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FUJIFILM Irvine Scientific, Inc. グローバル・サプライチェーン・マネージャー

言葉も文化も違う環境――
自分なりに道を切り拓きながら解決を目指す

アメリカで細胞培養に不可欠な培地生産のサプライチェーン構築に励む1人の社員。日本国内での生産工程の管理、マーケティングの経験を買われての抜擢でした。企業文化の違いや言葉の壁などもありながら、チームメンバーと課題解決に取り組みます。そのモチベーションやチャレンジ精神のもとにあるもの、解決の糸口となったものは何だったのか。これまでのキャリアと現地での挑戦を語ってもらいました。

主な業務

  • 培地ビジネスを展開するアメリカの会社でサプライチェーン構築を担当。
  • 培地生産を通じて治療薬やワクチンの開発・生産を支える。

挑戦エピソード

  • モノづくりの基礎を学んだ5年間を経て、新たな地で挑戦することに。
  • 「当たり前」が通じない環境で試行錯誤。潜在的な課題を明らかにして解決策を提案。
  • 原動力は「誰かの役に立つこと」。社会課題の解決に貢献したい。

富士フイルムの技術を生かし、世界中の人の健康に貢献する重要な任務

現在、私はアメリカにあるグループ会社、FUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(以下FISI)でグローバル・サプライチェーン・マネージャーとして働いています。主な業務は、バイオ医薬品*1等の開発・製造に欠かせない培地*2の、サプライチェーン*3安定化と適正在庫実現の推進です。バイオ医薬品の需要増に伴い、長期的な視野を持って、原材料や部材の調達を計画することが重要です。「必要なものを、必要なタイミングで、必要な人に届けること」を最大の目標とし、培地の安定供給が治療薬やワクチン開発・生産を支え、世界中の人々の健康に貢献すると考え、業務に励んでいます。

バイオ医薬品とは?

タンパク質を有効成分とした医薬品。化学合成されたものと比べ、難病に対する治療効果が高く、副作用が少ない。バイオ医薬品の原薬製造は、最先端の製造設備や高度な生産技術が求められるため、新薬開発に注力できるよう、製薬企業が生産プロセスの開発や製造を委託するケースが増加している。

培地とは?

細胞の生育・増殖のための栄養分を含む物質で、バイオ医薬品や再生医療等製品などの研究開発・製造における細胞培養に必要不可欠なもの。現在、抗体医薬品・ワクチンなどのバイオ医薬品の需要増や、細胞を用いた治療法の拡大に伴い、世界各国で需要が増えている。

サプライチェーンとは?

製品の原材料・部品の調達から製造、物流、販売に至るまでの一連の流れ。

入社から5年間、「モノづくりの基礎」に携わりながらキャリアを築く

入社後、神奈川工場足柄サイトに配属され、生産工程管理の業務担当として、チェキフィルムなど主力製品の増産対応などに従事しました。振り返って考えると、製造現場に近い職種での経験は、キャリアとして、とてもありがたかったですね。

その後、ライフサイエンス事業部*4に異動し、1年ほどバイオ医薬品製造用や不妊治療など生殖補助医療用培地のマーケティング・戦略立案を担当しました。入社から5年間、生産からマーケティングまで携わり、ノウハウやスキルを身に付けられたことが、現在の業務に役立っています。

ライフサイエンス事業部とは?

創薬支援用ヒトiPS細胞をはじめとする細胞・培地・サイトカイン・試薬等関連製品などの創薬支援ビジネスを統括して行う事業部。

「コロナ特需」で発生した課題解決のため、新たな地で挑戦

これらの経験を買われて、2021年7月からFISIでの仕事を任されることになりました。赴任当時はバイオ医薬品の急成長に伴い生産規模が急激に伸長し(数年前と比べて2~3倍に拡大)、培地ビジネスが大きく拡大し始めた時期でもありました。

培地は1つの製品を作るために、通常50~100種の原料が必要となります。顧客専用の培地を作る場合、富士フイルムで今まで扱ったことがない原料も多く、全世界から調達する原料の取り扱い数は約3,000にも上ります。もともと培地生産の業務プロセスが複雑なところにコロナ禍で原料調達が不安定になり、計画通りに生産することが困難な状況の中、バイオ医薬品の知識を持つ担当者として参加することになったのです。

大学在学時に半年ほど留学した経験があるだけだったため、海外駐在員に選ばれたことにはとても驚きました。正直なところ経験を生かすことができるのか、言葉は通じるのか……と不安な部分の方が大きかったですね。というのも、当時FISIは原材料の安定調達や生産、在庫管理に課題が多く、私のミッションはそれを解決し、適正在庫を維持しつつ、生産数量を安定化/最大化するという非常に難しいものだったからです

目の前にある課題を解決していく。「当たり前」が通じない環境での試行錯誤

実際にFISIでの業務は大変なものでした。サプライチェーンの最適化に取り組むことになったにもかかわらず、何が本質的な課題か不明確な状態。現地スタッフたちは目の前のタスクに追われ、問題を根本的に理解して、改善する時間がありません。

また急速な増産を実現した結果、業務プロセスの進行が滞り始めていました。分析しようと過去1年間の状況を振り返ろうにも、メンバーの入れ替わりにより過去の経緯が不明確なことも多く、データの保管場所も散在していたのです。

そこで私が取り組んだのが、PSI*5を活用し、課題を明らかにすることでした。富士フイルム独自のマネジメントサイクル See(情報収集)-Think(分析)-Plan(計画)-Do(実行)で、過去1年間のデータを原料ごとに徹底的に分析し、不透明な課題を一つずつひもときました。「何が原因」で「どんな対策が必要か」を洗い出した上で方針を打ち出し、それをマネジメント層に提示したことで、問題を解決する段階に進むことができました。

PSIとは?

Production(生産)、Sales(販売計画)、Inventory(在庫)の頭文字を取ったもので、生産・販売・在庫を同時に計画すること。

日本での仕事とは異なる部分も多く、これまでの“当たり前”が通じないことにも苦労しました。例えば、人に依存しているマニュアル作業が多数存在していたり、日本ではあまり考えられないようなトラブルも多々発生していました。実際にオペレーションに入り込んで、現場で実際に何が起きているのか、業務プロセスを理解し、本質的な課題を抽出することは大変な作業でした。

慣れない土地で現地スタッフに確認しながら情報を整理し、課題を見極めながら進めるのは簡単なことではありません。他部署のメンバーにもヒアリングしながら自分で解決策を考えなければならない。答えがない状況では、手探りで道を切り拓くしかありませんでした。

信頼関係を築きながら見えた「自分の存在価値」

模索する中で感じたのは、信頼関係を築くことの大切さでした。現地スタッフに溶け込めなければ、表面的な課題しか見えてこないからです。文化は違えど、物事を動かすのは人と人のコミュニケーションであることに変わりはありません。英語でスラスラ説明できる訳ではありませんが、行動や結果で示せることはあります。自らオペレーションに入り込み、迅速に成果を上げる等、求められていることに誠意を持って応じることを心がけました。

また、所属する部署にいる駐在員は私1人で、言葉の壁も当然ありましたが、データを用いて課題を発見していくことで業務が円滑になり、チームとしてまとまっていくことを日々感じました。「自分が存在している価値」を実感できたシーンでしたね。
スピード感を持って成果を出すことが求められる企業文化の中で、自分自身も少しずつ成長できているなと感じています。

原動力はチームと社会への貢献

写真提供:一般社団法人日本フライングディスク協会

忙しくても前向きに取り組めているのは「人のためになること」が私のモチベーションだからです。私は学生時代から約10年間、アルティメットというチームスポーツをやっていました。1人でできることには限界があり、人に支えられていることを学びましたが、これは仕事でも同じです。助けてもらいながらチーム貢献することにやりがいを感じています。

FISIのスタッフは苦労しながらも改善に前向きで、ありがたいことに私のことを信頼し、助けてくれます。おそらく、私が駐在員として求められている任務以上に、さまざまな業務に積極的に関わっていること、その頑張りが結果につながっていることを見てくれているからだと思います。「感謝してもしきれない」「あなたがいなければFISIは大変なままだった」と言われたことも。言葉だけでなく、彼らの行動から感謝の気持ちを感じる日々です。今はまだ目の前のトラブルシューティングやプロセス改善に追われていますが、いずれは中長期的な視点で、安定的な生産・出荷を実現するための施策をFISIのスタッフと一緒に考えていきたいですね。

戦いのような日々ですが、休日はしっかり切り替えリフレッシュしています。連休にはたくさんある国立公園を巡るなど、日本では考えられなかったことにトライできるのも今の環境ならではですね。

道を拓きながら、みんなとともに今、ここまできました。これからもFISIの一員として、チームへ貢献、ひいては社会の問題解決に貢献できるよう業務に励んでいきたいと思っています。

事業所はアメリカ・カリフォルニア州のアーバインに立地し、歩いて数分の距離にビーチがある環境。仕事帰りに立ち寄ったり、休日に訪れたり、リフレッシュしています。

アメリカ発祥のアルティメットは1チーム7名で行う競技。オハイオ州で行われたクラブチームの世界選手権にも出場。試合後にチームの仲間たちと。

  •  (写真提供:一般社団法人日本フライングディスク協会)