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日本

法務 事業サポート

確かな技術とエビデンスに基づく製品を
法知識で世の中に正しくスピーディーに届ける

世の中に役立つ製品を、必要とする多くの人に早く届け、安心して使っていただきたい――
自社の技術力やその確かさを知っているからこそ、その思いは強くなる。
一つの製品が世に出ていく上流(研究開発・企画など)から下流(営業活動など)まで、多くの関係者の努力を知っている。
しかし、誇大な表現や事実とは異なる表現は、世の中にマイナスイメージを植え付けかねない。
製品の魅力を「正しく分かりやすくスピーディーに」世の中に伝えるため、法律をもとに戦う社員がいる。

“マイナス”の防止だけではなく、モノづくりの“プラス”をサポートする

正しい形でもっと世の中に役立てたい――間近で最先端の技術に触れ、芽生えた野心

新たな領域への挑戦で迎えた大きな転換 思いと思いをぶつけながら得た財産

産休・育休明けに彼女が任されたのは、化粧品やサプリメントなどのコンシューマーヘルスケア関連の事業部支援だった。入社7年目にして、初めてのヘルスケア分野。担当業務の一つは「展開する広告やキャンペーンなどの営業施策に関して、法律的な観点から問題がないかどうかをチェックする」というもの。早速、事業部から相談されたのが、新製品の広告表現だった。広告業界はトレンド変遷が速い。当時はインターネット広告が急速に拡大・多様化し始めたころ。SNSや動画サイトの利用が広がり、お客さまの購買行動も変化していた。
また、コンシューマーヘルスケア業界は、流行の変化もめまぐるしい。加えて「薬機法*」「景品表示法*」など多くの法令があり、新たな知識も求められる。薬機法とは、化粧品を含む「医薬品・医療機器等」の品質・安全性を保つためのルール。例えば、化粧品やサプリメントに“がんを治す”“血圧を下げる”など医薬品と誤認されるような表現は認められず、また科学的に実証された効果を超えた虚偽・誇大表現も禁じられているのだ。
「例えばデジタルカメラならスペックを紹介すれば利点を理解してもらいやすいですが、化粧品やサプリメントなどのコンシューマーヘルスケア製品のよしあしは一人ひとりの感じ方の違いに大きく左右され、感覚的です。また、富士フイルムのコンシューマーヘルスケア製品の魅力を支えるのは、写真フィルムの開発に不可欠なコラーゲン、抗酸化技術、ナノテクノロジーなどの高度な技術ですが、分かりやすく伝えるのは非常に難しい。また、誇大にアピールすることはできません。エビデンスとなる客観的データはしっかり取得しているものの、独自の先端技術が多いだけに、法律上、広告表現の明確な指針が見当たらないことがほとんどでした」
世の中に正しくかつ効果的に伝えるのが簡単ではない、革新的な製品。しかし、確かな技術に基づく魅力ある製品であると自負していた彼女は、事業部とともに、新製品の差別化ポイントを伝える「今までにない表現」を創り出すことに挑戦。他社事例の情報を収集し、外部の弁護士事務所の知見も活用、法律的に問題がなく、効果的な表現を積極的に事業部に提案した。
一方で、事業部は「よりお客さまに伝わる強く鮮明な表現で製品の魅力を伝えたい」という思いを持っている。その思いを痛いほど感じながらも、「少しでも問題になる可能性のある表現があってはならない」という法務部としての立場との葛藤があった。広告戦略の議論で彼らとぶつかることも少なくなかった。「法務部は相談しやすい存在であってこそのもの。なのに、いま私がそれを妨げてはいないだろうか」、彼女は悩んだ。しかし、この経験がさらなる「攻めの法務」への転換期になったという。
「事業部が訴求したい“商品の魅力”から逆算し、それを正しく裏付ける商品の成分・試験データなどのエビデンスデータを調べました。また、商品の機能などを図示するイラストなどの表現方法も提案するなど、技術の深い内容にまで踏み込み、従来に増して自分から事業部に働きかけるようになりました」
事業部と一体で作った「正しく伝わる」広告表現とともに、世に送り出された新製品。製品に対するSNSや製品のWebサイトでポジティブな口コミを自分の目で感じ取ることができた。「使ってくださったお客さまの言葉を目にして、今までにない達成感を味わうことができました」。
当初は衝突していた事業部担当者との連携もスムーズになっていた。
「議論を戦わせ続けているうちに、専門性に基づく意見や真剣な姿勢への理解が互いに深まり、事業部側で何か課題が生まれれば、すぐに相談してくれるようになりました。互いに製品やお客さまへの思いが強いほどぶつかるもの。でも見ている方向は一つなのだと改めて実感できました」
気づけば、仕事と家庭を両立する自身の働き方も、育休前より効率のよいものになっていた。休み前に抱いた不安は杞憂(きゆう)だったのだ。

正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。

正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」

事業部に寄り添い、信頼される「小さくても力強いタグボート」でありたい

  • * 部署名・インタビュー内容などは、2021年11月時点の取材内容に基づきます。
  • * 撮影時のみマスクを外しています。