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日本
一歩進んだクリニック経営

クリニックの経営環境はどう変わる?

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

日本はこれから高齢化がさらに進むから、医療は成長産業でありクリニックの経営も安泰だ──。そんなふうに考えているクリニック院長がいるとしたら、それは幻想かもしれません。医学部の定員拡大により医師の養成数が増える一方で、国民の医療ニーズは2040年をピークに減少に転じると見込まれているからです。 

2040年を境に外来需要は減少に転じる 

図1は、経済産業省の「将来の地域医療における保険者と企業のあり方に関する研究会」が2015年にまとめた、外来・入院別の医療需要推計です。それによると、入院医療の需要は2040年以降もほぼ横ばいで推移する一方、クリニックが主に担う外来診療の需要は低下するとされています。 

図1 全国の入院医療需要と外来医療需要

過去30年間にわたり、病院数は微減を続けてきましたが、クリニックは一貫して増加してきました。1993年に9844施設だった病院は2020年には8238施設まで減少。これに対し、8万4128施設だった医科のクリニックは10万2612施設にまで増えています(図2)。

図2 全国の医療施設数の推移

医師の養成数も増加しています。2000年には8000人を割り込んでいた医学部の定員数は、医療の高度化や2004年にスタートした新臨床研修制度の影響などもあって、今や9400人近くに。リタイアする医師も考慮した年間の純増数で見ても、2000年に3500人増だったものが、2020年には6200人増に達しています。 

このようにして増えた医師がキャリアを積んで開業適齢期を迎える時期と、外来診療の需要がピークを迎え減少に転じる時期とが、ちょうど2040年前後で重なり合います。そして外来需要がピークアウトした後は、新たな医療ニーズに応えたクリニックと、それができなかったクリニックとの間で、優勝劣敗の図式が顕在化していくことになるでしょう。 

「看取り」と「認知症」への対応がカギに 

では、2040年前後のクリニックに求められる医療ニーズとは何でしょうか。最も有力なのは「看取り」「認知症」への対応です。 

実は2040年は、厚生労働省の推計によれば、年間死亡数が最も多くなる年であるとされています(図3)。近年、介護施設や高齢者住宅の増加により、病院以外で看取りをするケースが増えつつありますが、その数は絶対的に不足しています。2040年には、看取りが可能な場所は30万〜40万人分が不足すると言われているほどです。となれば、患者宅で看取りをせざるを得ず、必然的に在宅医療のニーズが高まります。 

図3 死亡数の将来推計

認知症の急増も無視できません。現在、600万人程度とされる認知症の高齢者は、少なく見積もっても2040年には800万人に達すると言われます。しかし、現状で認知症の高齢者を受け入れられる医療機関・介護施設は限られており、多くは自宅で訪問診療や在宅介護のサービスを受けながら過ごしています。ここでも在宅医療のニーズは大きく、将来に向けてそのニーズが高まっていくことは確実です。 

在宅医療を軸に、これまで述べてきた「高齢・多死社会」の医療ニーズに応えられるクリニックこそが今後、存在価値を高めていくことは間違いありません。医療界が大きな転機を迎える2040年に向けて、自らのクリニックのあり方を改めて検討してみてはいかがでしょうか。 


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【企画・編集 日経メディカル開発】