みなさんは「フィルター」という言葉から何を連想されるでしょう?
身近な用途では、コーヒーの抽出に使われるフィルターや、浄水器、掃除機、換気扇のフィルターなど。形は異なりますが、共通するフィルターの役割は、液体や気体の中から特定の物質を濾過して取り除くことです。
ではメンブレンフィルターとはどのようなフィルターなのでしょうか。
メンブレン(membrane)は英語で“膜”を意味するように、膜を濾材として使用したフィルターのことをメンブレンフィルターと呼びます。メンブレンフィルターはポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、ナイロンなどさまざまな材質のものが見られますが、富士フイルムのメンブレンフィルターはポリスルホンを濾材として使用しております。
メンブレンフィルターの構造・仕組みとは?
メンブレンフィルターはある特定のサイズの微粒子や微生物はとおさない、という特徴から、精密濾過(ミクロフィルトレーション)を目的とした濾過工程において使用されています。ただ、多くのものが膜表面のみで粒子を捕捉するケースが多いため、目詰まりが比較的早く、多くの場合、粗濾過を目的とするプレフィルターと併用されます。
では、いわゆる粗濾過を目的としたプレフィルターと精密濾過を目的としたメンブレンフィルターの違いはなんでしょうか。
まず、粗濾過を目的としたプレフィルターは“ノミナルタイプ”とも呼ばれます。繊維が交差した網目状の濾材で構成され、膜の表面や内部の繊維状に絡んで捕捉されます。
画像のように長繊維(ポリプロピレン等)が絡み合い、濾材を形成したものがノミナルタイプの膜です。イメージとしては、糸を無造作に重ねて並べ、糸の隙間で微粒子が捕捉されている状態です。表面だけでなく、膜内部でも粒子の濾過をするため、フィルターへの負荷が分散し、製品寿命が長いことが特徴です。ただ、濾過中の流量変動や脈圧の発生により生じる圧力によって、網目の隙間が広がり、微粒子がすり抜けてしまうことがあります。そのため、「粗濾過」と呼ばれ、比較的濾過工程の前段階にて使用されるケースが多いです。
精密ろ過を目的としたメンブレンフィルターは“アブソリュートタイプ”と呼ばれ、設計孔径よりも大きい粒子は完全に除去します。笊で砂をふるいにかけるイメージです。笊でさまざまな大きさの石が入った砂をふるいにかけると、笊の孔よりも大きい石は残り、孔よりも小さい砂のみ下に落ちます。ノミナルタイプとは異なり、濾過中の流量変動や脈圧の発生や一次側粒子数の変動にも安定して不純物を取り除くことが可能です。その一方で、膜の表面にかかる負荷が大きく、製品寿命が短いという性質があります。
ノミナルタイプとアブソリュートタイプのフィルターを併用し、段階的に濾過をすることにより、メンブレンフィルターの目詰まりを軽減することが可能となり、両方の機能を最大限に活かすことが可能です。
ビールの酵母除去や飲料水の清澄化だけでなく、工業品の製造過程で使用される原水の清浄化、デバイスの洗浄液など、産業・工業のさまざまな分野で利用されております。
製造工程においてどの箇所でメンブレンフィルターが使用されているのか、下記ページにて具体的な事例をご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
富士フイルムのメンブレンは独自の非対称構造を持っており、入水側(一次側)と出水側(二次側)で、異なる孔径(ポアサイズ)が分布している膜になります。一枚のメンブレン膜内に、異なる孔径を分布させることで、大きい異物から小さい異物まで、効率的に捕捉することが可能となり、「抵抗の軽減」、「高流量」、「長寿命」を実現致します。
①抵抗の軽減
一般的な対称膜は画像のように膜全体に一定の大きさの孔が空いています。ただ、富士フイルムのメンブレンは一次側(入水側)の孔径が大きく、初期の圧損が生じづらくなっております。つまり、一般的な対称膜に比べ、水の抵抗を抑えることが可能です。
②高流量の実現
最も抵抗値が高い緻密層を薄くすることで、高流量を実現しています。フィルター内部の水を通りやすくすることで処理流量を増やし、お客様の生産効率向上に寄与します。
③長寿命
一般的な対称膜は孔径の大きさが一定のため、粒子がその大きさに関わらず膜の表面に蓄積することで目詰まり(表面閉塞)を起こしてしまっていました。これに対し、富士フイルムの非対称構造膜は、大きな粒子を表面の粗い穴で、小さな粒子を深部の緻密な孔で効率的に捕捉します。膜の厚み方向を最大限生かすこと、メンブレンフィルターの長寿命化を実現しています。