ、Amebaブログなど)
- SNS(Facebook、Instagram、YouTubeなど)
- リスティング広告(Google広告、Yahoo!広告など)
- 駅看板・電柱広告
- 道路沿いの野立て広告
- 案内パンフレットの作成・ポスティング
- チラシ配布
- 新聞折り込み広告の出稿
- 地域情報紙への広告出稿
- 商店街・ショッピングモールでの健康相談会
- 地域の老人会への挨拶
- 検診需要調査を兼ねた企業訪問
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