富士フイルムソフトウエアは2021年1月、新たな開発拠点として長崎事業所を開設しました。
「県、市のサポートが手厚いこと」、「大学での情報系学部新設が相次ぎ優秀な人材を獲得しやすいこと」が長崎を選んだ決め手でした。
長崎事業所での最初のプロジェクトが世界初の「軽量X線透視診断装置」開発です。
「軽量X線透視診断装置」開発は、富士フイルムソフトウエアでの医療システム開発の中でも過去最大規模でした。
そのため首都圏パートナーによるオンサイト開発だけでは要員を揃えることができず、全国規模のオフサイト開発にチャレンジすることになりました。
このとき開発拠点の一つに選んだのが長崎事業所でした。
トライアル開発で判明した問題
長崎事業所では、長崎のパートナー企業に小規模なトライアル開発をしてもらうことから始めました。
トライアル開発とオンサイト開発とを各種指標で比較してみることで、生産性と品質の向上が課題であるとわかりました。原因分析をすると、2つの問題が明らかになりました。
2つの問題とは、「医療知識不足」と「チーム開発経験不足」でした。
世界初の「軽量X線透視診断装置」開発を円滑に進めるため、それぞれの問題に対して次の施策を行いました。
問題解決の施策
施策1:病院見学を通じた医療知識の浸透
開発する製品が病院で実際にどのように使われるのかイメージを持ってもらうため、長崎のパートナーと共に病院見学を行いました。
長崎市のご協力により、長崎市民病院(長崎みなとメディカルセンター)で実地見学をすることができました。
ここでは放射線科を見学させていただき、開発対象をはじめとする様々な医療機器の見学や技師さんとの対話を行いました。
この経験から、「機器の具体的な使用方法・設置場所」や「医療現場での機器品質の重要性」を長崎パートナーのメンバーひとりひとりが実感を持って理解することができました。
チーム開発とはどのように行われるかを体得してもらうため、長崎のパートナーと首都圏メンバーが長崎の会議室に1週間集まって、合宿を行いました。
参加メンバーが一堂に会し、集中して開発を行うことで「チーム開発のエッセンスを短期で体得してもらうこと」が目的でした。
EVMや品質マップ作成をリアルタイムで行い、進捗と品質を見える化する方法を学習しました。そして、メンバーそれぞれが見える化した結果から問題点や気づきの共有を行い、助言を与えあうことでチームで助け合う風土を醸成していきました。
このような短期集中合宿を行ったことで、参加メンバー全員のマインドセットを「チームプレイ」にすることができました。
施策の結果と現在
これら施策の甲斐あって、長崎事業所での世界初の「軽量X線透視診断装置」開発は、計画通りに行うことができました。
この開発では同時に、長崎パートナーが新しい知識習得や開発スタイル変更に柔軟に対応できることが確認できました。
長崎パートナーにとっても自らソフトウェアを開発した製品が世界で使われるというグローバルな製品開発の面白さを感じてもらえたと思います。
このように富士フイルムソフトウエアと長崎パートナーとが、互いにWIN-WINの関係を構築できました。
そして現在、長崎パートナーは他の製品開発に参画し、医療システム開発に大きな貢献をしてくれています。