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クリニックを開業すれば黙っていても患者が来てくれた時代は、既に過去のものとなりました。外来患者の数が頭打ちとなり微減傾向を示す一方、クリニックの増加により施設間の競争が激化しつつある現在、安定的な成長を確保して生き残りを図っていくためには、自院の経営の基本方針となる経営戦略を策定することが欠かせません。今やクリニックにも経営戦略が不可欠になっているのです。
経営戦略というと大掛かりなものを想像するかもしれませんが、あまり難しく考える必要はありません。来院患者のプロフィールなどから現状を的確に分析して、自院の強みを把握し、同じ診療圏に位置する競合クリニックに打ち勝つための方策を検討していくことが基本となります。
クリニックの現状を分析する手法として有用なのが「3C分析」と呼ばれる手法です。もともと企業の現状分析の手法として考案されたものですが、クリニックなどの医療機関にも応用が可能です。3C分析では「Customer(患者)」「Competitor(競合)」「Company(自院)」という3つの要素から、現状分析を進めていきます。
クリニックを訪れる患者の動向分析は、経営戦略策定の一丁目一番地。まずは自院が立地するエリアの人口や年齢分布、市街地か住宅地か、患者が利用する交通手段などを把握します。その上で、現状だけでなく将来動向も予測します。例えば、「人口の入れ替わりが激しいため高齢化が進展しにくい」「大型商業施設の新設により新たな若年層の流入が見込める」など、その地域に固有の事情を勘案して、将来の患者層の変化を見通します。
同じ診療圏に位置するクリニックのうち、診療科目や対象患者が重なる施設の概要を把握します。競合クリニックが得意とする治療や、院長のプロフィール、患者数に患者層、患者からの評判、連携している医療機関などを調べます。これにはホームページの内容に加え、クチコミサイトの書き込みなどが参考になります。そのほか、出入りしている医薬品卸のMS(販売担当者)や医療機器メーカーのセールス、近隣の調剤薬局の薬剤師から情報を得ることも有効です。
得意とする治療や、診療実績、患者からの評判、連携施設からの評価などを基に、自院の置かれた立場や強み・弱みを客観的に把握します。患者を対象にした満足度調査を実施するなどして、受診者の生の声を集めることも有効です。また、ここでの分析結果を上記①②の分析結果と擦り合わせれば、自院として力点を置くべきポイントが見えてきます。例えば、競合に欠けているが自院では充実している治療があることが分かれば、その点を地域住民にアピールしていくなどの戦略を採ることも可能になります。
これまで述べてきた分析結果を基に、クリニックとして採るべき方策を検討して具体的に列挙します。ただし、全てを同時進行させることは現実的ではないでしょうから、ヒトやモノといった経営資源を考慮して、各項目に優先順位を付けていきます。そして、具体的なアクションプラン=事業計画を策定します。この一連の作業によって自院の経営戦略が完成することになります。
とはいえ、事業計画は一度策定すれば終わりというものではありません。患者動向や診療報酬といった経営環境は常に変化するからです。いったん策定した事業計画が適切かどうかをチェックして、必要に応じて改定を重ねることにより、常に実効性のあるものにしていく必要があります。そのことが、厳しい経営環境においてもクリニックを成長させていくことにつながるからです。
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